最終話
「お前を召喚したヤツのことは大我に聞くとしよう。まあ、こうしてまた会えたんだ。結果良ければなんとやらだな」
窓の外を見ながらそう言った。ナスハから目を反らしたのは、別の思惑があると悟られたくなかったから。
ダルカンシェルの三人の王と謁見。できればその場で契約を交わしたいところだ。即断即決は無理だとしても、良い返事がもらえればいい。仮契約であったとしても、それが本契約のように見せかければ筋を通すには充分だ。若干卑怯ではあると思うが、俺の立ち位置を考えればそれくらいは許されてもいいだろう。
大我がどう動くかはわからないが、俺だけで交渉するよりもスムーズにことが進むことだろう。ダルカンシェルのあとはマクランディへと飛んで交渉を終え、ファーランガルのイクサードと合流だ。最後にスーべリアットと、トントン拍子でいけばいいのだが。
「今日はこれからどうなさいますか?」
俺の顔を覗き込みながらエルファが言う。
「筋トレと魔法力の訓練。あとは時間が開けば組み手だな。その時になったら付き合え」
「ええ、問題ありませんよ。今日も負けませんから」
腕まくりをしてやる気を伝えてくる。こういうところもまた、女性としての愛らしさが現れているな。
「それなら私も手伝いましょう。どれだけ成長したのかをこの目で見たいですしね」
ナスハは楽しそうにニヤリと笑った。俺がまだスーべリアットに召喚される前は、エルファではナスハが教育係だった。戦闘も、勉強も、マナーも。侍女であり教育者、姉のようであり親のようだった。
「姉妹揃って、しごかれがいがあるな。よろしく頼むとしよう」
「「貴方様の従者ですから」」
声を揃えた二人。見た目は計れない、その顔からは心身の強さが見られた。目は笑い、眉根は少々上がっている。
「さて、第二段階だ」
そう言いながら部屋を出た。
俺はまだまだ弱い。それは戦闘能力だけではなく、政治的権力も含めてだ。地位だけのお飾り王子。何年も王子としての責務を果たしてきたライオネルとは違う。ヤツはまかりなりにも王子としてやってきたのだから。民のことを考え、政策を練ってきたのかと言われればノーだが、王族としての責任は、俺よりも果たしてきたに違いなかった。
まあ、俺を陥れたことで俺が動けなくなったのが原因だが。
それでもやってやるさ、不利な戦いほど燃えるものはない。持てるカードは全て切る。そして必ず覆してやる。
絶対王政、ミュレストライアという世界に半臂を翻す。狼煙は、もう上がったのだから。




