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18.不法侵入の訪問者


「ダァーーーー、散々な日だったぁー」


 地の這うような声を出しながらボロアパートの階段を上っていると、ちょうど上から隣の部屋に住む娼婦のメイナがぴったり体に張り付くような服に身を包み、13cmはあろうかと言うヒールでカンカンと高い音を立てながら上から降りてくる。蛍光ピンクの超ミニタイトスカートゆえに、下からではパンツが丸見えだ…。


「メイナ、パンツ丸見え」


「んぇー?いやぁーんエッチ!」


すれ違いざまに、耳元でリップ音を立てられてヒョエっと慄くと


「んもぉールイゼ可愛いぃー!あっ、そういや部屋に誰か来てるみたいよぉー。多分、前に見かけたアイツだと思うわー、じゃっ!今日も男をアンアン言わせに行ってきまーす!」


「行ってらー」


 言わされるんじゃなくて、言わす側だったんか…。どうでもよいことを考えつつ、メイナの言っていた人物には心当たりがあるため溜息を吐く、どうしてこういう時に限って来客は続くのか……。


 ヨレヨレと階段を上って、一番奥の部屋のドアノブを回せば案の定鍵は開いており簡単に扉は開いた。

それと同時に飛んでくるナイフをかわせば、気の抜けた男の声が響く


「おやおやぁー、やっとお帰りかよぉ?今日はずいぶんとおせーなぁ?ルイゼ」


「なんで疲れてる時に限って来んのかねぇー情報屋のクロックさんよー」


 あぁーやれやれーと、ぼやきながら部屋に入ればリビングテーブルの上には食べかけのピザが3ピース残っていた。


「勝手に人の家でピザ食うな」


そう言いながら、クロックが買って来たピザの1ピースを口に運ぶ


「お前も勝手に食ってんだからお互い様だーって、んぅ?」


 もぐもぐしながら次のピザを口に運んでいると、クロックが首をかしげながらこちらに近寄ってくる。クロックはしっかり立てば長身だろうに、極端な猫背でボサボサの天パがかった黒く肩まで伸びた長い髪に、狩りをする直前の猫みたいな真ん丸な黒目、飯食ってんのか?と思うほどにガリガリに痩せた腕が魔女みたいに黒いマントから伸びている。そんな骨みたいに細い腕が、ピザを食べている私の右手を掴む。


「その指輪…妖精の契りの指輪かぁ?何でお前が妖精なんかと契約を?」


その黒い目がピザ越しに私の目を真っ直ぐと見つめる。腕を振りほどき、ピザを飲み込むと


「色々あったんだっつーの!不本意というか、うかつだったと言うか?ともかく、今日は怒涛だったんだ。要件あるなら早めに言ってー、言っとくけど仕事は相変わらずの休業状態だからー」


3枚目のピザに手を伸ばしながらそう伝えれば


「んまぁー、今のお前にゃ仕事を頼むつもりはねぇーよ?5年前からなーんか、腑抜けちまったもんな、お前?」


 ピザを頬張りながらズケズケものを言うクロックを睨みつける。マジで何しにきやがったこいつ……。この男は昔っからふらりと私の家に現れては我が物顔で家で過ごして去っていく、要件があったり無かったり、まったく食えない男なのだ。


「今日来たのわなぁー、お前の事嗅ぎまわってる奴が街にいたって話を耳に挟んでよ、そいでお前のこと思い出してふらりと寄ったんだ」


「どんな奴?」


「情報屋相手にタダで当たり前のように聞いてくるとはぁ、相変わらずずぶてぇーなー?

まぁ、いいけどよぉー?あれだ…町はずれのー、コーヒー屋のゴードン知ってるだろ?

そいつも所に従真っ黒なスーツ着たお堅そうな野郎がお前の事ききにきたんだってよぉ?なんでも、裏の仕事も知ってるみてぇーな口ぶりだったらしぃーぜ?

思い当たる奴いるかぁー?」


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