十一話
「エルファを連れていく。おそらく妥当だと思うしな」
「いい判断だ。ここでイクサード、お前にもやってもらいたいことがある」
今度はイクサードに話を振った。
「俺か? 別にいいが、面倒なのはゴメンだぞ?」
「面倒じゃない仕事はない、覚悟しろ。それで内容なんだが――」
リンの話を総括すると、イクサードはファーランガルへと飛ぶようだ。
彼女が言う「魔法力がなくなる」というのは、どうやら「イクサードを送り届けると、ちょうど魔法力が切れる」ということみたいだ。
現在ファーランガルにもミュレストライア兵は滞在しているらしい。が、その過半数がパトリオット派であり指揮官がいない状況なのだと言う。一応指揮官はいるが、十二領帝などの格上ではなく、あくまで兵士の中での班長のようなものらしい。
イクサードはファーランガルへと赴き、あたかもファーランガル侵略を手助けするように立ちまわることが求められる。
そしてそこで初めて聞くが、縁が世界を股にかけていろいろと奔走しているらしい。縁が他の兵士に倒されないように陰で援護し、匿うこともまたイクサードの仕事の一つだ。
地下へと下り、転送装置がある部屋にやってきた。部屋自体はそこそこに広いようだが、様々な機器によって八割を占領されていた。
「ほら、そこのポッドに入れ。エルファもな」
他の研究員に首輪を巻かれ、言われるままにポッドに入った。そして、ポッドの入り口がスライドしてかなり狭い密閉空間ができあがる。
『その首輪は翻訳機、転送装置、魔法力感知器といろいろな機能を備えている。絶対になくすなよ。あと絶対にぶっ壊すなよ。首輪が内包している魔法力はかなり大きい。頑丈に作ってはあるが、首輪が耐えられないような衝撃を与えてしまうと、内包する魔法力が一気に流れだして爆発するからな。ゲートに一歩届かない程度の力くらいは持つ』
耳元のスピーカーからリンの声がしたかと思えば、彼女は一気にまくし立ててくる。それだけ時間がないんだろう。
『なにか言いたいことは?』
「そうだな、モゾリスは俺がいない間、屋敷の管理なんかを頼む。まあ言わなくてもやってくれるとは思うが。あとはイクサードだな」
『あ? 俺になにか?』
「――縁を頼む。アイツは弱い。いや、強くて弱いんだ。どうあっても見放さないで欲しい」
『そんなことはしない。お前が、大将が認めた相手だろ。丁重に扱うさ』
「それならいい」
コイツの言うことは信用できる。それは、この短い時間でなんとなくわかっていた。
キラキラとした光がポッドの下方からせり上がってくる。徐々に熱くなっていく身体は、どこか興奮を覚えてしまう。
目の前があまりにも眩しく、思わず目を閉じてしまった。
その瞬間、物凄い衝撃が身体の芯を突き抜けて、空へ飛んでいくような浮遊感を覚えた。
まどろみみたいな重くなるような感覚のあとで、俺の意識はブツリと切れた。




