フレンド26
ボクたち二人が茅ヶ崎に着いたのは、午前10時くらいだった。
尾行されないように、何度か電車を乗り換えた。
「まこと、どうだった?」
「違和感はないから、多分大丈夫」
「油断しないように」
「分かった」
慎重に周囲を警戒しながら、常盤スポーツ整体院に向かった。
整体院に到着すると、窓の外から中を覗いてみる。
そこには、大きな体の常盤と、整体の先生などが着る、襟元の詰まった白い上下の服があった。俗にいうケーシーウェアだ。
舞花はその制服を着て、常盤の指示に従い、きびきびと動いているようだった。
患者の対応をしたり、施術の準備をしたりと、真面目に働いている。
「真面目に働いているみたいだね」
「そうだな」
「あんなに真面目に働いているのに、スパイなわけないよね」
「先入観は……」
「分かっている」
みっちゃんの言いたいことは分かっている。
目の前の様子だけで、舞花がスパイではないと決めつけることはできない。
分かっているけど……。
「まこと、昼休みになるまで近くで待とう」
「分かった」
ボクとみっちゃんは、カフェで休憩時間まで待つことにした。
外のテラス席の一番端に座り周囲の人に会話を聞かれにくい位置で、これからのことを話し合った。
「もし、舞花がスパイだったら?」
「始末するか、ママに渡さなきゃならないだろうな」
「……じゃあ、スパイじゃなかったら?」
「ママと話して、誤解を解くしかないな」
「でも、ママはもう舞花が犯人だと決めつけている……」
しばしの沈黙の後、みっちゃんが口を開いた。
「まこと、おかしいと思わないか?」
「何が?」
「スパイの洗い出しなんて、俺らの仕事か?」
「?」
みっちゃんは何が言いたいんだろうか?
「だから、スパイの洗い出しなんて、素人の俺たちがすることなのか?」
「確かに、専門のチームがあるはずだよね」
「それに、舞花ちゃんとまことが会った直後なんて、よくよく考えたらタイミングが良すぎる」
「そうだね。確かに、取ってつけたようなタイミングだね」
「ママはもっともらしいことを言うが、どうも違和感がある」
「疑わしいってこと?」
「ああ、全てがな」
みっちゃんは、完全にママを疑っている。
「他にもあるの?」
「Su-Suのことだって変じゃないか。容体が安定してきていたのに、急変した」
「えっ、Su-Suも?」
思わず声が大きくなり、ボクは慌てて周囲を確認した。
「声を抑えろ。誰に聞かれるか分からない」
「ご、ごめん……」
「俺と、まことが会ったのだって偶然か?」
「今考えると、偶然にしてはおかしいよね……」
これまで別々の出来事だと思っていたことが、頭の中でつながり始める。
もし、みっちゃんの考えが正しければ、ボクたちは何か大きな思惑に巻き込まれているのかもしれない。
「そもそも、俺たちの敵はシルバーセージ。だけど、俺たちの組織の名前は?」
「聞いたこと……ない」
今まで気にしたこともなかった。
ママの指示に従い、敵と戦う。それが当たり前だと思っていたからだ。
でも、今ならボクにも、みっちゃんの疑念が分かる。
何かがおかしい。
「取りあえず、今は舞花ちゃんの話を聞こう」
「うん」
ボクらはカフェを出て、再び常盤スポーツ整体院に向かった。
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