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神様と使徒の異世界白書  作者: 麿独活
第一章 【魔物という存在】
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第一章19 『神様とトラップ』

 森林エリアに着いたその翌日、早速森林エリア最初の特異個体(ユニーク)『キラーエイプ』討伐に着手した俺達は、事前に考えた作戦通りに行動を開始していた。

 まずは二手に分かれ、俺は事前に提案したトラップを仕掛ける為に樹海の奥に一人で移動していた。

 そしてトラップを仕掛け終わった後、樹海を高速で移動しながら目標の射撃ポイントへと急ぐ。

 今回の作戦は、キラーエイプの群れの下方にそれぞれ位置取りし、俺が射撃でキラーエイプをまず仕留る。

 その後、二人で一気に群れへと突入し、残ったフォレストエイプを近接戦闘で仕留めて行くというものだ。


 もちろんそのままでは、全てを仕留める前に逃げられる為、先程仕掛けたトラップが用意されている。

 トラップは、俺たちが群れを追い立てる方向に仕掛けられており、そこに二人で追い詰めて一網打尽にするという計画だ。

 よって、上手く二人でトラップが仕掛けてあるエリアへと追い込まなければならない。二人で呼吸を合わせて突入し、連携して行動しなければ上手くはいかないだろう。


『(トウマ、こっちは位置に着いたよ。そっちは?)』


 シオンから、念話が伝わってくる。


『(今、射撃ポイントの木の下だ。今から登って位置に着く)』


『(了解)』


 シオンに返事をした後、俺は巨大な木を見上げる。かなりの巨木だ……地球の植物に例えれば、ジャイアントセコイアに近い。

 こんな巨大な木が何本も生えてこの森は形成されている。いったいどれだけの本数があるのかスケールが大き過ぎて想像もつかない。

 木の肌に触れながらそんなことを考え、俺は腰に下げていた双剣を抜いて屈み、思いっ切り飛び上がる。

 十メートル程飛び上がった所で、右手に持っていた剣を木に刺してぶら下がり、もう一方の剣も刺して、それを頼りに木を登り始める。

 数分後、目標としていた枝の上に辿り着き、目標のキラーエイプがいる方向に視線を向ける。


「(うん、しっかり見える。悪くない射撃ポイントだ)」


 そう心の中で呟き、双剣を弓に組み立て直して準備を始める。そして準備が整った後、念話でシオンに連絡した。


『(シオン、射撃ポイントに到着して準備が整った。いつでも行けるぞ)』


『(了解。じゃあ、トウマがキラーエイプを仕留めた後、同時に群れに突入ね)』


『(ああ、焦って一人で突出するなよ?)』


『(分かってるよ! トウマこそ外さないでよ!)』


『(ああ、もちろんだ)』


 そう言って気合を入れ直し、能力強化で筋力を強化し、弓を引き絞る。

 目標までの距離はおよそ二〇〇メートル……森の中なんで風の影響はあまりない。意識を目標に集中させて狙いを澄まし、キラーエイプの眉間を貫く軌道イメージが固まった瞬間、弓を放つ。

 ズバンッ!! という弦音が響き、イメージした軌道通りに矢が高速で飛ぶ。そして、狙い通りキラーエイプの頭部に着弾して、頭が弾け飛ぶ。

 キラーエイプの身体は、吹き飛んだ部分から大量に血を吹き出して力なく地面に倒れる。


『(シオン!)』


『(了解!)』 


 俺は木から飛び降り、群れの方向に走り出す。そして、走りながら弓の形を双剣に戻した。

 数秒後、群れがいる少し開けた場所に出る。その瞬間、シオンも少し離れた左側から飛び出してきた。

 一瞬シオンと視線を合わせ、群れを左右から同時に挟み込むように速度を合わせながら走り込んでいく。

 フォレストエイプの群れは、突如リーダーであるキラーエイプを殺されて混乱している状態だった。そこに正体不明の二人が飛び込んで来たことにより、更に群れがざわつく。


 そんなフォレストエイプの群れに遠慮なしに飛び込み、その内の一匹に対して左足を踏み込んで懐に入り、持っていた左手の剣を逆袈裟に切り上げる。

 剣の刃が首元に入り、肉を斬り骨を断つ感触が手に伝わる。だが、勢いを殺さずに振り抜く。

 スパン! となにかを切り飛ばす感覚がし、フォレストエイプの首が宙を舞う。

 刎ねられた首から血が噴き出すが、それに構わず次の一匹へと向かい、右手の剣を袈裟斬り叩き込み、肩から深く切り裂く。

 チラリとシオンに視線を向けると、シオンも同様にフォレストエイプの群れに飛び込んでおり、俺と違って三体目を斬り倒していた。


 流石だなと思いながら俺も次の獲物に向かう。フォレストエイプ達はリーダーを失い、更に突如襲い掛かってきた敵に恐れ慄き、逃げ始める。

 方向は、俺たちが襲って来た方向とは真逆――背後へと駆け出していく。慌てるように巨木を登り、枝から枝へと渡っていく。


「トウマ!」


「ああ!」


 俺達は逃がすまいと追い縋り、後を追う。かなりの移動速度だが、追いつけない速度じゃない。個体差によって遅れが出ているフォレストエイプに追いつき、背後から斬り付けて屠っていく。

 だが、決して追い越したりはしない。シオンと二人左右からプレッシャーを掛け続け、一方向に誘導するように追い込んでいく。

 そして数十秒後、群れの先頭集団から叫び声が上がる。どうやらトラップに掛かったらしい。俺達は、その場に急ぐ為に速度を上げる。

 先頭集団の異常に気付いてオロオロしている残りのフォレストエイプを斬り伏せ、トラップの前に辿り着く。

 そこに広がっていた光景は、木々の間にまるでなにかに絡め捕られたように動けなくなっているフォレストエイプ達だった。


「上手くいったね、トウマ」


「ああ、トラップから逃れた奴らは全部仕留めたよな?」


「うん、大丈夫!」


 これが仕掛けていたトラップだ。俺の『性質付与』を利用して、粘性を持たせた糸状のオドを木々の間に張り巡らせておいた。

 かなり広範囲に仕掛けたので少し手間だったが、一匹も逃がさない為に半円状に囲うよう念入りに仕掛けておいた。

 それに絡め捕られて、フォレストエイプ達は空中に張り付けにされたようになっている。


「グギ……グギャギャッ……」


 もがけばもがく程に、粘性の糸に絡め捕られて身動きが取れなくなっていく。まるで、蜘蛛の巣に囚われた憐れな獲物のようだった。


「じゃあ、手分けして倒しちゃおう」


「ああ」


 こうして俺達は残りのフォレストエイプを倒し、森林エリアの最初の特異個体の群れを討伐した。

 仕留めたフォレストエイプの群れを魔核化し、それを回収した後はキラーエイプの死体の元に戻って、こちらも魔核化した。

 因みに、現在は『源魂回帰』の特殊能力も詠唱無しに使えるようになっており、あの中二病全開の言葉を唱える必要もなくなっている。覚えた瞬間の気持ちは今でも忘れない。


「大分、魔核も貯まってきたね」


 そう言いながら、シオンはキラーエイプの魔核が入った袋を空間操作で別空間にしまう。


「そう言えばその魔核って、異世界ではどう利用されているんだ?」


 ふと、魔核の利用方法に関して気になったので聞いてみる。魔物がいる人間世界で利用されているのは聞いたが、詳しい利用方法はその時は聞かされていなかった。


「人間世界では、生活に活用したり、武器防具に特殊な加工を施す為に使うって話だね。ほら、不純物は混ざっているけど、一応オドやマナの塊ではあるからね。特殊な加工を施すと、効果は小さいけど特殊能力と似たような効果を、疑似的に発生させることが出来るみたいだよ」


「へぇ~……」


「その加工方法はボクも詳しくは知らないから、帰ったら調べた方がいいかもね。任務においては、異世界の常識も覚えておかないと、不都合が生じるかも知れないし……」


「だな」


 まだまだ知らないことがたくさんある。この異界に関しても、まだ見ぬ場所や知識が存在しているかも知れない。そういうものを探すのもまた旅の醍醐味だ。

 そう思いながら、俺達はその場を後にして、拠点へと戻るのだった。



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