四話
大きな音を立ててドアが破られた。
物凄い勢いでなにかが室内に入ってきて、そのまま一夜を連れ去った。善も汐里も拘束をとかれて自由になる。
「貴様!」
壁から糸を出して体勢を立て直す一夜。様々な場所から糸を出現させ、自分を連れ去った人物を捕まえようとする。しかし、高速で駆け抜けていくそれを捉えることができない。
ドアから入ってきた人物は影から逃げつつ、善の前で停止した。
「お前、よくここがわかったな」
と善が言った。
「こういう時のための生徒会アプリでしょうが。俺たちだってやるときゃやりますよ」
と、彼は言う。上半身は包帯でグルグル巻き、頭にも包帯をしていた。
大きなバイクに乗る彼は、痛々しい見た目とは逆に爽やかな笑顔を見せる。そう、その人物はアラン=マーキットだった。
「大丈夫ですか、汐里先輩」
「ええ、ありがとう。まさか来てくれるとは思わなかったわ」
汐里の身体を支えたのは結だった。
「さーて、誰だか知らないけど、このまま勝たせてもらうぜ」
「アラン、あれは黒澤一夜さんよ。たぶん、影慈先輩のお兄さんだと思う」
「なんで結が知ってるんだ?」
「私が一年生の時、最初の実技考査で戦ったことがあるの。コテンパンにされたからよく覚えてる」
「なるほど、じゃあここで汚名返上ってわけだ」
「汚名は挽回するものって、こんな古典的なやりとりはどうでもいいわ」
呆れながらも、結はアランの隣に立つ。
「本当に結界を破ってくるなんてな、最近の学生は強くなったもんだ」
二階から四人を見下ろす一夜がそう言った。
「俺と結だけの力じゃねーよ。生徒会、風紀委員ほぼ全員の魔導力を全部つぎ込んだ。俺たち全員の成果だ。まあ、他の連中はみんな疲れ果てちまったけどな」
「人数が増えたところでやることは変わらないんだよ!」
影から伸びる糸が四人に迫る。が、結が光の玉を作り天井へと投げると一瞬にして影が消えた。準備もなにもない、戦ったことがある結だからこそ瞬時に対処法を思いついたと言える。
「くそっ!」
そう言いながら背を向けた一夜。
逃すまいと、善は一気に距離を詰めた。
肩を掴み振り向かせる。
「受け取れ! これが正義の拳だ!」
善の顔を見て固まった一夜に、容赦なく拳を叩き込む。恐怖に染まった顔を、大きな拳が歪めていった。
たったの一撃ではあるが、その攻撃力は非常に高い。相手と殴り合うことに特化しているからこそ、ここぞの一撃では負けられないという気持ちもあった。
吹き飛んだ一夜は壁を貫き、地面に身を擦りながら止まる。
「終わったのね」
「ああ、あとは軍人の仕事だろう」
汐里は顔の横に手を上げていた。にこやかに、優しそうな笑みを浮かべていた。
ああそうかと、善はその手に向かって自分の手を合わせた。パシン、という甲高い音がして、皆で掴んだ勝利を実感していた。




