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369:始まりの終わり

最終話までたどり着いて頂き、ありがとうございました。

今話にて、このお話は終わりとなります。

『その鎌で何刈る気』から、とても長い話になってしまいましたが、書きたいことは書けたと思います。では最終話も宜しくお願いします。

 ここはGR農場のリュージの執務室。

そこでリュージと一緒に、一連の出来事のり合わせを行っていた。


「とりあえず、お疲れさまアキラくん。そして、大変だったねミズホさん」

「「ありがとうございます」」


 記憶があったシーンは頭に浮かんでいたが、復習のように事態の説明をしてくれた。

『聖王都』に現れた食人鬼グールは殲滅し、出陣した『聖王国』兵は半壊したようだ。

ラフィーナの無事が確認され、ジェイルディックは譲位を決意したらしい。

仮の責任者にはペインが就いて、『聖戦』の停止は即日発表されたようだが、正式な文章は王国には届いていなかった。


「王国も大変だったようですね」

「うん。ノルド男爵領が謀反を起こした……って言って良いのかな?」

「化け物になった、ノルド子爵のせいですね」

「そう。長い間抱えていた懸念が、解消されて良かったよ。倒したのはウォルフくんだね」


 義兄ウォルフの活躍を誇らしく思いながら、瑞穂に「後で紹介するね」と一言だけ伝える。

リュージのことは事前に説明しており、GR農場を目にしてとても驚いていた。


「それで、これからどうするか決めた?」

「はい、二人で話し合ったのですが……」

「この世界では適齢期みたいなので……。あきらを随分待たせたみたいだから……」

「そうか、決めたんだね」


義兄ウォルフの結婚式の後にですけどね」

「それで、生活の方はどうするのかな?」

「自分は働こうと思います。それで、リュージさんにお願いが……」


 今年の三月で、自分の学業期間は終了したいと申し出た。

その代わり来年の四月に、瑞穂を学院に入れて欲しいと願い出る。

まだこの世界について理解出来てないだろうし、学院では多くの人に出会えたから。

時期を来年にしたのは、二人で旅に出ようと決めたからだ。


「うん、世界は広いからね。瑞穂さんが戻ってくるなら、アキラくんも帰って来ると思ってて良いんだね」

「はい、絶対戻ってきます」

「リュージさん、お世話になります」

「それで、どこに行くの?」


 『時空間魔法』を失った今、旅が難しくなるのは理解していた。

それでも瑞穂と一緒なら、王都だけでは狭いかもしれないと思ったのも事実だ。

かろうじて残っているルートもあるけれど、それは緊急時用にしか使わない予定だった。

だからまずはアーノルド男爵領に行って、義両親に瑞穂を紹介したいと思う。

その後はラース村に行って、マザーに挨拶だ。


 瑞穂に見せたいものはいっぱいあった。

この世界には、桜もあれば温泉もある。秋には収穫祭があり、フリーマーケットだって開催される。

収穫の時期までに王都へ戻ってきて、ウォルフとステイシアの結婚式に参加しよう。

全ての人に感謝をしつつ、自分達は幸せだと声を大にして伝えたいと思う。


「じゃあ、旅を楽しんで。ティーナから聞いていると思うけど、馬はこちらで回収してくるよ」

「ご迷惑お掛けします」

「アキラくんのお陰で、コロナさんも助かったからね。フレアは、しばらく謹慎だけど」

「復帰出来たのですか?」

「あれは野放しに出来ないからね。王国の『秘密兵器』だから」


 まだ出掛けるには時間がある。

王都でも挨拶をしなければいけない人はいっぱいいた。

そして後で、あるレポートをリュージに届けたいと思う。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 時は流れて収穫の秋。

間もなく収穫祭という季節のある日、とある小さな協会で男爵家の結婚式が行われていた。

アーノルド男爵家のウォルフと、ティーンバレー伯爵家のステイシアの結婚式だ。

男爵家次期当主に嫁ぐ身として、式場として申し分はなかった。

かつて父と母が挙げた式場で、集まっているのは親族しかいない。


「お父さま、お母さま。列席ありがとうございます」

「可愛い孫の結婚式だ。大々的に発表したかったのだが……」

「陛下、それは難しいかと……」

「時が流れたのだがな。伯爵家の皆も、楽にするが良い」


 ローランドとスチュアートが談笑し、ウォルフとステイシアは仲睦まじ気に寄り添っている。

セルヴィス夫妻は目にいっぱいの涙を溜めており、ローラ夫妻や子供達は「次はうちね」と意気込んでいた。

ミーシャもロロンもおめかししており、ミーシャの所には微妙な距離でロメロがいた。

そして自分の隣には瑞穂がいる。家族には紹介済みだった。


 アーノルド男爵家は、相変わらず内政に励むらしい。

その方針は王家・高位貴族家を前にしても変わらず、ステイシアの兄は少し憤慨しているようにも見えた。

そして政治的には良い評価を受けていないのに、ミーシャとロロンの評価は鰻上りだった。

今年のミーシャのデビュタントは、盛大なものになると聞いている。


「みんな、俺達の為にありがとう!」

「私達、幸せになります」


 式自体は短く済んだ。

これから移動して、GR農場で内々に披露宴を開く予定だ。そこには多くの関係者が待っていてくれている。

マザーをはじめとして、メルナールを含めたミーシャの職場関係。

騎士の仲間に良好な関係の貴族家など、内々と言うには大きすぎる会だった。

そこには何故か公爵家まで参加していて、瑞穂が公爵家の養女になることが発表された。

そうなると家格的につりあうか心配になったけど、瑞穂は変わらずに隣で微笑んでくれていた。


 披露宴も終わり、今日ウォルフとステイシアはうちに泊まりに来るらしい。

新居も決めたようで「仕事柄、そう簡単に遊びに来ることが出来なくなるから」と言っていた。

普通は新婚初夜……と考えてしまうけれど、ステイシアは瑞穂と話したいそうだ。

こっちはウォルフとベッドを並べて寝ることにした。


「なあ、アキラ」

「なーに? ウォルフ」

「こうして、新しい家族が増えるって良いな」

「そうだね。ステイシアさんを大事にしないとダメだよ」

「あぁ、命に代えても……」

「あれあれあれ? 命に代えるの?」

「そうだったな。俺がステイシアを守る。ただ、それだけで良いんだった」


 ウォルフの言葉は、ブーメランのように自分に刺さる台詞せりふだった。

瑞穂を救うまで、随分かかってしまったと思う。それでも、今では隣にいてくれている。

ミーシャもロメロも、きっとそれぞれの『運命の相手』を見つけるだろう。

その輪が広がっていき、家族の絆はより強固になると信じている。


「アキラ、俺と家族になってくれてありがとう」

「え? 何か言った?」

「いや、何でもない」


 物思いにふけっていたら、ウォルフの言葉を聞き逃してしまった。

明日が来る……。それはとても素晴らしいことだ。

瑞穂が言ってくれた、『この世界にいてくれているだけで……』という言葉。

それは自分おれも同じ意見だと、あの時諦めなかったじぶんを少しだけ褒めてあげたいという気持ちになった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 リュージは、アキラが書いたレポートをパラパラとめくっていた。

何度も何度も読んだこのレポートには、この世界の秘密の一端が記されていた。


「まさか、『時空間魔法』が男神さまの魔法だったなんてね」

「そうなるとこの世界は、ずっと男神さまの影響を受けてたってことか?」

「そうなるね、ザクス。そう考えるとアキラくんが遺した魔法は、着実に広がりをみせるね」

「あいつは水の属性魔法があるから大丈夫だろ?」

「剣に魔法にと、どこのラノベの主人公かって言いたくなるよね」

「らのべ? リュージは訳の分からない事を、たまに言うよな」


 そのレポートには、瑞穂を救えた経緯も書かれていた。

それは『魂の時計』と『召喚魔法』がキーであり、『神聖魔法』と『時空間魔法』で二柱の協力を得られたことが大きかった。

一言で言うなら『奇跡』だ。だけど協力を得られたのは、アキラの努力以外何ものでもない。


 現在『聖王国』への交渉役は、ロメロとレイルドが中心になって務めている。

『聖王国』からの使者がやってきて、『聖戦』の撤回及び終戦が発表されたからだ。

夜の闇が濃さを増した分、その旅は過酷を極めただろう。

それでも役目を終えた使者は、驚くべき手腕で食料支援を勝ち取っていった。


「リュージは、旧ノルド男爵領に行くのか?」

「難しい問題だよね……。ローランドさまは、各所に打診していると思うけど」

「すぐに派遣した部隊が領民を発見して、大量に保護出来たことは大きいよな」

「いっそのこと、アキラくんが男爵にならないかな?」


「お、それ良いな。推薦状なら、俺もレンも書くぞ!」

「ヴァイスがやれば良いんだけどね。ローランドさまのカリスマに、みんな心酔しているからなぁ」

「ロロンじゃ心配だし……。王家が飛び地を管理するのも大変だろ?」

「どちらにせよ、この国はもっと豊かになると思うよ。だから多くを残してあげたいよね」


 リュージの言葉に、ザクスは大きく頷いた。

豊かさとは『食料』だけの問題だけではない。それは明日に希望を持てるということだ。

リュージが来てアキラが来て、この世界は変わった。そして世界は、まだまだ広がりを見せている。

この希望がいつまでも持ち続けていられるように、ザクスは今日も植物に水を与えていた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ここは日本の小さな町。そこで花嫁と花婿は、軽トラに乗っていた。

後ろには空き缶をたくさんぶら下げた、手作り感満載のトラックだった。

到着したのは港。そこには多くの親族・先輩・知人・友人が集まっていた。


「先輩、本当にやるんですか?」

「あぁ、勿論だとも」

「これ、貸衣装なんですが……」

「そうだな。だから、ちゃんとアイツに許可を取っている」


 周囲はニヤつく大人で溢れている。

これから行われること、それは…………。

新郎は大きな声を上げながら、楽しそうに海へ放り投げられていた。



『90分だけ貴女の味方です』 fin


作者としては、皆様の感想が気になるところです。

『まあまあ』でも『にゃー』でも良いので、何かコメントをくださーい。

作品のご意見・ご感想をお待ちしております。


次回作は鋭意創作中です。

また来年、お会い出来たら嬉しく思います。

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