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25.追跡者2


 敵意むき出しじゃん……。私が言い寄ってるわけじゃないのに!!!理不尽だっ!


「あっそっ!お宅の所のお坊ちゃんにしっかり言い聞かせてよ、陸の女なんかに現を抜かしてないで身の丈に合った女性と結婚するようにってさ、この指も解除するようにアンタからも言っといてよ、困ってんだよこっちは……はぁーーーーー」


 そう言って盛大な溜息を吐くもレイビスから何の返事もない。えっ、シカト!?そう思って見てみれば先程と同じ体勢のまま、目を丸く見開いている。いかにも驚いてます。と言わんばかりに


「えっ、何、なんで驚いてんの?」


素直にそう口にすれば、レイビスはハッとしたように姿勢を戻す。


「いえ……その、陸に上がってからというもの、陸の女たちはアルシエル様どころか私にまで次々と媚びへつらって寵愛を受けようと必死でしたので、アルシエル様が高貴なお生まれと存じておられるのですよね?」


そう小首をかしげるレイビス。


「貴族だか、王族だかは知りませんが、やんごとなきお育ちだろうとは思ってますよ。アンタみたいなお付きもいるくらいだし、よっぽど高貴なお方なんでしょうね」


「知ってるのに何故?」


「何故って、言われても、私、スラム育ちですし?」


「いえ、スラムだろうが何だろうが関係なく、玉の輿を狙ってよりよい生活を得ようとするのが普通ではないですか?」


「あぁ……、まぁ、普通は……そうなんじゃない?

私は別に今の生活で満足だし、日がな一日、本読んで暮らせれば別に超豪邸である必要はないし、貴族とか王族とか、なんやかんや制約とかあって不自由、社交界とか人付き合いとか諸々やる事多くて気を遣うし大変で…………いやだから、めんどくさい事が嫌いなだけです。はい。」


「……スラム育ちのわりに、そこそこの教養、そしてずいぶんの身の丈に合わぬ名前と思っておりましたが、貴方もしや「もしやもなにもスラム育ちで金の為なら、人殺しもいとわぬただのルイゼです!」」


そうまくしたてるもレイビスの目が疑うように再び目を細める。


「じゃっ…じゃぁ、私はこれで」


回れ右をしようとして「お待ちください」と、再び止められる。


「こちらをお持ちください。

貴方には色々と思うところがございますが、こちらを私が持ち帰ってはアルシエル様にお叱りを受けてしまいます。

なかなかどうして……フフッいえ、なんでもございません。

では、私はこちらで失礼させていただきます。

では、ルイーゼ様、良い夜を」


 そう言うと、固まっている私に紙袋を持たせ、にっこりと微笑むとさっさと路地を出て行ってしまうレイビスの背中を見送った。


「……はっ!!指の件!!解除しろって、ちゃんとアンタの坊ちゃんに言ってよね!!!」大声で叫んだが、果たして聞こえたかどうか……。


「なんなんだ……はぁ…」


 何度目ともわからない溜息をついて紙袋をのぞき込む。中に入っていたのは小さな箱が一つ、路地の壁に背を預けながらその箱を開けてみると、水色の二枚貝の形をしたベルベット調の箱が出てくる。それを開くと、薄ピンク色の螺鈿で造られた、小さな花の形をしたネックレスが入っていた。


「可愛い……」


 思わずそう呟いてしまうくらいには、私の好みの物だった。調べられるはずもないので、偶然選んだものなんだろうが、なんだか胸の奥がジワリと暖かくなるような気がして照れ臭かった。私にも女らしさが少なからず残っていたとは……


「私……案外チョロい女なのかもしれない……」


 そう小さく呟きながら、汚い路地から見上げた夜空には悲しいことに慰めになるような夜空はなく、星の一つも見えはしなかった。




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