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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
1章 超越の始まり
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ゴブリンを統べる者

 村に戻ると、案の定村人達は皆一様に信じられない、信じたくないと混乱状態に陥ていた。


 「やはり皆、動揺しているようだな」


 「当然だろう。ゴブリンの軍勢が迫って来ているんだからな。奴らは人を餌か玩具のようにしか思っていないからな……。特に若い女は殺されれなくても殺された方がマシだと思うようなおぞましい目に遭うだろうな……」


 「酷い……」


 渋い顔で言うドーンの言葉に、女であるフィーナは顔を顰める。


 「おお、来てくれましたかバーンさん!」


 バーンに離し掛けてきた初老の男性はこのアルバ村の村長だった。


 「村長、話は聞いた。ゴブリンの軍勢がこの村に向かって来ているのは本当か?」


 「間違いありません。公都から仕入れに戻ってきた若い衆がゴブリンの軍勢を見かけたようです」


 「軍勢の数は?」


 「……100匹は超えているそうです」


 「100匹じゃと!?」


 100匹。その数を聞いてドーンは頬を引き攣らせる。ドーンの予想では最高でも50匹程だと思っていたので、その倍の数に度肝を抜かれていた。


 「しかも軍勢の中にはウォーリアーゴブリン、メイジゴブリン、更に軍勢を統率しているジェネラルゴブリンが確認されているそうです……」


 「何だと!?」


 『ウォーリアーゴブリン』


 ランクDの亜人型モンスター。


 ゴブリンが進化した個体で、武術に特化している。


 体格も成人男性程になって筋力も大幅に上がっており、武器を扱った戦闘を得意としている。


 『メイジゴブリン』


 ランクDの亜人型モンスター。


 ゴブリンが進化した個体で、知力に特化している。


 人の言葉を完全に理解してる為、魔法を使用することが出来る。


 『ジェネラルゴブリン』


 ウォーリアーゴブリン又はメイジゴブリンが進化した個体で、武術、知力共に優れている。


 多くの戦闘を経験している為、非常に高い統率力を持ち、軍勢を指揮する。


 「ウォーリアーゴブリンとメイジゴブリンだけでも十分厄介だと言うのに、加えてジェネラルゴブリンとは厄介だな……」


 「この村の人口は70人ちょっと。その内戦える若い男達はおよそ30人。しかも男達は戦闘の経験が殆どありません……」


 「30対100か……。こちらが圧倒的に不利だな……」


 髭を擦りながらドーンは呟く。


 「冒険者組合にこのことは伝えているのか?」


 「先程使い者を公都に向かわせましたが、恐らく間に合わないでしょう……。アルバ村から冒険者組合ある公都まで馬を走らせても5日は掛かります。ゴブリンの軍勢は今夜にでもこの村へやって来るでしょう……」


 「冒険者には頼れないか……」


 「女と子供、老人は馬車で隣の村まで避難させようと思います。残った者達はこれから防衛の準備に取り掛かるつもりです」


 「俺も手伝おう。武器は俺の店にある物を好きに使ってくれ」


 「助かりますバーンさん。それでは私も準備に取り掛かります」


 そう言って、村長は行ってしまった。


 「大変なことになったな」


 険しい顔をするドーンに話し掛ける煉太郎。


 「話は聞いただろう? ここは危険だ。お前達も早く逃げた方が良い……と言いたいところなんだがお前達にはこの村を救うのを手伝って欲しい」


 ドーンは煉太郎達の実力を知っている。「銃を製作するのに使えそうな素材があったら使ってくれ」と言って煉太郎達が今まで討伐してきたモンスターの死体を見せられたからだ。その中にはオーガやクイーンビーなどのランクCのモンスターも含まれていた。


 もし、煉太郎達が防衛に加わればアルバ村が助かる可能性は高くなるとバーンは踏んだのだ。


 「報酬は拳銃の報酬は無し。店にある物は好きなだけ持って行っても良いし、俺が造れる物があるなら何でも造る。だからこの村を救うのに協力してくれ! 頼む!」


 頭を下げるドーン。


 本来ならこんな面倒なことに関わりたくない煉太郎だが、ドーンには色々と世話になっているし、まだ造って貰いたい物があるので死なせるわけにはいかなかった。


 「分かった。俺達も協力しよう」



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



 深夜。


 「来たぞ……」


 暗闇の中、僅かな光を反射して複数の赤い瞳が爛々と輝いているのが見えて、鎧を身に纏い、戦斧を担ぐドーンは呟いた。


 村の周辺には防護用の柵と篝火を立てて照明を確保している。


 煉太郎、フィーナ、ドーンを先頭に弓や剣などを手にしてゴブリンの軍勢を待ち構える村人達。微かに震えて、顔は青褪めている。あれだけのゴブリンの大群を見れば当然の反応だろう。


 「この数は引くなー」


 右手にカルンウェナンを、左手にはタスラムを持ち、目の前の大群に面倒臭そうにで活気の無い声でぼやいた。


 「うん。流石に多すぎるよ」


 煉太郎に続いてぼやくフィーナ。


 2人共、周囲の混乱などどこ吹く風だ。その顔には緊張も緊迫感も見て取れない。


 「あの大群を見て、まだそんな余裕を取れるとは、頼もしい限りだな」


 そんな2人を見て呆れたように呟くドーン。


 「おい、そろそろ射程範囲に入る頃だぞ」


 「うむ、矢を放て!」


 ドーンの合図で村人達は弓を射始める。


 放たれた矢は先頭を歩くゴブリン達を射貫くが、まだ後方にはおびただしい数のゴブリンが残っている。


 「さてと、そろそろパーティーを開始しようか。フィーナは魔法で援護を頼むぞ」


 「うん、任せてよ!」


 「親父達は精々死なないよう、自分の身は自分で守れよ!」


 そう言って煉太郎とフィーナはゴブリンの軍勢に向かって歩き出す。


 「無茶だ!?」


 「死ぬ気か!?」


 無謀すぎる煉太郎達の行動に村人達から声が上がるが、構わず進む。


 「ゲギャギャギャギャギャッ!」


 1匹のゴブリンが煉太郎に目掛けて襲い掛かる。


 ズドンッ!


 しかし、ゴブリンは煉太郎が放った一発の銃弾により頭部を吹き飛ばされ、絶命する。


 一瞬、何が起きたのか分からないでいたゴブリン達。


 ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!


 続けざまに6発の銃弾をゴブリン達に向けて発砲する。


 「「「「「ゲギャッ!?」」」」」


 ゴブリン6匹の頭部が弾け飛ぶ。


 「装弾」


 タスラムに魔力を込めて銃弾を装弾。ゴブリン達を蹂躙し始める煉太郎。


 次々と仲間のゴブリンを殺される事態にパニックになるゴブリン達。


 すると――


 「落ち着くのだ!」


 1匹のゴブリンが叫んだ。


 2メートルを超える巨躯を鎧で纏い、右手には黒い大剣を握り締めている黒い肌のゴブリン。


 その存在感は他のゴブリン達とは一線を画する。


 どうやらこの軍勢を統括しているジェネラルゴブリンのようだ。しかも普通のジェネラルゴブリンではない。


 「黒い肌……希少種か!」


 ドーンの言う通り、目の前のジェネラルゴブリンは希少種だった。本来はランクCだが、希少種なのでランクはBに跳ね上がる。


 「ウォーリアーゴブリン部隊よ、奴を囲んで殺せ!」


 「「「「ゲギャギャギャギャギャッ!」」」」」


 ジェネラルゴブリン(希少種)の命令で動くのは2メートル近い身体を持つ5匹のウォーリアーゴブリン。手には剣や槍などを手にしている。


 煉太郎はニヤリと笑うと、カルンウェナンを振るう。


 「「「「「ゲギャッ!?」」」」」


 一瞬にして首を斬り落とされるウォーリアーゴブリン達。


 「――ッ!? メイジゴブリン達よ、遠距離から魔法を撃て! 奴を近づけさせるな!」


 接近戦では勝ち目が無いと判断したのか、メイジゴブリンに魔法で攻撃するよう指示するジェネラルゴブリン(希少種)。


 「「「「「「「「「「〝放ツノハ火ノ矢――ファイアーアロー〟」」」」」」」」」」


 無数の火の矢が煉太郎を襲う。


 しかし、それが当たることはなかった。


 「〝ウォーターウォール〟」


 火の矢が当たる直前、フィーナが魔法を発動。煉太郎の目の前に水で形成された壁が出現し、無数に降り注ぐ火の矢を全て防いだ。


 「煉太郎を傷つけようとするのは許さないよ。〝フレイムサークル〟」


 メイジゴブリン達を中心に周囲のゴブリン達を半径五メートル程の透明な半球体が取り囲む。


 その瞬間――


 「「「「「「「「「「ゲギャギャギャギャギャギャギャギャァッ!!」」」」」」」」」」


 灼熱の炎が半球体に閉じ込められたメイジゴブリン達を襲う。


 半球体の中を炎が荒れ狂い、メイジゴブリン達を焼き尽くす。


 暫くすると、炎ごと半球体はまるで幻だったかのように消えた。


 後に残ったのは黒焦げた地面だけ。後は全て燃やし尽くされ、灰すら残っていない有り様だった。


 「これで半分は片付いたか?」


 「煉太郎と私にかかれば楽勝だよ!」


 煉太郎とフィーナの活躍により、半分の軍勢が倒された。主戦力とも言えるウォーリアーゴブリンとメイジゴブリンはもういない。


 「す、凄い……」


 村人の1人が思わずと言った感じで呟いた。


 他の村人も煉太郎達の圧倒的な戦闘に目を逸らさずにコクコクと頷いた。


 「お前達、何呆然としているんだ! 俺達もあの2人に続け!」


 「「「「「「「「「「おお!」」」」」」」」」」


 ドーン達も参戦し、次々とゴブリン達を倒していき、軍勢の3分の1まで討伐した。


 「人間共が! よくも我が軍勢を!」


 ジェネラルゴブリン(稀少種)は激怒し、憎しみを込めた表情で煉太郎達を睨む。


 「お前達男は1人残らず嬲り殺しにしてやる! そこの女は犯してやる! この剣を持つ我に勝つことは絶対に不可能だ!」


 そう言って、ジェネラルゴブリン(稀少種)は手に持つ大剣を掲げる。


 「あれは、まさか……!?」


 ジェネラルゴブリン(稀少種)が持つ黒い大剣を見て表情が険しくなるドーン。


 次の瞬間――


 ドシュッ!


 ジェネラルゴブリン(稀少種)が周囲にいたゴブリンの首を刎ねた。


 ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ……!


 次々と配下のゴブリンを斬り伏せるジェネラルゴブリン(稀少種)。


 「何だ……?」


 ジェネラルゴブリン(稀少種)の行動に唖然とする煉太郎達。


 そして、配下のゴブリンを1匹残らず斬り捨てると、ジェネラルゴブリン(稀少種)が持つ大剣が妖しげに光りだした。


 「気を付けろ坊主! そいつは魔剣だ!」


 「魔剣だと?」


 魔剣。


 所有者に絶大な力を与えるが、強力な呪いがあり、敵対する者だけでなく所有者にすら危険が及ぶ呪われた剣。


 伝説級の魔剣ともなると威力さることながら命に関わる程の強力な呪いを帯びている。


 「生贄は十分に捧げた! さあ、我に力を与えよ!」


 光がより一層強くなる。


 「が、あああああああ!!」


 ジェネラルゴブリン(稀少種)に異変が起きた。


 身長は3メートルまで伸び、筋肉が発達する。威圧感も先程とは比べ物にならない程強くなっている。


 (こいつはちょっと予想外だったか?)


 「我はキングゴブリン。ゴブリンを統べる者だ!」


 『キングゴブリン』


 ランクBの亜人型モンスター。


 別名『ゴブリンの王』。


 ジェネラルゴブリンが進化した個体でより高い身体能力、知能、魔力を誇る。


 冒険者組合が保有する記録では1000匹を超える軍勢を統率して都市1つを壊滅させた個体が存在したことが残されている。

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