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天才術師の存在証明《イグジステンス》  作者: 絢野悠
【スーベリアット編 -Side B-】
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最終話

 善や汐里、アランに結、それに清と尽を含めた六名が第八支部に集められた。


 最上階の広い部屋で、大我と対面することになった。


「君たちのお陰でミュレストライアからの侵攻に対応できそうだ、礼を言おう」


 一度会話を切ったものの、まだ用事があるようで、誰も声を出そうとはしない。


「だが、これだけではまだ終わらない。しばらく続くと思う。その上で君たちにはこれからも協力してもらいたい」

「協力、とは?」


 大我の発言を聞き、清が口を挟んだ。無表情ではあるが、内心は複雑なのかもしれない。


「君たち六人は俺の部下となって活動してもらいたい。作戦成功の暁には軍部へ優先的に雇用し、かなりいい待遇、いい地位を与えよう」

「学生が少しばかり参加して地位を得て、それで私たちよりも早く入った人間が納得するとは思えないのですが」

「君たちの活躍を考えれば当然のこと。上層部も納得しているということさ。一般の軍人が納得しないのなら、功績を上げれば俺だって当然考える。君たちはそれだけの功績を、今の状態で一般の軍人よりも上げているということだ」

「なるほど。しかし、断ったらどうなるのですか?」

「どうもならない。ただの学生に戻るだけだ。ただし、しばらくは地下のシェルターに非難してもらう」

「縁とエルアートはそれに同意したのですか?」

「彼らには協力を仰いでいない。どちらかと言えばこちらから頼み込んだ形になる。今は所用でここにはいないが」


 大我の言葉を聞き、清はアゴに指を当ててなにかを考えているようだった。


 そこで、ある人物が一歩前に出た。


「その条件であるならば俺は志願させてもらう」


 一番背が高く、一番体格がいい善だった。


 誰よりも早く言い出したのは、綾部家に対して思う部分があったから。


 綾部善、旧姓は菅山であるが、十年前に綾部家の養子になった。


 善の両親と尽の父は軍部でも同期で仲がよく、お互いの家で酒を酌み交わすこと、家族ぐるみで遊びに行くこともあった。しかし、ある出来事によりそれが崩壊した。


 G区画の外側で異常が発生し、善の父と尽の父が調査に向かうこととなった。その先では強力な力場が形成されており、二人は力場を取り払うという任務にあたる。徐々に大きくなっていく力場は、予測を超える速度で増加。一日経たずにG区画を直撃するであろうと思われた。


 その事象を身を挺して防いだのが善の両親であり、G区画も尽の父も彼に救われたと言っても過言ではない。


 尽の父は菅山家の親族全員に頭を下げて謝った。「自分の力が至らなかった。子供一人を残させてしまった」そう言いながらも、是非善を引き取りたいと、また頭を下げた。


 善の祖父は、祖母の介護で手一杯であったり、父方も母方も様々な事情があった。そのため、諍いはなく綾部の家に引き取られることとなった。


 尽の父を恨んでいるわけではない。逆に感謝さえしていた。親族の事情を知っているというのもあり、育ててくれた恩というものを感じていた。時に善の肩を掴み「すまなかった」という義父だが、実の両親が行った行動は胸を張れる。


 義父に謝られる度に「謝ることはない。俺は実の両親を誇りに思っている。義理の両親には感謝をしている。恨むことがあるとすれば、そういう運命を恨むことにしている」と、そう言うのだ。


 全ての両親のためにも、自分は軍人にならなければ。そういう思いが、善の中で強く光を放っていた。


「善がそう言うなら、ボクもやらないわけにはいかないな」


 と、尽が一歩前に出た。


「いいのか? 兄貴は綾部家の跡取りだぞ」

「このまま逃げるよりもずっといいさ。それに、弟が行くのに兄が尻尾を巻くっていうのも違うだろ? これでも跡取りだから、いいところを見せないとね」


 尽は白い歯を見せて、いつもと同じように笑った。それを見て善の顔にも笑みが浮かぶ。


「そういうことなら、私もやろう」


 尽の横に清が並ぶ。


「善くんの後ろには私がいなきゃ」


 今度は汐里が善の横へ。


「ここで退いたら男じゃねーよな!」

「引き下がるわけにもいかないものね」


 アランは右拳を左手のひらに当てた。結は「仕方ないな」と言わんばかりに片方の眉尻を下げる。


「全員残ってくれるか、ありがたいことだ」


 大我が指を鳴らすと、第八支部の職員が一人だけ部屋に入ってきた。


「これから君たちには着替えてもらう。導術への抵抗を上げるためのな」


 職員に連れられて六人は部屋を出て行く。考えることは各々違うけれど、この世界を救おうという気持ちは一緒だった。


 今世界でなにが起きているのか、明確なこともわからないまま、彼らはただ戦場に向かう。


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