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第39話 時雨と蔵人

第39話 時雨と蔵人


 蔵人は地面に尻餅をついたまま一心不乱に泣きじゃくる少女の前に立ち、腰を下ろす。


 だが、少女は懸命に泣き続けていることから、蔵人が目の前にいるのに気づかない。



 蔵人は、そんな少女の頭を撫でる。


 そして、その少女に向かって言った。




「時雨、さよならだ」




 頭を撫でられて、時雨は、やっと蔵人が目の前にいることに気づく。




「さよなら……って言ったか?……お前、死ぬ気なのか……?」

 時雨は唇を震わせながら問いかける。



「大丈夫だ、安心しろ。俺は死なない」

 蔵人は微笑みながら、返事をする。




「でも……お前、いま……さよならって言った……じゃないか」



「深い意味はない。

 さよならって、次に会うための挨拶だろ。

 たとえば集団下校の小学生が、自分の家の前に来た時、友だちに『さよなら』って言うけど、それは明日会おうねって意味だ。それと全く同じだ。気にするな」

 蔵人は、いつものなんの愛想あいそうも無い調子で話す。




「深い意味はないって……私にはお前が集団登校の列に土佐犬が突っ込んで来てるのに、強がりで『おはよ~』と微笑んでる空気読めないバカガキにしか見えないんだが……はっ!」



 口を滑らせておいて、へ理屈で言いくるめようとしていると察した時雨は、ついに感情の高ぶりがピークに達し、蔵人に向けて叫ぶ。


「バカっ!お前はバカだっ!大バカだ!


 相手が誰だか分かってるのか?


 相手はビグースだぞ。しかも最強のビグース『Vivid Edged Black』なんだぞっ!


 アメリカ海軍第7艦隊が停泊していた軍港を周辺都市ごと消滅させるような奴なんだぞ。


 いくらお前でも、無茶だっ!


 嫌なんだ……お前が……お前がいなくなるのは嫌なんだ。私が……この私が嫌なんだっ!」

 時雨は全力で泣き叫ぶ。今ここで蔵人と別れては、もう2度と会えない。時雨には、それが分かっていたから。



 蔵人は時雨に近づくと、不安そうに涙を浮かべている時雨の頭を、そっと撫でる。



「え?」

 (かす)れた声で時雨は見上げる。




 蔵人は優しげに微笑む。


「なぁ時雨、覚えているか?

 矢沢兄妹が《HYPER CUBE》世界大会の東京予選にエントリーしたと分かった夜のことを。

 そして俺が『Darker Than Crimson Red』との決着のためラストダンジョンへと向かうアマゾンの飛行場でのことを。

 さらに《HYPER CUBE》世界大会で、お前が先にゲームオーバーになって、俺が1人でサンダース大佐とホワイトナイトこと『Pure Sublimity White』を相手にしなければならなくなった時のことをだ。


 俺は、いつもお前に言ってきたはずだぞ。


 なぁ時雨、俺を誰だと思っているんだ?ニアリーリトの息子?隻眼の使徒?そんなのどうでもいい。





 俺はお前の契約者だ。お前の契約者に敗北の2文字はない。覚えておけっ!!」





 

 優しげな眼差しで蔵人は時雨を見つめながら、いつものセリフを口にする。



 時雨の瞳から流れた涙が、両頬を濡らす。

 涙を浮かべ、時雨は返事をしない。その替わりに何度も何度も強くうなずき続ける。

「私もそう思う」

 そんな返事をすれば、涙が嗚咽に変わるから。それを時雨はできない。

 契約者の矜持として。




 蔵人は、立ち上がり、Vivid Edged Blackの方へと向き直る。



 そして蔵人は、ゆっくりと口を開く。



「待たせたな、Vivid Edged Black。特殊能力スキルの準備は十分か?」






次の更新は明日です。

ついに蔵人とVividEdgedBlackの最終決戦となります。


タイトルは「集極(エターナル)(ウェーブ)より来たりし(サデニシオン)vs黄昏より昏(ハイパーダーク)(サデニシオン)」。


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