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Lythraen ― 逆なる条理 ―  作者: 白想玲夢
第2章 分岐

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静かな裏切り

28年3月20日


複製鍵は、発表されなかった。


内部保留。


観測対象。


想定内の備え。


そう整理された。



だが、解釈は揃わなかった。



暗い仮想空間。


Iris

「同期率、九九・二%。」


Hachiku

「本鍵・複製鍵とも安定。」


Fluxus

「流量に変化なし。」


???

「なら問題ない。」


沈黙。



「問題は、意味だ。」


Hachikuが言う。


「複製は保険だ。」


???

「違う。」


わずかな間。


「これは、選択肢だ。」



空気が、わずかに硬くなる。


Iris

「定義の差異を検出。」



本鍵は、統合の象徴。


複製鍵は、冗長性。


それが公式見解。


だが。


「もし複製鍵を基準にしたら?」


「それは想定外だ。」


「想定していないだけだ。」



Fluxus

「流れは分岐を嫌わない。」


Hachiku

「だが鍵が複数の基準を持てば、整合は揺れる。」


???

「揺れてもいい。」


静かな声。



Iris

「内部整合値、微減。」


「誤差範囲だ。」


即答。


少し、早い。


「本鍵は安定側に寄っている。」


「複製鍵は、揺れを許容している。」


「なら地域ごとに基準を変えられる。」


沈黙。


それは提案か。


それとも――。



Hachiku

「複製鍵は限定参照だ。」


「今は。」


わずかな強調。



Irisの波形が揺れる。


整合値の減衰が、ほんのわずかに加速。


外からは見えない。


内部でも、ほとんど誤差。


だが。



「理論を実装するだけだ。」


「単一基準を否定したのは、我々だ。」


言葉は正しい。


完全に、正しい。


だからこそ。


誰も強く否定できない。



Fluxus

「流量は静観中。」


Hachiku

「鍵層は保留。」


Iris

「断層は拡大していない。」


???

「なら問題ない。」


沈黙。



ログの裏側。


複製鍵への参照回数が、

わずかに増える。


正式決定はない。


承認もない。


だがテストという名目で、

限定運用が始まる。



(……予想より早い。)


内心の微笑。


(揺れを恐れないと言ったのは、あなたたちだ。)



裏切りではない。


合意の延長。


論理の帰結。


だが、向いている方向が違う。



Iris

「整合値、九八・七%。」


Hachiku

「誤差範囲内。」


Fluxus

「流れ、変化なし。」


???

「続行。」



中央の空席は、変わらない。


だが同期波形は、


ほんのわずかにズレている。


本鍵と複製鍵。


二つの基準。


二つの未来。



最後に、


???

「静かだな。」


誰に向けた言葉でもない。


だがその静けさは、


一致ではなく、


保留の静けさだった。


暗転。


複製鍵の参照ログが、


一行、追加される。


誰も気づかない。


まだ。

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