第11話 邇邇芸命はペルソナを被る
お「今回は桃花鳥が主役かな」
桃「そういえば京司がいないわね」
お「つまり、そういうことだよ」
桃「あ、なるほど。それより作者」
お「はい何でしょう」
桃「投稿ペースに話があるわ。異論は認めない(ズルズル)」
お「た、助けて!誰か助けてーーー!!」
開発室のある主軍区本棟を出て、もと来た道を戻る。
どこからか気合と漢気が入り混じった暑苦しい声が聞こえてくるあたり、訓練中の時間なのだろう。
ふと時計を見ると、時刻は午後2時を回ろうとしていた。
グゥゥゥ〜……。
「…む」
中庭の中央で腹の虫が悲しそうに鳴くのを聞き、『そういえば昼飯まだだったなぁ…』と思い出す。
俺ともあろう者が、琴音の愛が詰まった弁当をまだ食べていないとは。
「…食堂で食うか」
食堂まで行って売ってるものを食わずに弁当の風呂敷を広げるのもどうかとは思うが…まぁ、そこは妥協するとしよう。
「そうと決まれば、早速向かうとするかな。琴音の弁当〜♪」
「へ〜、今日は琴音ちゃんの作ったお弁当なんですか〜」
「うぉう!?」
スキップをし始めたその時、突如背後から声をかけられ、思わず5mほど後ずさり。
不意打ちすぎてガチで心臓止まるかと思った…。
というかこの、年齢と声が明らかにミスマッチングな人はまさか…。
「…千代さん…。何してるんですか…」
「何って…ご飯ですよ?昼食」
寝起きなのだろうか、所々はねているふわふわとした栗色の髪の毛を気にしながら、千代さんが不思議そうに首を傾げる。そんなに気になるなら直してからくればいいのに…。
「いや千代さん。昼食ってあんた……寝始めてから4時間くらいしかたってないでしょうが…」
「え?睡眠なんて4時間もあれば充分じゃないんですか?」
「あんたどんだけ…いや、何も言うまい」
確か…オペレーターは人数が少ないから時間制もへったくれも無いって聞いたことあるけど……なるほど、その噂は本当だったようだ。さしずめ、ワーカーホリック養成所とでも言うべきか。
焦点のあってない目で『うふふふふふ………』と口から魂が出そうな勢いで笑う千代さんを見て、何故か変な汗がそこら中から吹き出してくる。
早くこの人なんとかしないと…。
「そ、それより千代さん!」
「ハイ?」
ハイライトの消えた瞳がこちらを見つめてくる。
怖い怖い怖い怖い怖いわぁ!!!
もっと休暇あげて!何なら伊仙さんや廴条さんの分の休暇も回していいから!!
そんじょそこらのヤンデレに引けを取らない瞳でこちらを見つめてくる千代さんに、なるべく…なるっっべく自然な笑顔を……返そうと思ったけど無理だわ。
「そ、そろそろ食堂行きません?俺、腹減って腹減って仕方ないんですよ〜…」
「ソウデスネ〜……ウフフフフフ………」
ふらふらとした足取りで食堂へと向かう千代さんの後ろで、俺はただただ引きつった笑いを浮かべるだけだった。
************
もぐもぐもぐもぐ。
「………………」
もぐもぐもぐもぐ。
「……………………」
もぐもぐもぐもぐ。
「…………………………」
ああ。
もぐもぐもぐもぐ。
「………………………………か」
もう駄目だ。
「かぁぁわぁぁいぃぃぃ!!!」
「ふにゅ」
遂に私の中の何かが限界に達して、膝の上に乗せた琴音ちゃんを抱きしめて頬ずりしてナデナデしてしまう。
何でこんなにも愛らしいのか、何でこんなにも愛らしいのか。京司の妹ではもったいないくらいに可愛い。
琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛い琴音ちゃん可愛ーーー
「…桃花鳥お姉ちゃん」
「はっ!?ど、どうしたの琴音ちゃん?」
琴音ちゃんの声で我に返る。わ、私は今何を……。
「…パフェ、食べれない」
「ご、ごめんね…」
「…わかれば良し(キリッ)」
ムッと頬を膨らませたり京司のモノマネをしたりする琴音ちゃん。
可愛いなぁ…。
今琴音ちゃんが食べているのは、この食堂の名物でもある【ソフトクリームカルテットブラッディベリーソースがけ白桃黄桃桃MOMOパフェ】だ。ベリーなのかピーチなのか………。
とんでもない量のはずなのに、この兄妹はスウィーツならいくらでも入るというから驚きだ。
「ねぇ、琴音ちゃん」
「……?」
幸せそうな顔で動かしていた手を止め、琴音ちゃんが再度振り返る。
「京司はさ、何か欲しい、とか、こんなことが不足してる、とか言ってなかった?部隊関係のことで」
「…うーーん……お兄ちゃん…そういうこと言わないから…。…『琴音に心配かけたくないから』って言って」
「あのシスコンめ……」
呆れてため息しか出ない。
なーーんであいつは妹離れできないかなぁ…。いや確かに、ほとんど家には2人しかいないからそうなるのも分かるんだけどさ…。
「琴音ちゃんに彼氏ができたらどーするつもりよ…(ボソッ)」
「…何か言った…?」
「ううん、何でもない」
不思議そうに首を傾げる琴音ちゃんに笑顔でそう答える。
全く……琴音ちゃんもバカな兄を持ったものね。
そんなことを思い、思わず苦笑いを浮かべる。
『……千代さん、まだですかー?』
『ちょ、ちょっと待ってください…。こっちの方がカロリーが低いかも……』
『…女性って、つくづくそういうの好きですねぇ…』
ほとんど人のいないがらんどうとした食堂に、聞き覚えのある声が2つ。
声の主の方を向くと、食品レプリカが並ぶガラスケースの棚とにらめっこをしている女性と、片手にその目に似つかわしくない巨大なパフェを持っている男子中学生の姿が。
「…あ、お兄ちゃんと千代さんだ…」
「まーた千代さんは……カロリーなんて気にしても良いことないと思うんだけどなぁ…」
カロリーを気にも留めない京司とカロリーを気にしすぎる千代さんを交互に見ながら、そんな言葉が口から漏れる。
……いや、カロリーを気にしなければいけないのは分かっているのだが…千代さんの場合は気にしすぎているのだ。千代さん、充分細いと思うけどなぁ。
『はぁ……全く。桃花鳥や天使もそこで待ってるんですから、さっさとしてくださいよー』
どうやら京司の奴は気づいていたらしい。その証拠にさっきからこちらを、【好きな女子の方を恥ずかしくて直視できない思春期の男子中学生】ばりにチラチラと横目で見てくる。
……あ、男子中学生だから、ばりも何もないのか。あいつが思春期なのかどうかは知らないけど。
「…カロリーなんて(もぐもぐ)…気にすること(もぐもぐ)…ないのに(ごっくん)」
琴音ちゃんがここでまさかの【自分は太らない】アピール。さりげなく全世界の女性を敵に回したわね……琴音ちゃん。
『…先に行ってますよー?』
『…………はい』
千代さんを見捨て、京司はため息交じりにスタスタとこちらへ向かってくる。
片手にあんなパフェを持ってるのに、よくもまぁ落とさずに来れるものだ。長年、甘いものへと集中力を注いできた賜物なのだろうか。
「全く……千代さんは何でいつもいつもああなのかね」
「甘いものを食べても一向に太る気配すら無いあんたには一生かかっても理解できないでしょうね」
「そうみたいだな。いただきます、と」
ひとまずパフェを傍に置き、合掌をしてから京司は弁当の蓋を開ける。
「あら、今日は琴音ちゃんが作ったの?」
「…うん。お兄ちゃん、起きるのが、遅かったから」
「ごめんな、琴音。俺がもっと早く起きておけばお前の手を煩わせずにすんだのに…」
「…そう思ってるなら、二度寝はいけません(キリッ)」
「善処するよ」
努力する気などさらさらないであろう笑みを浮かべる京司に、琴音ちゃんは頬を膨らませる。可愛いなぁ…。
「それより桃花鳥さんや」
「何かしら?お爺さん」
「誰がお爺さんだ」
「あんたが振ってきたんでしょ」
クリオネさんウィンナーを突きつけツッコミをしてくる京司に対して、ジト目でツッコミ返す。
ていうか毎度毎度その手の込んだウィンナーは何なのか。この兄妹器用すぎるでしょ。
「…まぁいいや」
「いいんだ」
「いいんだよ。それよりも、だ。お前、どうするよ」
「…日本語が最も難しい言語と言われる典型的な例ね」
「褒めんなよ」
「褒めてないわよドクズ。地中に埋まってダンゴムシでも食ってろ」
「そこまで言わなくてもいいだろ…」
ショボーンと気分と肩を落とす京司。
その様子を見て、思わず噴き出しそうになる。これだからこいつを弄るのはやめられないのよ
「それで?どうするよ、とはどういうことなのかしら?ダンゴクズ虫」
「ダンゴクズ虫!?」
「あ、間違えた。駄屑虫だ」
「略すなあああ!!」
「てへぺろりんちょ☆」
「……ぷっ」
「フンッ!!」
「痛い!」
私のプリティーてへぺろを一笑に付した馬鹿の顔面におしぼりを投げつける。
この馬鹿は全く……。話が一歩も進みやしない。
「ったく…投げることはないだろ、投げることは」
「そんなことはいいのよ。早く話を進めなさい」
「そんなことって……はぁ、わーったよ…。えーっと、つまりだな。海外行きの件、どこから行くよ?」
「…ああ、あの七面倒な案件ね」
『京司君達と海外に飛んできなさい。尚これは、おじいちゃん命令じゃ。詳しい話は札場博士に聞いとくれ。じゃあの、愛しい愛しい孫娘よ』
『は?ちょ、おじいちゃん!?それってどういう(ツー…ツー…)切れたし…』
昨晩、おじいちゃんからかかってきた突拍子もない電話。
正直、ドッキリか何かかと思っていたが、今日博士に呼び出され、話を聞かされていく中で、その可能性は徐々に失せていった。
ぶっちゃけてしまえば、面倒の2文字に尽きる。
海外なんて行き飽きたし、それに何より………。
「……殺し屋が沢山いるから嫌なのよねぇ…」
59人。
私が海外営業をしに行って出くわした殺し屋の数だ。まぁ全員、国頭やその他SPの手によってブタ箱送りにされているのだが。
「…あ、そうだ。いいこと思いついた」
「あ?」
「あんた、私の護衛しなさい」
「……は?」
ポトリ、と箸で掴んでいた卵焼きが白米の上に落ちる。
「だから、護衛しなさいよ」
「……何のために?」
「…まるで、私に護衛はいらないような言い方をするのね」
「いらねぇだろ」
「フンッ!」
「危なねぇな(ヒョイ)」
失礼な物言いを平然とする京司に対しておしぼりを投げつけるが、流石に二度目ともなると受けられてしまった。
「お前が、か弱い乙女が云々言う前に言っておくとだな。国頭さんがいるから心配いらんだろって話だ」
「ああ、国頭は連れて行かないわ。というか、セリンや幸久はともかくとして、あんたは軍の方に行かなきゃなんないんだから、ついでに私の護衛くらいしなさいよ」
「えー………面倒だな」
「アァ?」
「………わーったよ、わーりましたよ、お姫様」
「あら。物分りが良いのね、王子様は」
「ほぼ脅迫じゃねぇか…」
箸を動かす手を止めず渋る京司を睨むと簡単に折れてくれた。うんうん、物わかりの良い子は大好きよ、私。
「お、お待たせしました〜…」
「…遅いですよ、千代さん」
脂の乗った塩鯖や味噌汁、付け合わせなどが乗ったお盆を持ちながら申し訳無さそうな声音で京司の傍に腰を据える。
湯気の立ち上る味噌汁や、パリッと皮の焼けた塩鯖を眺めているとこちらまでお腹の虫が鳴きそうになる。
「結局、塩鯖定食にしたんですか。鯵の干物定食の方がカロリー低かったのに」
「カロリーより欲ですよ。人間は欲望に勝てないのですよ。それよりも…」
鯖の小骨を取り除きながら、千代さんが怪しく眼鏡を光らせる。
「先ほどから面白そうな話をしてるじゃないですか。何ですか?京司君は桃花鳥ちゃんの小間使いになるんですか?」
「だーれが小間使いですか」
「そうですよ千代さん。奴隷です」
「待遇が数段悪化したなオイ」
「なるほど、そうなんですか」
「あんたも納得すな」
「え、あれ?違うんですか?」
冴え渡る京司のツッコミに千代さんは首を傾げる。
冗談のつもりだったのだけれど……どうやら本気で信じ込んていたらしい。
「冗談ですよ。先ほど話していたのさですね………」
塩鯖を頬張りながらふんふんとしきりに相槌を打つ千代さんに、ことの経緯を説明した。
************
「それで、どこから向かおうかっていう話をしていたんですけど…」
「……なるほど、そういうことですか…。う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん…………………あ、そうだ」
説明を聞いた後、箸を置き顎に指を当て、千代さんは5秒ほど唸ると何かを閃いたのか、ポンっと手を叩いた。
「そういうことならまず、イタリアに向かうのが吉かと思いますよ」
「イタリア…ですか?」
いつの間にかお弁当を食べ終え、パフェを食べ始めていた京司が動きを止める。
「はい。ここ5年間でのイタリアのGDP伸び率は世界トップレベルですし何より、日本とも友好関係にあります」
「あー……そういえば、元三国同盟の好で日本とは技術協力をしてるだとかどうとかを学院長が言ってたような言ってなかったような…」
「あのねぇ……そういうことは憶えときなさいよ、全く…」
「ぐっ……面目ない…」
えらく曖昧な記憶力を発揮する京司にため息を吐きつつ、思考回路を働かす。
ふむ……イタリア、か。
「…確かに、イタリア人は笑えてくるくらい高い買い値で商品を買ってくれるわ。【神酒】の商品だ、と売りつければ入れ食い状態。バベルの塔の如く金を積み上げてくれる。でもね、連中は商品を物としか見ちゃいないのよ」
膝の上に乗せたサラサラとした琴音ちゃんの髪の毛を優しく撫でる。
目を細めて気持ち良さそうな表情を浮かべる琴音ちゃんを見て、微笑みを浮かべながら続ける。
「使用され、消費されることが物にとっての人生。ま、観賞用の場合は別だけどね。それでも、本来その目的で生まれてきた物をそうしない輩が昔から後を絶たない。それは【神酒】の商品も同じように」
2人は何も言わずに、表情一つ変えずに、険しい顔で私の話に耳を傾けている。
琴音ちゃんの頭がしきりに前後に動き出す。眠気を我慢しているのだろう。琴音ちゃんも又、私のくだらない愚痴とも文句ともとれる話を聴こうとしてくれているのだろうか。
そんな琴音ちゃんに『おやすみ』と耳元で一言小さく呟くと、次第に規則正しい寝息が聞こえてき出した。
「…続けるわね…。確かに、一流メーカーの品やブランド品を持っていることがステータスになるのだろうけど……私は一度としてそれを良しと思ったことはないわ。『物の気持ちを考えて見たことがあるのか』とか言うけれど、要はそこなのよ。成金共は総じて物の気持ちを分かっちゃいない。そんな連中に売りつける商品なんて、ありゃあしないのよ」
「………そうかい」
京司は一度、短く息を吐き再びパフェに手を付け始める。
「なら、イタリアは後回しでいいか?」
私の目を見ずに、そう聞いてくる。
京司は、私の昔を知っている。それ故の優しさかどうかは分からないが、京司なりに気を遣ってくれているのは確かだった。
……その気遣いが、私には少しだけ痛かった。
「…いいえ」
だからそんな心中を察しられまいと私は、気丈に優雅に振る舞い、仮面を被り続けるのだ。
「そんなとこに長居はしたくないから、1番最初に向かうわ」
「…なら、決まりですね。日にちなどが決まったら知らせてください。イタリア軍と話し合って日程を調整しますから」
「おお……千代さんが外交系の仕事するの初めて見る…」
「む…失礼ですね。私だって外交系の仕事くらいしますよ。何と言っても【アネイアレーション】の専属オペレーターですから!」
「「ぷっ………くははははは!!」」
「え!?な、何で笑うんですか?私歳上なんですよ?ちょ、ちょっと〜〜〜」
腰に手を当て、鼻高々に胸を張る千代さん。
そんな歳不相応な千代さんのポーズと表情が2人のツボにどストライクした。
慌てふためく千代さんは、やっぱり歳上とは思えないわね…ぷっ…。
「あはははは………ふぅ。あー、笑い疲れた」
「本当ねぇ……くふっ」
目元を拭いながらそう言う京司に同意をする。
「もう……。2人して笑わないでくださいよぅ……」
「「ぷっ………」」
しょんぼりとうな垂れる千代さんを見ていたら、またもや笑いそうになった。
だめだめ…我慢我慢。
「えーっと、それで。最初に向かう国はイタリア、ということでいいな?」
「ま、どんな人が相手でも私は売れるけどね」
「日程はどうします?」
「そうねぇ……それなr「あーー…それなんだがな」…なによ」
具体的な日程を提示しようとした時、京司が右手を上げる。
「…新入りが入った直後にしてくれるか?」
「新入り…ですか?」
「えぇ。アネイアレーションに新しく狙撃手が入る予定なんですよ」
「予定って……正確な入隊日どころかまだ誰かも分かってないのに?待ってたら年越すんじゃないの?」
「いんや。俺の勘では、この1週間から2週間迄には決まる……と思う」
根拠は勘。
こいつらしいと言えばこいつらしいのかもしれない。物事を毎度毎度冷静に判断する故に、偶に発揮するこいつの勘は恐ろしい程よく当たる。
それを踏まえた上で私は、大人しく京司の案に乗ることにした。
「…分かったわ。どうせいつでもいいし、欲を言えばちゃっちゃと終わらせたかったけど……まぁいいわ」
「それじゃ、決定ですね。京司君は事が決まり次第、私に連絡を入れてください。桃花鳥ちゃんの方は、御神酒社長に連絡を入れておきます」
そこまで言い終えると、箸を再び手に取り千代さんは、少しだけ冷めた味噌汁を啜る。
京司も又、半分だけ食べ終えたパフェに再び手をつけ始める。
「…うぁー…。少し冷めただけで味噌汁って結構味落ちるんですねぇ…」
「その点パフェってすげーよな。最後まで桃たっぷりだもん」
「なーに馬鹿なこといってんのよ、あんたは」
ホイップクリームの塊を口に運びながら言う京司に、琴音ちゃんの頬を突つきながら返す。
ふふ………。
ふふふ…………。
寝てる琴音ちゃんペタ可愛い。
************
ーーその後、しばらく談笑した後にお開きとなった。
食堂で千代さんと別れると、私達は帰路につくことにした。
「さて……国頭さんは?」
「ん、もうすぐ着くわ」
ケータイの画面を覗くと、時刻は午後3時を回ったところだ。
エントランスには昼頃と変わらず、スーツを着た営業マンや、慌ただしく働く受付嬢の声が賑やかに響き渡っている。
「………なぁ」
「?なによ」
「いや……さっきの話なんだけどさ」
「さっきのって……ああ、あの話がどうかしたの?」
「お前…さ。まだ恨んでたり憎んでたりするのか?」
京司の言葉に、ケータイの画面を弄っていた手がピタリと止まる。
「…答えたくないなら、答えなくていいさ。別に、俺も無理に聞き出したいわけじゃないし」
「正直ーーー」
考えるより、悩むより先に口が動いていた。
「恨んでないって言ったら嘘になるわ。でもね、そんなことしたってどうにもならないのよ。恨む相手はこの世にいない。ぶつける感情は行き場を無くして、溜まって溜まって……やがて発狂してしまう。私には後ろを振り返る余裕なんてない。ただ前に、皆に助けられながら進むしかないの………。ねぇ、京司。その時はーーー」
言葉を切り、京司の顔をジッと見つめる。
「ーー私のこと、助けてくれるかしら?」
「…もちろんですとも、お姫様」
まさしくそれは、姫に忠誠を誓う騎士のようだった。
そんな忠誠の儀が終わったところで、入り口に黒塗りの外車がやってきた。
「それじゃあ私は帰るわね。あんたも、さっさと帰りなさいよ。琴音ちゃんを起こさないように、ね」
「はいはい分かってますよ…」
「よろしい、いい返事ね」
琴音ちゃんの髪を軽く撫でて、京司に手を振りながら入り口を抜ける。
…あれでいい。
あれでいいのだ。
仮面を被れ。
気丈に振る舞え。
嘘を吐き続けろ。
本心を隠せ。
人を信じて、人を疑え。
世界は汚く淀んでいる。
信じる人間は一部でいい。
その選び抜かれた人間の助力を借りて生きろ。
ーーー自分のために、生きろ。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「御苦労、国頭」
車に乗り込み、国頭に命じて発進させる。
「よいのですか?」
「何のことかしら」
「琴音様と京司様のことですよ」
「あぁ……いいのよ、別に」
本当は、琴音ちゃんだけ家まで送り返したかったんだけどね。京司がどうしてもって言うから仕方なく折れたのよねぇ。
「そんなことより国頭。帰ったらお風呂に入りたいわ」
「かしこまりました、お嬢様」
…国頭は、一部の人間。
国頭が何かの拍子に裏切ることもあるかもしれない、と思ったことは微塵もない。
だって、産まれた頃からおじいちゃんと同じく、私を愛してくれているもの。
だから私は信じる、国頭を。
窓に移した視線をチラリと国頭の背中へと向ける。
大きい、わね。それこそ、京司よりも何倍も大きい。
「どうしました?お嬢様」
「んー…何でもないわよ」
視線に気づいたらしい国頭をはぐらかし、再び視線を窓の外に戻す。
さて……と。
明日も精々、頑張っていきますか!
〜こたつサンクチュアリ〜
お「さーさーのはーさーらさらー♪」
桃「おーまーえーをー○ーすー♪」
お「ファッ!?」
桃「七夕ねぇ…。こたつも七夕仕様よ」
お「ま、まぁ……笹があるだけだけどね…」
京「オイ…」
桃「今回は特にやることもないから……折角だから、皆の願い事でも見ましょう」
お「お、いいねそれ。さんせーさんせー!」
京「オイオマエラ」
桃「あら、いたの京司」
京「俺主人公よ!?こたつのメインパーソナリティよ!?何で今回ゲストなの!!」
お「だって今回は桃花鳥が中心だったじゃん。あと、誰もお前をメインパーソナリティだなんて言ってないじゃん」
桃「そういうことよ。さ、座った座った」
京「釈然としないが……まぁいいや。それで、誰の願い事から見るんだ?」
お「じゃあ京司から」
京「俺か?俺は普通だぞ。ほら」
桃「えーっと?なになに……【父さん母さん琴音と平和に過ごせる日がきますように】」
お「……普通だな」
桃「普通ね」
京「るっせぇ。だいたい俺はボケ担当じゃなくツッコミ担当なんだよ」
お「じゃあ桃花鳥」
桃「私?私も普通よ」
京「えっと…。【世界中の営業マンが私の下で働きますように】」
お「…お姫様っつーか女王様みたいだな」
桃「失礼ね。私は楽したいだけなのよ」
京「次はセリンだけど……(ガサガサ)あった」
お「【ブレ○ブルーで日本一に輝けますように】」
京「伏字伏字」
桃「ギリギリじゃない」
お「ちなみに私はラグナを使ってます。使いやすいよね、ラグナ」
桃「次は幸久ね。(ガサガサ)………あったわ」
京「【最近空気なんで何とかしてください】」
桃「……何とかしてやりなさいよ」
お「…努力はする」
桃「き、気を取り直して次は湯弓月学院長よ!」
お「えーーっと…?【樺島君より空気なのですがこれいかに】」
京「既に願い事ですらねぇ!」
桃「なんか紙が湿ってるけど……」
京「きっとアレだよ。涎だ、涎。涙なんかじゃない」
お「さて、本当はあと何人かの願い事を紹介したかったんだけど、行数の問題が出てきたよ」
京「メタいメタい。でもまぁ、そろそろこの辺で終わるか?」
桃「そうね。後は私達だけで楽しみましょう」
お「それじゃ、いつものやるか。京司、よろしく!」
京「OK。えー……こほん。次回もまた、こたつの場で会おうぜ?」
「「「ばいばーーーい」」」
次回【弓なりの月にご用心(仮)】




