二話
約五分などという時間はあっという間。しかも着陸も半自動ときたものだ。
モービルギアから赤い光線が伸び、勝手に着陸態勢に入った。それと同時に減速、気がつけばもう基地の中だ。
「ちゃんと生きてたわね」
コクピットから下りてすぐ、エルアとシューベルさんが出迎えてくれた。
エルアはいつもと変わらぬ態度で、気丈な笑みを浮かべていた。
「待たせたようだね」
「そんなことないわよ。この十日間、結構短かったわ」
「キミらしいな。それでこそ僕のパートナーだ」
エルアの頭をひとつ撫で、今度はシューベルさんに向き合った。
「パットから連絡が来てますよね?」
「ああ、カーミラと一緒じゃった。まさかミュレストライアの中でも戦力が二分されておるとは思わなかった」
「それは僕も同意です。でも、あのパトリオットという王子は信用に値します。あれでも何年も一緒にいたもので」
「お主の別人格として、か。正直お主たちにすがるしか、ワシらにできることはない。あのパトリオットという少年が信用できるのだと言うのなら、ワシもそれに従おう」
「ありがとうございます。それでは、これからどうするかを話し合いましょう」
『その必要はないぞ』
と、パットの声が聞こえてきた。
シューベルさんの後ろにいた整備士がモニターを出現させ、そこに彼が映しだされていた。
「さっき別れたばっかりだってのに、またお前の顔を見ることになるとはね」
『そう言うな。今はなによりも速さが大事になる。縁とエルアは、これから来るだろうミュレストライア兵からバド大陸を守れ。第一段階はそれでいい』
「その防衛戦はいつまで続く?」
『時間はわからないが、波状攻撃はないと見ていい。一度ヤツらが退いたら第二段階に移る。即座にハーナム大陸へと向かい基地を制圧しろ』
「待て待て、人質だっているだろ? そんな強引な手に出ていいのか?」
『その辺はこちらでなんとかしよう。反ミュレストライアの戦力において、単独行動ができて役目が果たせるほどの能力を持つ者は少ない。人質の誘導、一般兵に対しての戦闘はこちらも一般兵を使う。じきにクオリアとエミリオも来るだろう。お前とエルアは迷わずにハーナム大陸を目指すといい』
「了解。ここはお前に任せるよ」
通信が終了したのを見計らうように、基地内にアラートが響き渡った。
「今の話の通りなら、ミュレストライア兵の軍勢が近づいているとみていい。そしてこのアラートも間違いなく、ミュレストライア兵によるものじゃろう」
「そうですね。僕の機体、ディオレットの修繕は?」
「問題なく終わっておる。それだけじゃないぞ? お主が乗ってきたあのモービルギア、アルクノスと連結させることも可能じゃ」
「そんなこともできるんですか?」
「正直ぶっつけ本番じゃ。設計図はもらったが、アルクノスとの連結など一度も試していない。が、そこはファーランガルの技術というのでカバーしてやったわ」
ガハハ、と景気よく笑うが若干不安だ。
「そら行って来い。前と同じ場所に置いてある。操作も同じでいい」
「ありがとうございます」
そして、僕とエルアは駆け出した。
「今度はアナタに守られるようなヘマはしないわ」
「こりゃ頼りになるな。十日間が短く感じたっていうのは、それだけアーマードギアの操縦訓練をしていたってことなんだろ?」
「さあどうかしらね。悔しいから言わないわ」
「まったくキミってヤツは」
こんな会話がもう一度できるとは思わなかった。イクサードに連れ去られた時、僕はもう戻れないかもしれないと、頭の隅で思ったのだから。
「待っててくれて、ありがとう」
「だ、だから待ってなんてないって言ってるでしょうが!」
「そうだったね」
「もう本当に腹が立つわね」
そんな会話をしながら、僕たちはアーマードギアに乗り込む。
ディオレットの中は最初に乗った時と変わらない。操縦の仕方もちゃんと覚えてる。
『準備はいいか』
「大丈夫ですよ、シューベルさん。いつでもいけます」
『うむ。ディオレット、クラレール、アルクノスを同時射出する!』
機体の向きが変わり、レールの上に乗った。前傾姿勢になり一気に加速。
空気に溶けるような感覚と共に、僕たちは広大な空へと飛び出した。
目視できるわけではないが、メインモニターをズームさせていくと見えてくる。赤や緑のアーマードギアの群れ。サーチャーを起動して数を確認すれば約五千。僕とエルア以外にも戦える人間がいると言っても、この数を捌くのはかなりキツそうだ。
それでも、やるしかない。
「シューベルさん、前衛は僕とエルアが引き受けます。撃ち漏らしにだけ対応してください。できれば中衛を厚くしてもらえるとありがたいです」
『聞き入れた。皆、聞こえたな?』
シューベルさんの問いかけに、聞き取れないくらい多くの雄叫びがコクピット内を埋め尽くす。
僕はファーランガルの兵士たちとの交流なんてほとんどなかった。でも、何人かには助けてもらった。寝る間を惜しんでトレーニングやシミュレーターに時間を費やした。それを見てもらっていた、と考えていいのかもしれない。
「いくぞエルア」
『任せなさいって』
「コネクティブ:アルクノス!」
高速航行に切り替えると、アルクノスがディオレットの前を飛ぶ。目の前のモニターには、アルクノスを被るディオレットの図が表示されていた。
「ど、どういうこと……?」
ぶっちゃけ勢いだけで連結指示を出したものだから、これからどうなるかがわからない。
突如、前を飛んでいたアルクノスが四つに別れた。左右前後、分離はしていないが、本当の意味でアルクノスを被るような形になった。
スラスター部分にアルクノスの半分以上。あとは胸の辺りと両腕に装着された。
「なるほど、アルクノス自体が装甲になるのか。同時に飛行速度を上げるため、アルクノスをメインスラスターにする。腕部にはアルクノスが所有する武装が来るようになってるんだな」
どういう構造かを理解すれば問題ない。
さすがにアルクノス単体の時よりも速度は落ちるが、ディオレット単体の時よりはずっと速い。一気に接近し、一気に叩く。
エネルギーの消費を押さえるため、レーザーソードやビームガンの使用は極力避ける。腰に携えた二本の剣を手に取り、何度か空を切ってから構えた。




