第215話 探す者たち
砂漠の端。
まだ夜の冷気が残っている時間。
音は少ない。
だが。
規則正しい足音だけが続いていた。
数人の隊。
軽装ではない。
砂に慣れた装備。
無駄がない。
先頭の男が手を上げる。
全員が止まる。
一瞬で。
誰も声を出さない。
視線だけで伝わる。
男が低く言う。
「ここだ」
その一言で、全員の空気が変わる。
砂の上。
何もない。
だが。
“違う”
一人がしゃがむ。
手袋越しに砂を触る。
ゆっくりと。
そして言う。
「……動いてる」
別の者が小さく言う。
「流れが変わってるな」
男は何も言わない。
ただ見ている。
足跡はない。
争った跡もない。
だが。
確実に。
“何かが通っている”
男が言う。
「記録」
一人がすぐに装置を取り出す。
砂の流れ。
温度。
微細な振動。
すべてを測る。
そして。
わずかに顔を上げる。
「……一致します」
男は頷く。
短く。
「続ける」
隊は再び動き出す。
砂の上を。
迷いなく。
まるで。
“道が見えているかのように”
⸻
少し離れた場所。
別の隊。
こちらは数が多い。
だが動きは静か。
無駄がない。
一人が言う。
「地下の反応、ここで強くなってる」
別の者が答える。
「外と繋がってるな」
短い会話。
だが。
確信している。
“中の変化は外に出ている”
先頭の女性が言う。
「接触の可能性は?」
一瞬の沈黙。
そして。
「高い」
それだけで十分だった。
女性は頷く。
「捕らえるな」
全員の視線が集まる。
女性は続ける。
「まず観察」
「判断はそれから」
誰も反論しない。
すぐに動く。
砂の中へ。
音を消して。
⸻
地下。
王は再びそこに立っていた。
報告はすでに受けている。
短く。
正確に。
そして。
十分だった。
王はその存在を見る。
動いている。
ゆっくりと。
だが。
“違う”
昨日よりも。
確実に。
「……繋がったな」
誰に言うでもない。
だが。
はっきりとした言葉。
研究官は何も言わない。
言えない。
王は視線を外さない。
そして言う。
「見つけろ」
短い命令。
迷いはない。
「何をしたかではない」
一瞬、間を置く。
「誰が触れたかだ」
研究官が頷く。
「はい」
地下は静かだった。
だが。
確実に。
“外と繋がっている”
⸻
地上。
エレノアは立っていた。
何もない砂の上。
だが。
分かる。
ネファルが言う。
(来ている)
ラグナが言う。
(複数だな)
ヴェルナシアが囁く。
(探している)
エレノアは動かない。
ただ、静かに言った。
「……見つかりますね」
風がわずかに流れる。
逃げるか。
隠れるか。
それとも。




