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男女六人殺人事件  作者: 落川翔太
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 発砲音が聞こえて、貴紀は目が覚めた。また誰かが殺されてしまったようだ。一体誰が殺されたのか。  

 そして、その人物を殺した犯人は誰なのだろうかと貴紀は思った。すぐにベッドから起き上がり、貴紀は外へ行ってみることにした。

 外へ出ると、すぐに誰かが倒れているのが分かった。近づいてみると、そこには亜衣が倒れていた。

「亜衣……。」

 倒れている彼女を見て、壮介が残念そうに呟く。

「言った通りだ」

 それから、彼がそう言った。

「なあ、貴紀。お前だろう? 亜衣や他の皆を殺したのは?」

 壮介が貴紀を睨み付けるようにして言った。

「僕が?」

「ああ」

「違うって」

 貴紀は亜衣や他の皆を殺していなかった。

「壮介、君だろう?」

 それから今度、貴紀がそう言った。

「俺が殺した? 証拠はあるのか?」

「証拠は……。」

「ないだろ?」

「いや、あるよ」と、貴紀は言った。「ほら、壮介、昨日言っていただろう? 僕たちの中に、我孫子を殺していない奴がいたって!」

「ああ、言ったな。その殺していない奴は……貴紀、お前だよ!」

 壮介にそう言われて、貴紀はビクリとした。確かに貴紀は彼をいじめてなどいなかったのだった。

「俺はあいつらと一緒に彼のことをいびっていたからな」

 壮介がにやりと笑って言った。

「そんな……。」

「お前はあいつをいじめていなかった。だから、お前は彼を殺した俺たち全員を殺害しようとした。最終的に俺も……。」

 壮介がそう話しているときだった。近くで発砲音がした。それから、彼がその場に崩れ落ちた。

 貴紀は別荘の物陰の方を見た。そこに一人の男が銃を突き付けていた。金髪の男だった。

 貴紀は胸ポケットから、銃を取り出した。

 そして、貴紀はその男に銃を向けた。すると、その男は銃を降ろした。貴紀も構えていた銃を降ろし、胸ポケットにそれをしまった。

「終わったな」

 それから、その男が貴紀のところにやって来て、そう言った。

「はい」と、貴紀は返事をした。

 その男は、大沢恭一(おおさわきょういち)という。彼は「殺し屋」であった。

 貴紀は彼とバイト先のコンビニで知り合った。そこで貴紀は彼が殺し屋のバイトをしていることを聞いた。最初、貴紀はその話に驚いた。まさか彼が殺し屋であったとは思わなかったし、それを知って彼に恐怖を覚えた。けれど、彼はいたって普通の人間であった。気さくだし、優しい人だった。そのうちに、彼のことをそこまで怖いと思わなくなっていた。

 それからある日、彼にこう言われたことがあった。

「なあ、西村。お前、誰か殺したいほど憎い奴っているか?」

 彼にそう言われて、貴紀は考えた。その時すぐに殺したいほど憎いと思っていた人物が思いつかなかった。それから数日が経ったある日、貴紀は高校時代に自殺をした友人がいたことを思い出した。我孫子守である。彼は僕の唯一の友人だった。彼が自殺をしたと聞いた時、貴紀は本当にビックリした。そして、後に彼が自殺を図った理由がいじめだと分かった。いじめていたのは、貴紀の知っている人だった。しかも複数いたのである。

 貴紀はそいつらを殺したいと思った。

 それから、貴紀は大沢さんにそのことを話した。すると、彼は「分かった」と言って、貴紀を殺し屋のバイトに紹介してくれた。それから、貴紀は殺し屋のバイトを始めた。

 案の定、そこで貴紀は上司に「人を殺せ」と命じられた。貴紀は殺したい人物たちを決めていた。しかし、貴紀は殺しを実行しようと思うのだが、その仕事が初めてということもあって右も左も分からなかった。だから、貴紀は大沢さんに相談をした。

 すると、彼は案の定、「いいよ」と言ってくれた。そして、貴紀は大沢さんと二人でその殺人の計画を立て始めた。

 その計画はこうだった。貴紀はこの夏休みに旅行と称して、高校時代の五人のメンバーを軽井沢の別荘に集め、連続殺人を見立てるようにして彼ら一人一人を殺害する。

 殺す順番はあらかじめ決めてあった。みゆきを最初のターゲットにしたのは、彼女の父親が警察官だったからである。彼女を後まで残すと、厄介になると貴紀は思っていた。だから、最初に殺害することを思いついた。その後は、誰でも良かったのだが、守が生前憎いと貴紀に耳打ちしていた通りに、瞬太郎、香奈、亜衣、壮介という順番で殺害することにした。そう言えば、一日目の夜に皆で線香花火をした際、その順番で花火が落ちたのはたまたま偶然であった。

 それから、殺害で使用した小さな手紙はすべて貴紀が書いたものであった。このメンバーの中に二組のカップルがいたこともあり、みゆきの手紙の差出人を彼氏である壮介に、そして瞬太郎や亜衣の手紙をお互いの名前にした。そうすることで、差出人が貴紀であることを避けるようにした。けれど、自分たちでないことにすぐに気づくことは分かっていたし、自分だと気付いてしまうのではと恐れた貴紀は、わざと香奈の手紙に自分の名前を記した。余計に疑われてしまう恐れもあったが、皆が自分たちの仕業ではないと思うので、貴紀も自分以外の誰かの仕業であるということにできた。

 手紙は貴紀が寝る前にみゆきや瞬太郎、香奈の部屋に忍び込ませたのだった。貴紀の手紙とも知らずに、みゆきや香奈、亜衣などがまんまと引っかかったようで、外へ出てしまう。そして、彼女たちは外へ出ると、正面の別荘にいた大沢さんの手によって殺害されてしまう……という寸法であったのだ。

 ところで、瞬太郎はというと、計画とはちょっと違った。本来なら、夜中に、もしくは朝、彼が目を覚ました頃に外へ出たら殺害する予定だったのだが、その日の夜、お風呂から上がった彼がビールを持ち、外へ出ていってしまった。そこで貴紀はドキリとしたが、その後、大沢さんが機転を利かせて、彼を狙撃することに成功した。よって、そこで彼を殺害する結果となった。

 それともう一つ。初日にみゆきが殺された後、貴紀は一一〇番通報をした――ように見せかけて、実は通報などしていなかった。だから、警察やパトカーなどは来なかったのである。もし本当に一一〇番をしてしまえば、貴紀が捕まるのも時期尚早であった。

 と、まあ、これが貴紀が大沢さんと企てて実行したことである。

「大沢さん、ありがとうございます」

 貴紀は大沢さんにお礼を言った。

 その計画は見事に成功した。貴紀は嬉しく思っていた。

「いや、お礼なんて別にいいって。これは仕事だから」

 大沢さんはそう言って、にこりと笑った。

「さ、もう終わったし、西村、帰ろうか」

「はい」

 貴紀はそう返事をした後、胸ポケットから拳銃を取り出した。その朝、亜衣の死体を見つける前に、外へ出た貴紀は自分たちが載って来た車のトランクに積んであったアタッシュケースからその拳銃を取り出すと、それを胸ポケットへしまっていた。

 それから、貴紀は彼に銃口を突き付けた。

「おい、西村。やめろ!」

 大沢さんがすぐにそう叫んだ。貴紀はすぐにその銃の引き金を引いた。

 バン! と発砲音が響く。

 貴紀の発砲した弾は大沢さんの胸に当たり、彼はばたりと倒れ込んだ。その後、彼の身体から血が滲み出した。

 貴紀はホッとした。これで邪魔者はいなくなった。

 初めから大沢さんを殺すつもりはなかった。大沢さんには五人を殺してもらうだけだった。

 けれど、壮介を目の前で殺されたのを見た貴紀は、やはり心のどこかで彼を、いや、五人を殺した大沢さんを憎いと思うようになっていた。だから、壮介を殺した直後に彼を殺そうと思い立った。

 それともう一つ。貴紀が彼を殺した理由があった。それは、この殺し屋の仕事の報酬である。

 貴紀や他の殺し屋の報酬は、殺した人数×二万円の額の報酬を得ることになっていた。つまり、今回の場合、五人×二万円で合計十万円になる。それを最初、大沢さんと計画を立てた時、貴紀たちは「二人で山分けにしよう」と話していた。だが、貴紀はそれを山分けにするのはどうかと思っていた。貴紀は貰えるものなら全額欲しいと思っていた。だから彼を殺した。

 そして今度、貴紀は大沢さんを殺したことにより、六人×二万円なので、総額十二万円が貰えることになった。

 そう考えると、貴紀は自然と笑みが溢れた。

 これで全てが終わった! さて帰ろう。

 と、その時、一台の白の車がその別荘にやって来た。貴紀はビックリした。

 もしかすると、警察か。その別荘の管理人か、もしくはオーナーかもしれないなと貴紀は思った。マズいと思った貴紀は急いで自分の乗ってきたレンタカーに乗り、すぐに車を発進させた。

 車を運転していると、カーラジオからちょうどケツメイシの「夏の思い出」が流れていた。

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