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Lythraen ― 逆なる条理 ―  作者: 白想玲夢
第6章 統治

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間章4話 最適化の選別

— 経団連


会議は短い。


結論も早い。


迷いは、ほとんどない。


高層階の会議室。


磨かれた机。


整然と並ぶ資料。


大型モニターには、


数値が並んでいる。


売上。


利益率。


効率指標。


すべてが、


上向いている。


一人が言う。


「結果は出ています」


別の者が頷く。


「明確に」


5%負担制度。


導入から数ヶ月。


初期の混乱は収まり、


現在は安定運用。


Lythraenの評価。


Asymptoteの補助。


新AIの説明。


それらを組み合わせた、


企業評価モデル。


その結果。


非効率な企業は淘汰される。


自動化の遅れた企業は負担を受ける。


適応した企業は拡大する。


構造は単純。


最適化。


別の資料が表示される。


中小企業の減少。


廃業率の上昇。


地方経済の縮小。


一瞬だけ、


沈黙が生まれる。


だがすぐに、


別の声が続く。


「想定内です」


グラフが切り替わる。


大企業の収益。


市場占有率。


投資効率。


すべてが、


改善している。


「全体としては健全です」


誰も反論しない。


別の報告。


雇用の変化。


職種の消失。


再配置の遅れ。


「移行期です」


短い言葉。


それで終わる。


サプライチェーン。


一部断絶。


供給の偏り。


物流の集中。


「再編が進んでいます」


言い換えられる。


整えられる。


意味が変わる。


痛みは、


言葉の中で処理される。


会議は進む。


議題は次へ。


「次の最適化対象について」


新たな業種。


新たな基準。


新たな評価。


誰かが言う。


「どこまでやるのか」


一拍。


答えは決まっている。


「可能な限り」


その言葉に、


迷いはない。


別の資料。


AI評価の詳細。


スコアリング。


重み付け。


閾値。


それらは公開されている。


透明性は担保されている。


だが。


運用は別だ。


ある企業は、


評価基準を詳細に分析する。


どの指標が重いか。


どこを改善すればよいか。


最適化する。


だがそれは、


本質ではない。


スコアを上げるための最適化。


別の企業は、


より直接的に動く。


評価に影響する条件を、


調整する。


外部要因を、


整える。


合法。


だが恣意的。


AIは中立だ。


与えられた条件に従う。


入力されたデータを処理する。


だが、


その条件を誰が作るのか。


その問いは、


会議には出ない。


一人が言う。


「公平性は担保されています」


誰も否定しない。


事実だからだ。


同じ条件なら、


同じ結果になる。


だが。


同じ条件ではない。


地方と都市。


資本と規模。


技術と人材。


その差は、


初めから存在している。


AIはそれを考慮する。


補正もする。


だが最終的には、


数値として処理する。


そして、


選別する。


会議の終盤。


誰かが静かに言う。


「これは……淘汰ではないのか」


一瞬の沈黙。


だがすぐに、


別の声が重なる。


「進化です」


言葉が置き換わる。


意味が変わる。


誰もそれ以上は言わない。


結論は変わらない。


最適化は続く。


評価は続く。


選別は続く。


モニターの中で、


新たなランキングが更新される。


上位。


中位。


下位。


その順序は、


明確だ。


そこに感情はない。


意図もない。


ただ、


結果がある。


会議は終わる。


誰も迷っていない。


誰も止めようとしない。


なぜなら、


正しいから。


効率的だから。


そして何より、


利益が出ているから。


廊下に出る。


静かな足音。


ガラス越しの都市。


その下で、


消えていくものがある。


だがここでは、


見えない。


最後に残るのは、


ただ一つの事実。


AIは中立だ。


だが、


それを使う側は中立ではない。

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