第18話 集極の波より来たりし闇(エターナル・ウェーブ・サデニシオン)
第18話 集極の波より来たりし闇
「時雨、なんて無茶なマネするんだ」
蔵人は言葉を失う。
時雨のHPバーは急速に縮小し、間もなく尽きようとしている。
「だが、勝つにはこうするしかなかっただろ?サンダース大佐は手強そうだな。そして、まだホワイトナイトもいる。大丈夫か?」
横たわったままの時雨は不安そうな表情で、蔵人へ問いかける。
「なぁ時雨。矢沢兄妹が東京予選にエントリーしたと分かった夜のことを覚えているか。そして俺がDarker Than Crimson Redとの決着のためラストダンジョンへと向かうアマゾンの飛行場でのことも。その時も俺は言ったはずだぞ。なぁ時雨、俺を誰だと思っているんだ。ニアリーリトの息子?隻眼の使徒?そんなのどうでもいい。俺はお前の契約者だ。お前の契約者に敗北の2文字はない。覚えておけ」
優しげな眼差しで蔵人は時雨を見つめながら、いつかのセリフを口にする。
時雨の瞳から流れた涙が、時雨の両頬を濡らす。
そして笑顔で、時雨は残った全ての力を込めて言葉を絞り出す。
「私もそう思う。後は頼んだぞ、私の契約者人色蔵……」
《HYPER CUBE》世界で屈指の貫通力を誇る特殊能力『竜神の逆鱗』の使い手。世界屈指のプレイヤーからなる最強ギルド『最前線』のメンバー。そして《HYPER CUBE》界に君臨せし絶対的序列第1位『隻眼の使徒』のタッグパートナー。
二神時雨の《HYPER CUBE》世界大会での最期だった。
「勇敢な少女だったな」
サンダース大佐は蔵人に語りかける。
「だが、残念ながら犬死にだ」
そう言うとサンダース大佐は、特殊能力『Unlimited Knife Phenomenon』を発動する。
特殊能力『Unlimited Knife Phenomenon』。術者が操作する無限の数のナイフが、超高速度でターゲットへ襲いかかる。ターゲットはこれを躱すことができない。
その瞬間、新国立競技場は激しく青い閃光に包まれる。
「こ、この青い閃光は……集極の波より来たりし闇……。噂には聞いていたが自分の目で見るのとでは全く違う。さすが『隻眼の使徒』だ。ここまでの威力があるとは……」
青い閃光の中でサンダース大佐はつぶやくが、最後までつぶやききることはできなかった。
『集極の波より来たりし闇』。その特殊能力を受けて再び立ち上がった者は歴史上存在しない。
1度めはバビロン事件において、バビロンの塔最上階で100人を人質にとったラスボスが。
2度めは重装のNPC『騎士の亡霊』が。
3度めは『奇跡の林檎』の使い手、世界屈指の《HYPER CUBE》プレイヤー矢沢京介が。
4度めは近接戦闘家として世界最巧と謳われた矢沢月乃が。
そして、今、元グリーンベレーにして特殊能力『Unlimited Knife Phenomenon』の使い手。
伝説の英雄サンダース大佐が、人色蔵人にわずか1撃で敗れ去ったのだった。
新国立競技場の観客たちのボルテージは最高潮に達する。
ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
ウオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ
ウアアアアアアアアアアアアアアアアアァァ
ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
ウオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ
ウアアアアアアアアアアアアアアアアアァァ
そんな大歓声の中、蔵人はつぶやいた。
「次はお前だ、ホワイトナイト。俺はお前を知っている。『Pure Sublimity White』の正体をな」
次の更新は明日です。
タイトルは「Pure Sublimity White」。
ついにPure Sublimity Whiteの正体が明らかとなります。




