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プロローグ1 山崩之事

 雨が降り続き山が崩れた。奔流となった泥は、ふもとの村や、折から対陣中だった両軍陣地にうち寄せ、埋もれた人々は数えきれなかった。

 雨がやんだ翌朝、泥に覆い尽くされた村に群がったのは、救いの手ではなかった。生き残った村人は、略奪者に窮状を訴え、蛮行をやめるように頼んだが、哀願は無力だった。

 そんな略奪者のなかに一人の牢人がいた。四十そこそこと思われる隻眼の牢人は、泥から突きだした指物を見つけると、それへ駆け寄せ、脇目も振らず錆びた脇差でほじくり返しはじめた。

 村人や略奪者の目を引く一団が現れた。寺僧の集団であった。

 泥まみれの夫婦が、襁褓むつきに包まれた赤子を立派な身形をした僧に差し出した。夫婦が代わりに受け取ったのは、重そうな巾着袋であった。高僧は満足げに子を抱き上げると、弔いのひとつもあげることなく、すがる人々を打ち捨て、村を去っていった。

 その光景を見つめていた牢人は、両手いっぱいに抱えていた泥だらけの武具をその場に放り出して、二度と拾うことがなかった。

 さかのぼること十一年前の夏、五月の出来事であった。

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