第一章2 『神様と第六感』
お昼ご飯も食べ終わり、再び訓練を始める為にシオンと外に出る。因みにお昼ご飯に作ったチャーハンは好評だった。その証拠に、シオンはご機嫌な様子で宣言する。
「さあ、訓練再開! また一緒に走ろう、トウマ♪」
「楽しそうだな」
「もちろん! トウマは楽しくない?」
シオンが笑顔で聞き返してくる。
「楽しいよ。まだ数日だが、充実した日々だと感じている」
「エヘヘ、良かった♪」
「じゃあ、始めるか!」
「うん!」
二人とも気合十分。さあ、走ろうかとした矢先――
<シオン、トウマ様。いらっしゃいますでしょうか? 宜しければゲートを開いて下さい>
と、上空からフェルビナさんの声が響いた。
「お? フェルビナさんか。どうしたんだろう?」
この唐突な声にもだいぶ慣れた。なにせ、ほぼ毎日のようにアースディア様やフェルビナさんが訪ねてくるのだ。いい加減慣れもする。
「もう~……せっかく気合十分でスタートしようとしてたのに~……」
良いところに水を差された形になってしまったので、シオンが空に向けて文句を言う。
「仕方ないだろう。しかし、なんの用だろうな?」
「さあ? ……アースディア様にまた様子でも見て来いとか言われたんじゃない?」
ありえそうだな……二人ともシオンに過保護だし……シオンは、渋々といった感じでゲートを開く。程なくして、フェルビナさんが転移してきた。
「シオン、トウマ様。お邪魔致します」
そう言って頭を下げるフェルビナさん。相も変わらず、丁寧な天使様だ。
「どうしたの、フェルビナ? またアースディア様に様子を見て来いとでも言われたの?」
シオンが容赦なく指摘する。さっきの出鼻を挫かれたことを、少し根に持っているようだ。
それに依然同じように訪ねて来られて、ドア破壊事件が後に露見し、あわや俺との契約が白紙になるかも知れなかったことをまだ気にしているようだ。まあ、あれはシオンの自業自得だったと思うんだが……。
「違いますよ。お昼ご飯はもう食べ終わったと思うのですが、デザートにと思って、フルーツサンドを差し入れに持って来たんです」
そう言って手に持ったお皿を見せてくれる。その上には、イチゴを使ったフルーツサンドが載っていた。
「あ……自分で作ってみたんですか?」
「ええ、この前トウマ様が作って下さったフルーツサンドはとても美味しかったので、教えていただいたレシピを元に私も作ってみました。お口に合えばいいのですけど……」
そう言って少し自信なさげな顔をする。
「綺麗に出来ているじゃないですか。切り口も綺麗ですし……」
フルーツサンドの難しいところは綺麗に切る時だ。失敗すると大抵潰れてしまう。だけど、見る限り綺麗に切れているし、フルーツの断面の見せ方も良い。
「本当ですか! そう言っていただけると嬉しいです!」
そう言って嬉しそうに微笑む。あ~……反則だよな~、この笑顔。そう思いながらフェルビナさんを見る。普段は物腰が丁寧で、礼儀に厳しいお姉さんといった感じなのだが、料理のこととなると、感情表現が豊かになる。
落ち込むとシュンとなったり、嬉しいとパァッと笑顔になったりと、反応が少女のようになるのだ。だから、不意にああいう笑顔を見せられると、ちょっとドキッとしてしまう。
「トウマ~……なに赤くなってるのさ~……」
ジト目のシオンが、脇から上目遣いで睨んでくる。
「べ、別に赤くなんかなってない!」
シオンから顔を逸らす。
「嘘! ウゥ~……」
シオンは何故か、フェルビナさんにだらしないところを見せる俺には厳しい。おまけに、妙に対抗意識を燃やす部分もある。この前、サンドイッチを一緒に作った時もこんな感じだった。
「と、とにかく、せっかくのご厚意だ。早速いただこう、な!」
そう言ってフェルビナさんの持っていたフルーツサンドのお皿を受け取り、シオンの目の前に差し出す。
「……分かったよ、もう」
目の前に差し出されたフルーツサンドをチラリとみて、軽く溜め息を付き、俺の提案をシオンは受け入れてくれた。
俺たちは新居のリビングに移動し、テーブルにフルーツサンドを置いて食べる準備をする。
「ボク、紅茶を用意するね」
そう言ってテーブルにはつかず、キッチンに移動するシオン。
「シオン、手伝いましょうか?」
座ったテーブルの椅子から立ち上がり、フェルビナさんが手伝いを申し出る。
「いいよ、紅茶を入れるぐらい慣れたもんだし、フェルビナはお客様だしね」
しかし、シオンはそう言って断り、一人でおもてなしの準備を続ける。
「まあ、お客様だなんて……シオンも偉そうなことを言うようになりましたね」
再び椅子に座り、嬉しそうに微笑むフェルビナさん。フェルビナさんは、シオンを相手にしている時はお姉さん……というより母親といった感じになる。見ていると、本当に家族のようで微笑ましくある。
そんな風に思いながら見ていると、フェルビナさんが急に神妙な顔をして、少しテーブルに身を乗り出し、こちらに問いかけてくる。
「ところでトウマ様……」
「は、はい……」
何事だろうと、少し緊張する。
「シオンのあの格好は、トウマ様のご趣味ですか? だとしたら、随分と倒錯的な……」
思わずテーブルに突っ伏す。
「ち、違います……」
「そ、そうですか。安心しました……でしたら、あれはシオンが自ら望んであの格好を……だとしたら別の意味で由々しき事態です……」
ホッとした顔をした後、すぐに神妙な顔をして考え込むフェルビナさん。変な勘違いをしそうだったので、真相を話す。
「いや、なんか友だちにプレゼントされたらしいんですが……」
「友だち……なるほど、あの子の仕業ですか……前々から変わった趣味を持った子だとは思っていましたが……」
「知っているんですか?」
どうやら、その友だちに心当たりがあるようだ。
「ええ、まあ。シオンと同じ下級神の娘です。シオンに妙にご執心で、シオンもお友だちとして親しくしています。あの子には珍しく気に入ったようで、面白い子だと笑っていました」
なるほど、女の子なのか……少しホッとした。しかし、男ならまだしも、女の子だと口うるさく言うのも気が引けるな。
だが、シオンにショタを求めているのは明らかであり、片寄った知識を与えている存在には違いない……どんな人物なのか聞き出しておいた方がいいだろう。
「それで、どんな子なんです?」
少しでも情報を聞き出そうと探る。
「そうですね……一言で言えば……変わった子です」
しかし、返ってきたのはストレート過ぎる感想だった。
「……そんな身も蓋もない……」
「仕方がありません。そう言うしかないほど、個性的な娘なので……悪い子ではないのですが……」
ふむ……フェルビナさんから、これ以上聞き出すのは難しそうだな。シオンの友達、か……黙って見守るべきなんだろうが、どうも腐のオーラを感じるんだよな~……不安だ。
そう考えていると、ふとシオンのもう一つの格好も思い出し、この際だから聞いておこうと思う。
「因みにフェルビナさん……」
「なんでしょうか?」
「白衣はフェルビナさんの趣味ですか?」
その一言で察したらしく、フェルビナさんがピシッと石のように固まる。
「……ち、違います……あれは、その……」
フェルビナさんには珍しく動揺を見せる。
「その、なんです?」
ジト目でフェルビナさんを見つめ、追及する。
「……最近、見た地球のアニメで、可愛い女の子が大きめの白衣を着ていて……その……可愛いな、と思ったので……シオンにも似合うかな、と……」
恥ずかしそうに、モジモジしながら白状するフェルビナさん。……フェルビナさん、アニメ見るのね……アースディア様の影響だろうか?
しかし、シオンの友だちといい、フェルビナさんといい、シオンに偏った知識を与え過ぎだな……これも地球文化の弊害なんだろうか?
「……少し自重しましょうね」
「申し訳ありません」
ペコリと頭を下げるフェルビナさん。
「なにやってるの?」
いつの間にかシオンが紅茶を乗せたトレイを持って、テーブルのそばに来ていた。
「な、なななんでもありません、シオン! ねえ、トウマ様!」
「あ、ああ、なんでもない!」
二人して驚き、慌てて取り繕う。
「ふ~ん……変なの」
不審に思いながらも、テーブルに紅茶を置き、カップをそれぞれの席の前に置いて紅茶を注ぐ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます、シオン」
「今日の茶葉はなんなんだ?」
「ダージリンのオータムナル。フルーツ系のお菓子には合うって話だから、試したいと思って淹れてみた」
「シオンも、大分紅茶に詳しくなってきましたね」
「エヘヘ♪ まあね。食後のお茶はいつもボクが淹れてるんだ♪」
神様にお茶を入れさせるっていうのも恐れ多いんだが、どうしてもやると言って聞かないので、お茶の用意などはほとんどシオンに委ねている。最近は、緑茶なども入れており、ドンドンお茶に詳しくなっていっている模様。
「じゃあ、フェルビナさんの手作りフルーツサンド、いただきますね」
「は、はい! どうぞ!」
フェルビナさんは、緊張の面持ちで、スッとフルーツサンドが載ったお皿をこちらに寄せてくれる。お皿からイチゴのフルーツサンドを一切れ取り、一口食べる。
クリームの甘さと、イチゴの酸味と甘みが口の中で合わさり広がる。うん、美味しい。カスタードも隠し味としてちゃんと使っているみたいだ。
「ど、どうでしょうか?」
「美味しいですよ。良く出来ています」
「本当ですか!?」
「うん! 美味しいよ、フェルビナ!」
シオンも食べた感想を笑顔で伝える。
「良かったです! 味見はしたんですが、やっぱり不安で……それにちょっと甘過ぎた気がしたんです」
ふむ……フェルビナさんのいう通り、確かに少し甘みは強い気がする。
「多分、イチゴですね。良いイチゴを使っているから、甘みを強く感じるのかも知れません。そういう場合は、クリームの甘さを抑えてあげれば、バランスが良くなりますよ」
「なるほど……フルーツの甘さも考えて調整する必要があるんですね」
「でも、ボクはこれぐらい甘いほうが好きだよ」
「まあ、甘いものが好きな人には良い甘さだと思う。俺も甘党なんで、これぐらいのほうが好きかも知れないな」
「そうですか! じゃあ、また差し入れする際は、今日と同じ甘さで作ってきますね!」
それからワイワイと談笑しながら、フルーツサンドをいただいた。程なくして、フルーツサンドも食べ終わり、三人でのんびり紅茶を楽しんでいると、フェルビナさんが話題をふってくる。
「そういえば、先ほどは二人でなにをなさっていたんですか? 二人の格好から見て、運動をしようとしていたみたいですが……」
さっき、なにをしようとしていたのかが気になるようだ。まあ、二人してこんな格好をしていれば気にもなるな。
「オドのコントロールの訓練だよ。フェルビナがボクに最初に教えてくれた一緒に走るやつ」
「あの訓練ですか。それで、上手く行っているんですか?」
「それが中々上手く行かなくて……ある程度ついて行けるようにはなったんですが……」
隠すようなことでもないので、俺は素直に現状を答える。
「なるほど……宜しければ詳しくお話ししていただけますか? 私からも、なにかアドバイス出来るかも知れませんから」
少し思案した後、力になってくれるそうなので、訓練を開始してからの状況を説明した。フェルビナさんは一通りの話を聞き、しばし思案した後、原因に心当たりがあるのか俺に質問をしてくる。
「トウマ様、もしかして第六感を使っていないのではないですか?」
「え? 第六感ですか?」
そう言えばアースディア様に現身の説明を受けた時に、そんな話をした覚えがある。
「そ、そうなの? トウマ」
なにやらシオンが、少し驚いた感じで聞いてくる。なんか、そんな当たり前のことをしていなかったの? みたいなニュアンスを感じた。フェルビナさんもそれを感じたようで、呆れた感じでシオンに聞く。
「シオン……まさか、感知の基礎もお教えしないで、オドのコントロール訓練をしていたんですか?」
「だ、だって……出来てないなんて思わなかったんだもん……」
「あ~……その、なんだ……もしかして基礎的な部分をすっ飛ばしていたってことか?」
二人のニュアンスから、大事な部分が抜け落ちていたことを察し、シオンに聞く。
「う、うん……」
するとシオンは、言い難そうに肯定した。マジか……この三日の苦労はいったい……。ズーンという感じで落ち込んていると、シオンが申し訳なさそうに声を掛けてくる。
「ご、ごめんね……トウマ……」
申し訳なさそうな顔をしてシオンが謝ってくる。
「いや、いいさ。原因がハッキリしたんだ。それで、その感知っていうのはなんなんですか?」
これ以上落ち込んでいるとシオンに悪いので、気を取り直してフェルビナさんに詳しく聞く。
「トウマ様は、第六感に関しては聞き及んでいますか?」
「ええ、アースディア様から説明は受けていました。現身になった時、第六感が備わると……」
確か万物の力の流れを感じ取ることが出来るって話だったよな。それを聞いてフェルビナさんが詳細を説明してくれる。
「本来、マナやオドのコントロールを行う場合、その第六感を発動させて、力の流れを感知しながらコントロールを行うのが基本なんです。感知とは言わばオドを見る目や感覚で、それを使いどれだけの量を込めているかを判断しなければ、私たちでも繊細なコントロールは難しいんです」
「なるほど……」
車に例えてピーキーなアクセルだと思っていたが、上手く行かなかったのは速度メーターを見ずにアクセルを踏んでいた為だったというところか……言ってみれば体感だけで目当ての速度に調整しようとしていたんだ。確かにそれじゃあ、微妙なコントロールが出来なくても当然だな。
「シオンが見逃した気持ちは分からないでもないです。私たちは生まれつき持っている、当たり前の感覚ですから」
それを聞いたシオンが、納得という感じでポンと手を打つ。
「そっか……トウマは、人間からの転生者で初めての感覚だから、体感しないと感覚自体を身に付けるのは難しいんだ……」
「なら、話は簡単なはずです。シオン、やり方は分かりますね?」
「うん! さっそくやってみるよ! 行こ、トウマ!」
そう言って俺の隣の席から立ち上がり、手を引っ張る。
「行くって外にか?」
シオンに手を引かれながらリビングを移動し、窓の外に脱いで合った靴を履いて、外に出る。後ろからフェルビナさんも付いて来る。
ある程度、家から離れたところで立ち止まり、その場に座るようにシオンが促す。言われるがままにその場に胡坐をかいて座ると、シオンが後ろから俺の両肩に手を置いた。
「いい、トウマ? 今からボクの視覚とトウマの視覚をリンクさせる。そうすれば、ボクの視覚で世界を見ることが出来る」
「え!? そんなこと出来るのか?」
「うん! ボクと魂で繋がってるんだもん。感覚共有ぐらい簡単に出来るよ。で、第六感を使った状態で見える世界をトウマにも見せてあげるから、トウマはその感覚を感じ取ることに集中して!」
「あ、ああ……分かった」
「じゃあ、呼吸を落ち着けて、ゆっくり目を閉じて……」
シオンに言われた通り、息を大きく吸って整え、ゆっくりと目を閉じる。
「今からトウマの視覚にパスを通すから、トウマはそれを心の中で拒否せずに受け入れて」
「ああ」
返事をした後、すぐに頭の中で『(トウマ、パスを通すよ)』と声が響く……これがそうなのか? と思い、心の中で『(分かった)』と返事をすると、ピシッと痛みはないが、なにか頭の中で電気が走るような感覚が起こる。
「いいよ、トウマ……ゆっくり目を開けて」
そう言われ目を開けると、目の前に広がっていたのは、いつもの草原ではなかった。
「な、なんだ……これ……」
目の前に広がっていたのは草原ではあるのだが、空や地面から帯のように白い光が溢れて流れを作り、広がっていた。
「これが……万物の力の流れ……なのか?」
「そうだよ、白い光がマナ。分かる? 空や大地から溢れたマナが流れを作り、色んな場所を巡っているのが……」
「あ、ああ……凄いな……これがシオンやフェルビナさんが見ている世界なのか……」
それはとても幻想的な風景で圧倒される。
「次はボクを見て、トウマ」
そう言って後ろにいたシオンが前に回ってくる。そして、シオンを見ると、光の奔流がシオンの丁度胸の辺りに吸収されるように流れ込んでいるのが見えた。
「シオンにマナが流れ込んでいる……でも、シオンから発しているマナの色が違う?」
シオンに流れ込んでいるマナは白いのだが、シオンから発せられているマナは少し黄色がかっていた
「うん、大気中に存在するマナは白いけど、一度取り込まれたマナは、その取り込んだ者の性質に合わせて色が変わるんだ。これがボクのマナの色、この色と感じを覚えておいてね。じゃあ、次は自分の身体を見てみて」
そう言われ自分の身体に視線を向けると、薄い緑色だろうか、ほんのりとした光が自分の身体全体を覆っていた。
「これがオド、か?」
「そう……トウマの核や魂と同じ綺麗な緑色だね。自分の身体の中心を意識すれば、核から発しているのが分かると思うよ」
シオンに言われ、意識を自分の身体の中心に向けてみる。すると、丁度心臓の部分に確かに強い力を感じ、そこからオドが出ているのが見て分かる。
試しに少し力を込めてみると、核から出るオドの流れが速くなり、身体に纏っているオドの量も一回り増えたのが見て取れた。
「なるほど……確かにこの状態なら、どれだけオドを放出しているのかが良く分かるな」
「でしょ? じゃあ、目を閉じて今感じている感覚を視覚に頼らず、身体全体で感じてみて」
「身体全体……分かった、やってみる」
シオンに言われた通り目を閉じ、シオンと共有している感覚を身体で感じられるよう意識を向けてみる。
「大事なのはイメージだよ。さっき見た力の流れを頭の中でイメージしてみて。それと身体の力は抜いて楽にする」
そう言って、いつの間に背後に回ったのか、再び俺の両肩に手を置くシオン。シオンの両手の感触を肩に感じ、不思議と気持ちが落ち着いて力が抜ける。そして、頭の中でさっきの光景や力の流れをイメージした。
暫くその状態を続けていると、目を閉じていても、自分の周りになにかが流れているような気配や、身体の内から力が湧き出すような感覚が感じられるようになってくる。
「シオン……なんか自分の周りや、身体の内に不思議な感覚が感じられるようになってきた……」
「ホント? じゃあ、またゆっくり目を開けてみて」
言われた通り目を開けると、先ほどと同じようにマナが溢れ、流れている景色が目に飛び込んでくる。
「さっきと同じ? シオン、まだ視覚を共有しているのか?」
「ううん、ボクのパスはもう切ってるよ。だから、マナの流れが見えているなら、それはトウマの目が見ている景色だよ」
「じゃあ……」
「うん、それが第六感を発動させた感知状態だよ」
どうやら第六感の感知を身に付けることが出来たらしい。
「思いの外、簡単に身に付いたな……」
そう感想を言うと、フェルビナさんが補足してくれる。
「元々、現身には備わっている感覚ですからね。一度どんな感覚かさえ覚えてしまえば、感じるのはそう難しくないんですよ」
「なるほど……」
そう納得してフェルビナさんを見ると、フェルビナさんもオドを纏っており、その色は薄紅色をしていた。そして、ついポロッと言ってしまう。
「……なんかフェルビナさんのオドの色って可愛いですね」
「え!? そ、そうですか?」
それを聞いたフェルビナさんは、頬を少し赤くして照れる。
「ウゥ~……トウマ~……なんで先に感想を言うのがフェルビナなの~……」
しまった、つい意外な色だったんでポロッと本音を口にしてしまった。しかし、時すでに遅し。シオンはこちらを睨みながら、表情が見る見る不機嫌になっていく。
「この前のサンドイッチ作りの時といい、さっきのクリームサンドの時といい、フェルビナばっかり見て! トウマはボクの使徒っていう自覚が足りないんじゃないの!」
そう言って凄んでくるシオン。
「いや、別にそういう訳じゃ……」
「じゃあ、ボクのマナの色を見た感想を言って! フェルビナみたいに可愛い?」
「可愛いっていうか……シオンらしい元気な色って感じで合っていると思うが……」
というか、可愛いって言って欲しいんだろうか? どうも性別がないせいで、どう褒めていいのか戸惑う。
「ホント? じゃあ、フェルビナの色とどっちが好き?」
どうやら感想は、今ので問題ないらしい。しかし、今度はどちらが好きか比較を持ち出してきた。
「どっちって……まあ、好みで言えば、シオンの色のほうが好き、かな……」
「ホント?」
少し疑いの気持ちが表情に有りながら、確認してくる。
「ああ……」
そう素直に答えると――
「ホントにホント?」
ちょっと表情が緩和するが、念の為という感じでジッとこちらの目を見つめて再度聞いてくる。
「本当に本当だ」
嘘は言っていないので、シオンの視線を真っ直ぐ見つめ返す。暫くにらめっこみたいに見つめ合うが、急に凄んでいた顔が笑顔になる。
「エヘヘ♪ ボクもトウマのオドの色は好き~♪」
そう言って抱き着いてくる。そんなシオンを抱き留めながら、後ろで見守っていたフェルビナさんと視線が合い、お互いに軽く笑う。
本当に感情の起伏が激しいお子様である。しかし、これで訓練は一歩前進した。第六感があれば、オドのコントロールも上手く行きそうな気がする。そう思いながら、ご機嫌なシオンの頭を撫でた。




