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天才術師の存在証明《イグジステンス》  作者: 絢野悠
【ファーランガル編】
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七話

『俺も手伝おう』

「ダメです。結構被弾してるじゃないですか。もしも一緒に戦うなら一度戻ってください」

『しかし――』

「このままでは足手まといです」


 ちょっとぶった斬りすぎたかなとも思ったが、ジューノさんは大人しく従ってくれた。あとでちゃんと謝っておこう。


『死ぬなよ』


 そう言って、彼は戦線を離脱していった。


「当然です」


 遠くなっていく背中を見送ることなく、僕は返事をした。


 こうして、僕とエルアは黒い機体と対峙することになる。が、どうも様子がおかしい。エルアの攻撃が止まっても相手は動こうとしないのだ。


『お前、もしかしてアゼガミエニシか?』


 そんな言葉が、聞こえてきたんだ。


「なぜ僕の名前を……」

『やっぱりそうか』


 正面のモニターが一人の青年を映しだした。顔立ちは整い、暗いコクピット内で微笑む黒い髪の毛の青年。


『いやね、スーべリアットの奴が俺たちの邪魔をしてるって情報が入ったんだ。ソイツの名前がアゼガミエニシってんだから、もしかしてと思ってな』

「キミは誰だ。十二領帝じゃないんだろ?」

『俺? 俺の名前はイクサード=ナンバライズ。この機体はデスベットだ。黒き胎動って二つ名で三嶽神をやらせてもらってる。まあ、前任者である黒い衝動がいなくなったから繰り上がったに過ぎないが』


 彼は身の丈を超える長刀を両手で握り、ゆっくりと胸の前で構えた。


『やろうぜ。障害の排除は大事だが、俺はお前と戦ってみたいんだ』


 瞼を閉じた。少しずつ、けれど長く、三回ほど深呼吸をした。


 三嶽神のことは聞いている。十二領帝なんかとは比べ物にならないほど強く、三人だけで世界一つを覆しかねない。そんな人物と戦って生きて帰れるのか、と言われると返答に困ってしまう。


 きっと、僕に勝ち目はない。


 僕が天才と言われ、今まで勝ち上がってきたのには、いくつもの要因が重なっ

たからだ。周りよりも少し魔導術が得意で、祠徒たちもかなり優秀だった。相手との実力が拮抗していたし、仲間の協力だってあった。


 つまるところ、戦闘力だけで見れば平均より少し強い程度なんだ。強大な力を前にしてできることなんてない。


 両手に持った剣をキツく握り込む。


「やろうか」


 それでも、僕はやらねばならない。


『それでこそ正義のヒーローだ!』


 モニターが閉じたかと思えば、喜々として迫り来る黒い機体。デスベットといったか、その速度はディオレットと同じくらいだろう。


 いや、それよりもずっと速い。


 剣をクロスさせ、振り下ろされる長刀を受け止めた。これがもしもレーザーソードだったらやばかったかもしれない。


 右に振って長刀を払う。距離を取るために左へとブースト。が、めざとくそれを追ってきた。


 イクサードだって、ファーランガルに来てからアーマードギアに乗ったはずだ。なのに、こんなに長い刀を手足のように振り回す。接近戦はマズイとわかってはいるのに、距離を離させてもらえない。


 打ち下ろされても切り上げる。


 横に流しても身体を回転させてから攻撃してくる。


 後ろへと逃げたところで意味はなく、横に逃げても刀が追ってくる。


 導術の使用がない、単純な打ち合いのはずだ。それなのにここまでの実力差がある。機体の性能差はあるだろうが、性能差では覆せない隔たりがあった。


 相手に対する嗅覚。


 戦闘に対する欲求。


 勝ちに対する高揚。


 技術力なども当然あるが、僕と彼にはこれだけの決定的な差があるのだ。


 斜め上からの攻撃を受け流した瞬間に肩で体当たりされた。すぐに体勢を立て直すも、次の攻撃が避けられない。


「アボイド!」


 無理矢理システムを起動させて直撃は免れる。けれど、矢継ぎ早に飛んでくる攻撃のすべてを避けることは不可能だった。


 気付けば左腕が切り離され、肘から向こう側が地面へと落下していった。


 ピリピリと、斬られた部分が痛んだ。


 より自分の身体のように扱うためなのか、擬似的に神経を繋いでいるのかもしれない。微弱な魔法力での繋がりなので痛みはそうでもないが、間違いなく集中力は削がれるだろう。


『お前、それで本気なわけ?』


 今度は音声だけだったが、彼は心底がっかりしたような声でそう言った。


 刀を下ろし、こちらを見下ろしているような、そんなふうに感じていた。

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