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戦わない召喚士エレノアの異世界記録 ――名を受け取り、世界に触れる  作者: ぷにゅん


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第221話 選べない者

地下。


あの空洞は変わらない。


静かで。


重くて。


動いている。


王はそこに立っていた。


一人ではない。


だが。


誰も声を出さない。


報告はすでに終わっている。


短く。


簡潔に。


そして。


十分だった。


「……改善」


王が小さく言う。


研究官が答える。


「はい」


「外部干渉後、流れが安定しています」


「効率も上がっています」


王は視線を動かさない。


中央を見る。


“それ”を。


巨大な存在。


大地と一体化したもの。


ゆっくりと動いている。


呼吸のように。


王は言う。


「取られてはいないな」


確認。


研究官は即答する。


「はい」


「損失はありません」


「むしろ」


少しだけ言葉を選ぶ。


「負荷が軽減されています」


沈黙。


重い空気。


王は一歩前に出る。


足元の石がわずかに鳴る。


近づく。


見上げる。


“それ”は変わらない。


だが。


違う。


“応じている”


王は低く言う。


「……あれは何をした」


研究官は答えられない。


分からない。


ただ事実だけがある。


「……不明です」


王は目を閉じる。


ほんの一瞬。


そして開く。


「壊さずに整えたか」


誰に言うでもない。


だが。


確信に近い。


研究官は言葉を選ぶ。


「理論上は――」


王が手を上げる。


止める。


「理論ではない」


短く。


重い。


沈黙。


空洞の奥で。


“わずかに動く”


王の足元に伝わる。


前とは違う動き。


反応ではない。


“応答”


王はそれを感じる。


そして。


小さく言った。


「……見ているな」


誰に向けた言葉でもない。


だが。


確かに通じている。


研究官は何も言わない。


言えない。


王はしばらく動かない。


そのまま。


やがて。


振り返る。


「排除は」


短い問い。


研究官は答える。


「可能です」


「対象は単独」


「戦闘能力も――」


王は聞いていない。


ただ。


一言。


「……そうか」


沈黙。


長い。


重い。


そして。


王は言う。


「……やめろ」


空気が止まる。


研究官が顔を上げる。


「観察を継続」


「接触は許可する」


短い命令。


だが。


明確な変化。


研究官は迷う。


ほんの一瞬。


だが、従う。


「……了解しました」


王は視線を落とす。


足元。


大地。


そして。


小さく言った。


「壊していない」


ほんのわずかな間が空く。


「なら」


続きは言わない。


だが。


意味はそこにある。


地下は静かだった。


だが。


決断は変わった。



地上。


砂の上。


エレノアは立っていた。


何もしていない。


だが。


分かる。


ネファルが言う。


(変わった)


ラグナが言う。


(止められてねぇな)


ヴェルナシアが囁く。


(見ている)


エレノアは空を見上げる。


風が流れる。


砂が動く。


ほんの少し。


軽い。


そして。


静かに言った。


「……まだ続きますね」


終わっていない。


だが。


壊されてもいない。


その間。


その境界。


そこに今、立っている。


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