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天才術師の存在証明《イグジステンス》  作者: 絢野悠
【マクランディ編】
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三話

「もしかして貴方が大我のご子息ですかな?」


 一人の男性が声をかけてきた。ヒゲまで白髪の老人で、服装も周りの人たちよりも豪華だ。白い司祭服であることは変わらないが、金色の装飾が目立つ。見るからに戦闘には不向きで、兵士たちの後ろで指揮をとるというのが似合う容姿だ。


「はい、安瀬神縁です。父から話は聞いていますか? ああ、そうだ一応これ」


 PDを取り出して見せるが、老人はそれを手で制した。


「大丈夫です、見ていてわかりましたから。それよりもこれから会議があるのですが、貴方たちも参加してもらえますかな?」


 老人は僕だけじゃなく、僕の後ろにいる三人にも目配せをしていた。


「僕らが参加してもいいものなんですか? 今来たところだし、本当に信用できる相手かも確認した方がいいと思うんですが」

「大我から聞いていた特徴と重なりますし、貴方の瞳は嘘をついていない。その十手という武器を扱うような人もなかなかにいないと聞きます。銀髪の少女も一緒だとタイガは言っていたので、私の判断で貴方を招こうと思いました」

「なるほど。こちらとしてもこの世界に協力するために来た身です。参加させてもらえるのなら是非」

「そう言ってもらえるとありがたい。ようこそ、マクランディへ。ようこそ、エピスコポスへ」


 老人は手のひらを自分の方へと向け、小指同士を合わせた。そしてそのままお辞儀をする。僕らの世界では手のひらを合わせるが、ここではまた違うのだろう。


「私の名前はギュレンダ=シューク、一応この世界を統べる大司祭です。それではこちらへ」


 やっぱり司祭なのか。この世界はまだまだ知らないことだらけだ。彼がトップということはわかったが、そのトップがどれだけの権力を扱えるのか、エピスコポスの組織体系はどうなっているのか、そして第一世界からの侵略をどの程度抑制できているのかが気になった。しかし、これは会議中でいいだろう。


 ギュレンダさんに連れられて、僕らは建物へと誘導された。司祭服を来た兵士らしき人たちが道をあけてくれるが、なんだかいたたまれない気持ちになった。


 夜ではあるが建物が真っ白なためやけに目立つ。


 入り口を抜けても白一色。電灯も明るい白で、暗闇に慣れた目には少々痛い。


 一本道の廊下の左右には、均等な間隔でドアが並ぶ。建物の大きさからすると、このドアの向こう側もまた廊下なんだろう。ムカデのような構造を思い浮かべたが、そもそもムカデという虫も昆虫図鑑でしか見たことがなかった。


 廊下の突き当りには一際大きなドアがあり、そこを開けると何人もの偉そうな人たちが座っていた。人が数十人座れるようにと、丸いテーブルにたくさんのイスが置かれている。


 ギュレンダさんに「こちらへ」と言われるままにイスに座った。


 周囲を見渡すと年齢や性別はバラバラで、呼吸器に繋がれている老人から、まだ年端もいかない少女までいる。全員地位が高いのだろうとは思うが、どんな役職なのだろうかという疑問も浮かんだ。


 ギュレンダさんが上座に座り、先ほどと同じようにお辞儀をした。


「それでは、これから会議を始めます。その前に協力者を紹介しましょう。縁様、お願いできますかな?」


 僕たち四人は視線を送り合いながら立ち上がった。


「第三世界スーベリアットから来ました。スーベリアットにいる安瀬神大我の息子で、安瀬神縁と言います。この世界を守るためにやってきました。よろしくお願いします」


 そう言ってお辞儀をした。こちらの流儀はわからないので、腰だけを曲げて深めに頭を下げたた。


 エルア、ルキナス、リュノアの順番に挨拶をし同時に座る。周りの顔色を伺うが、皆特に変わった様子はない。反応が薄すぎて逆に困ってしまう。


「これからの対策を考えましょう。なにか案がある方はいますか?」


 ギュレンダさんがそう言っても、誰も挙手をせず、口も開かない。皆ただただ彼に視線を送るだけだった。


 仕方がないと、僕は手を上げた。


「縁様、どうぞ」

「はい」と言って立ち上がり、机についた手に体重を乗せる。

「最初に、僕のことは縁くん、とか縁みたいな感じでお願いします。いろいろとやりづらいので。それとこれは対処法とかではないのですが、エピスコポスの現状について説明してもらいたいなと思いました」

「なるほど、わかりました。リズリナ、説明を」


 ギュレンダさんの隣に座っている、メガネをかけた女性が立ち上がった。つり目なだけじゃなく、髪型や服装の着こなしも相まって非常に性格がキツそうだ。前髪を右側に流し、横髪も全て後頭部で一つにまとめるフォーマルな髪型。服装はスーツを変形させたようで、裾などがひらひらとしている。それをピシっと着こなしており、几帳面な雰囲気が彼女からにじみ出ていた。


「ギュレンダ様の秘書をしておりますリズリナ=シャハルです。縁様はお座りになられて結構ですよ。それではこちらをご覧ください」


 僕は座り直し、指を組んだ。


 彼女の背後に半透明のモニターが出現し、そこに第五世界の地図が現れた。マクランディの全体図を見たのは初めてだが、数千年前のオーストラリアという大陸によく似ていた。大半が青いのだが、三分の一を赤い色が侵食していた。しかもその赤い部分というのが、地図で言うところのど真ん中。


「青が我々第五世界、赤が第一世界の勢力、黄色いポイントが現在地です。すでに三分の一を侵されていますが、第一世界の戦闘力が強く対処できない状態です。エピスコポスの総本山であるミグラート、地図で言う中央の黒いポイントですね、そこはすでに陥落し、ゲートが奪われてしまいました。ギュレンダ様も命からがら逃げてきた状態なのです」


 中央に出現し、一気にゲートを占拠したということか。


 いや逆だ。ゲートを通ってきたのだから、そこを中心にして勢力が拡大するのは当然なのだ。当然なのだが、少し引っかかるものがあった。


 どの世界にもディバージェンスゲートとバリオスゲートは存在する。単純に使っていないだけで、存在だけは確かにあるのだ。だからこそ、祠徒としてこの世界に来ることもできる。


「最初の侵攻はいつでしたか?」

「観測されているだけで四日ほど前です。それがどうかなさいましたか?」


 四日で三分の一を占拠したというのがどういう意味かを考える必要があった。


 進行速度自体は、人海戦術を使えば可能と言える。が、そのためには地形を把握する必要があるだろう。


 PDで地図を確認すると、中央付近は高い山が聳え立つ山岳地帯。ここをそう簡単に攻略できるだろうか。


 それに建物前での戦闘も引っかかる。


「中央部分の山岳地帯なんですけど、これって慣れてる人だとどれくらいで踏破できますか?」

「大体二日はかかります。魔法などを使えば半日程度には短縮できますが、相手は魔法に長け統率のとれた軍隊なのです。飛行なりすれば時間も縮められるかと」

「飛行、ね」


 あの人数を見る限り、かなりの数を送り込んできているだろう。その全ての人間が飛行しての移動をメインにしたとは考えにくい。飛ぶという魔導術は、どういう原理であれ結構な魔法力を必要とするからだ。それに統率がとれていたとしても、天候などにも左右されるし、山の標高が高いとなれば風も強い。集団での飛行は危険を伴うはずである。


 が、今はゲートを奪取する方法を考える方が先か。


 こちらが取れる方法として一番早いのは、ゲートまで一直線に突き進んで奪取すること。けれど持久力がなければ無駄死で終わるのは明白だった。


「敵の指揮官は特定できてますか?」

「はい、第一世界では十二領帝と呼ばれる幹部。その一人であるトラビス=エンカレイルです。ちょうど縁様と同じくらいの年齢だとは思いますが、エピスコポスの将軍クラスでさえ歯が立たないのです」

「その名前はどこから出てきたんですか?」

「大我様が分析なさってくれました。ゲートが完全に占拠される前に、ですが。その時にトラビスのデータも頂いております」


 モニターの画面が切り替わり、トラビスの情報が表示された。


 まだ若い青年で、得意な魔導術は強化。魔導術よりも至近距離での攻撃を得意とする肉体派だった。この情報だけだと、どれだけ強いのかがわかりにくい。


 父さんも詳しくはわからなかったのか、それ以外の情報は記されていない。第一世界の情報を少し引き出すだけでも苦労なのだろうと推測できる。ゲートで繋がっているとは言っても、世間的には【もう人が住めない場所】と認知されているのだから。


「十二領帝でマクランディに来ているのは彼だけですか?」

「私どもの方ではその情報だけですね。ゲートも閉じてしまったので」


 背もたれに体重を預けると、イスがギシッという音を立てた。その音を聞きながら腕を組み、これまでの情報をまとめようと思った。

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