「手紙」と帰宅
一人の青年が人目を気にせず泣いている。
見覚えのない道のど真ん中で声をあげ泣いている。
----なんでだよ。俺らは最期まで残って一緒に滅びた(おわった)はずだ。なのになんで俺だけが生きている。なんであの2人が死んだんだ、、、 。
枯れてもなお流れる涙はもう自分のことを忘れている大切な人へ綴られる。
「手紙」が落ちる。
青年が「手紙」を拾い泣いている。
「御子柴直保へ」裏を見てまた、泣く。
「始まりの神さま・創造の神さまより」いつ書いたんだろう。
そう思いながら泣く。
読んで、直保は2人の神さまの想いを受けとる。
「俺らの思いを受けとれ。直保、生きろ。それが俺らの最期の願いだ」
「手紙」にはそう書いてあった。
「分かったよ。俺は生きる。生きて奈保とアリスを見守る!」
青年は歩き始めた。
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「ねえ知ってる?」
「何を?」
「新しい学園長が来るんだって」
「学園長変わるの?」
「みたいよ」
「珍しいね」
「ね。、、、それでね、新しい学園長って恰好いいらしいの」
「呆れた。貴女やっぱりミーハーよね」
「恰好いい人って好きよ」
「恰好いいって言ってもさ、どうせ渋いオジ様なんでしょ?」
「20代って言ってたぞ」
「女子トークにいきなりはいって来ないでよ、、、」
「はは、わりぃ」
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奈保は空を見上げていた。10年前のあの日、大切な存在だったはずの人を忘れ捜し始めたあの日から事あるごとに空を見上げていた。
「また空見てる」
困ったような悲しそうな笑顔で言ったのはアリスだった。アリスは奈保と都内のマンションで暮らしている。アリスはモデル、奈保は女優として現在、最前線で活躍していた。
「私が捜してる人、見つかるかな」
「名前もわからないんじゃ見付からないと思う」
2人は高台にある公園の柵にもたれ掛かって会話をしていた。
「捜すの諦めるかな、、、」
「捜してみたらどうかな。奈保が納得するまで、私は付き合うよ」
アリスの言葉は素直に嬉しい。納得するにはかなりの時間がかかるだろう。それでもいつか諦める時が来る。それまでは、、、
砂利を踏む音が聞こえると2人は手に持つ帽子で顔を隠した。
目の前で人が立ち止まるのが分かった。砂利を踏む音が止まったから。
ゆっくり、その人に気付かれないようにその人の顔を見る。と、奈保の手から帽子が落ちる。
奈保とそっくりの青年が肩に黒猫を乗せて立っていた。青年はただ、恰好いい。黒猫を肩に乗せていることで幻想的に見える。夕暮れの高台というこの場所も作用して。
「忘れてるよな、やっぱり」
青年は仕方がないといった表情で微笑んだ。
にゃーん、黒猫が主人のことを心配したのだろう。主人の頬に自分の頬を擦り付ける。それから主人は黒猫のあごを人差し指でくすぐる。
「黒猫、、、」
隣でアリスがそう呟くと黒猫は返事するようにナイた。
アリスの頬に涙が伝う。それは段々と増えていき最後、アリスは立っていられなくなってその場に腰を下ろした。
「クロ、アリスのところに行ってきなよ」
黒猫は青年の肩から降りてアリスの膝上に前足をのせる。
「奈保?」
奈保の頬には涙が伝っていた。
「あれ、、、なん、で」
青年は奈保を抱きしめた。
「ごめんな、奈保」
「、、、」
「ただいま。遅くなって」
「おそ、いよ、、、直保」
泣きながらも思い出してくれた奈保をさっきより強く抱きしめる--
文章にも表さない道の先で始まりと創造は優しく微笑んでいることだろう




