8.それぞれの結末
その後の我々四人は、それぞれ元に戻ることもなく、日常を送っている。
私ジュリアン王子は、
「やっと殿下も王族としての責任を果たしてくださるようになった。」
「以前とは見違えるくらい勤勉で、何事も完璧にこなすようになられた。」
などと評判も上々である。
このまま王子でもいいかなと思えるくらい快適だ。
先日、婚約者が決まった。
もちろんエレノア(ジュリアン)ではない。
残念そうな侯爵に
「エレノア嬢は、王子妃としては、少々教養が足りなかった。
でも高位貴族の夫人なら十分務まると思う。
じつは、ぜひ紹介したい人物がいてね。
年齢は少し離れているが、たいへん豊かな領地を持っていて、交易のための商業港もある。
エレノア嬢は、裕福で何の心配もない暮らしができると思うよ。
もちろん侯爵家にも、たいへん良い話だと思う。」
と言って、エレノアの結婚相手を紹介した。
侯爵も侯爵家の利益を考えて、たいそう乗り気だった。
その後エレノア(ジュリアン)は、結婚を嫌がって逃げ出そうとしたところを、侯爵家の護衛に捕まって、早々に結婚相手の領地に送られたらしい。
見たかったな。
エレノア(ジュリアン)が、シーツをつないで二階から逃げようとしているところ。
チェルシー(レオナード)は、後悔の念もあってか、聖女のお勤めに精を出している。
ときどき神殿騎士と魔獣退治に出かけるらしい。
嬉々として魔獣を退治する姿が浮かぶようだ。
聖女の杖を振り回して暴れるので、最近では「撲殺聖女」などという物騒な二つ名もある。
レオナード(チェルシー)は、ラトリッジ家の鍛錬が嫌で、鍛錬のなさそうな高位貴族に婿入りして逃げようとしたらしい。
騎士団長が知り、怒り狂っていたので、なだめつつ言ってみた。
「きっと結婚相手が欲しい年頃なんでしょう。
ラトリッジ家は、先祖に武闘大会の優勝者も出た家柄です。
レオナードの結婚相手は、武術に秀でた家の娘で、レオナードの鍛錬にも付き合えるような人が良いのではありませんか?
確か辺境伯の三女のご令嬢が、女性ながら剣術に優れているとか。
よかったら王家が仲立ちをしましょうか?」
幸い両家の合意を得て、レオナードの婚姻が決まった。
本人はますます厳しくなった鍛錬に泣きわめいているとか。
それを婚約者が、びしびししばき倒しているそうだ。
笑える。
見てみたい。
そういうわけで、至極平和な毎日である。
願わくばこのままずっと続いてほしい。
他の三人が、
同じように思っているかどうかは知らないが。




