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こんばんは。何とか書き上げたので投稿しておきます。どんどん突っ込みどころが増えていく気がしている作者です。どうぞ
何事もなく職人たちがどんどん火薬を集めてくれたおかげで、半日とすこしで準備が整った。あとはどこか程よい場所を探し、風龍をおびき寄せ、一気に攻めきるだけだ。ここまでは、考えていたようにことが進んでいる。順調といえた。しかし、いいことばかりでは済まないのが世の中というものであった。
ギルドの中で最後の準備を終え、集まった連中に出陣の挨拶をした。
「ありがとう、職人の方々の協力に感謝する。じゃあ、俺は討伐に向かうよ」
「ハヤトさん!!」
マリアに呼び止められ、振り返ると、肩で息をしている彼女がいた。一体どうしたのだろうか。
「さきほど確認してきたのですが、貴族たちが風龍討伐に乗り出していたようです!」
「は!?いつだ?もう出発しているのか!?」
「そのようです!最近、盗賊風な連中は街で見られたのですが、冒険者たちが全然見当たらなくなっていたのでおかしいなと思っていたんですけど・・・」
「くっそ!!」
一気に焦りがこみ上げてくる。何がまずいって?下手に敵を刺激してしまったら、近くに罠を仕掛けることなどできなくなるかもしれない。最悪なのが、逃げ帰ってきたりする奴らがいて、それを追ってこっちまで来た場合だ。山からここまでの距離を考えれば、追われていて街まで逃げてこれるとは思えないのだが、そのままこちらまで来たりしたら、街が大打撃を受けてしまう。早めに出発したほうがいい。
「ステラ!すぐに出かける!」
「はい!」
外で待機していたレイとシャディに跨り、すぐに街を出発することにした。全速力で走り続けた。しかし、街を出て30分も経たないところで、起きてはならぬ事態が起きてしまった。
「レイ、シャディ!止まれ!」
「兄さん!?」
「まずいぞステラ!まだまだかなりの距離があるが、奴が来ている・・・!」
「え!?でも、ここじゃまだ街が近すぎませんか!?」
「ああ、でも仕方ない。ここで迎え撃つ!ステラはこの火薬を向こうに仕掛けて来てくれ!」
「了解です!」
図鑑から樽に詰まった火薬を取り出し、ステラに運んでもらう。その間に、こちらは魔法罠を張っていく。とにかく急がなければ・・・。
時間にして、およそ30分くらいだろうかいやもしかしたらもっと早かったのかもしれないが、ついにそいつが現れた。優雅に飛行してきている。そして、とうとう戦いの幕が切って落とされた。
空の彼方から巨大な影がすごい勢いで飛んでくるのがわかる。こちらの姿を捉えたためだろうか、探知スキルで感じていた移動の速さが増した気がする。その後方には、無数の影が付き従うように空を駆けてきている。
「いやいやいやいや、冗談だろ・・・。火翼竜付きかよ!!」
急いで攻撃魔法の準備を行う傍ら、ステラとレイ、シャディに、迎撃指示を飛ばす。
「黒神鳴!」
一筋の黒雷が空に向かって駆けぬける。その黒雷は竜の一団に向けまっすぐに。先頭にいた、風龍は軽く雷撃を躱す。しかし、後続のワイバーンたちは雷に打たれ失墜していく。
「結界・絶!」
上空に向け、結界を複数枚展開する。数瞬ののち、耳を劈くような衝突音とともに、ただの体当たりで数枚の結界が砕け、風龍を含め、ワイバーンが地に落ちてくる。うまく調節したおかげで落下点にある物、それは、およそ通常では考えられない量の火薬。起爆は、蓋の上に仕掛けた魔法罠、接触と同時に火薬に引火するようになっている。
「ステラ!耳を塞げ!レイ!シャディ!空間内に戻れ!」
風龍の落下と同時に爆発が連続して発動した。一緒に落下してきたワイバーンたちが無残に飛び散り、大地を血が染め上げていく。爆発によって塵が舞い上がり、視界が潰されていたが、徐々に視界が戻ってくるにつれ、絶対強者の姿があらわになっていく。
「化け物め・・・。無傷ってどういうことだよ・・・」
「ぐらあああああ!」
怒りの咆哮が鳴り響きわたる。しかし、どこかさびしさを含んだ声に聞こえたのはなぜだろう・・・。しかし、今はそんなことを気にしている場合ではない・・・。
「ステラ!魔法罠のところまで後退する!」
「了解!」
結界がまだ数枚残っているが、怒り狂っているやつの攻撃にかかれば、数分と持たないだろう。新たに、攻撃魔法で結界を避けてくるワイバーンに放ち、地に叩き落とす。最初に比べ、ワイバーンの数はかなり減らせてきている。死体の山が築き上げられている。その過程でレベルが何度か上がったようだ。ステータスを見る余裕がないので、定かではないが。
「ここで、やつらを待ち受ける!」
「はい!」
魔法罠を張ったところまで下がり、攻撃魔法の準備を進める。残された結界が破壊され、怒りの咆哮を上げ竜の軍団が突進してくる。さっきまでは、先に進むことを優先していた様子だった敵は、いまや俺とステラを襲うために猛進してきている。
再び結界魔法を展開する。ただし、今回は広範囲に、平面的にではなく、自分とステラを囲むように、さっきまでの結界の枚数よりも多く、そして強固に展開する。なぜか、それに答えるのならば、自分たちを囲むように、魔法罠が設置されているからだ。今回仕掛けた罠の発動条件は任意によるものだ。つまり、望んだタイミングで以前の環境破壊レベルの混合魔法が数にして15個一気に炸裂するように仕掛けてある。以前の威力を参考に、結界の枚数はかなり多めにしてある。
「こい!!!」
こちらの思惑を知ってか知らずか、それとも、こちらの挑発に乗ってなのか軍団の波が押し寄せる。結界に噛みつきや、魔法を放つ竜の軍団。もう前後左右、上もワイバーンが群がっている状態だ。探知スキルでも、自分を中心にありえないほどの反応が群がっている。
「くたばれええええ!!!!」
一撃死の威力を孕んだ魔法が炸裂した。展開していた結界が、勢いよく破壊されていく。壊されるのに合わせ、どんどん追加で結界を再展開していく。ずっと続くかに思えた魔法の炸裂が終わり、冬でもないのに辺りを氷が埋め尽くしている光景が浮かび上がってくる。かなりのワイバーンを倒したこともあり、レベルがまた上がったようだ。ステータスを確認すると5レベル上がって90になっていた。
彼の絶対強者はというと、立っていた。さすがに、体中が傷だらけで、血が噴き出しているが、確かに立っていた。周りを囲んでいた大量のワイバーンはどこかに消し飛んでしまったようだ。すでに周りは、一面の氷、そして、その中で立っているのは、俺とステラ、そして風龍だけだ。
「ぐるるるるるる」
さっきまでに比べ、どこか、喜色を浮かべたような声だ。しかも、攻撃してくる様子もない。じっとこっちを見ているもしかしてと思って、急ぎスキルを取得する。
「・・・だ。久しぶりに楽しい戦いだ。私の体に傷をつける人間がいようとは」
「人間も侮れないだろう?」
そう、取得したのは龍種言語だ。案の定風龍の意思が伝わってきた。ちなみに龍種言語は他の動物の言語よりも取得のためのスキルポイントが高く、50使った。しかし、言語にレベルという概念はないのか、それ以上強化はできなかったが。
「ほう、人間の分際で、私の言葉を解するか」
「まあな」
「ますますもって面白い!こんなに楽しい気分になったのはいつ以来だろうか!」
「なあ、お前の目的はなんだ?」
「目的?そんなものはない。私のねぐらに押し寄せてきた人間どものねぐらを逆に潰してやろうかと思っただけだ」
「そのねぐらには俺の友人や大事なやつがいるんだ。俺に免じて勘弁してくれないか?」
「ふはははははは。私に交渉事か!いいぞ、おもしろい人間だ!しかし、この程度ではだめだ。私をもっと楽しませろ!それができれば今回は見逃してやろう!」
「楽しませるって言ってもな・・・・。少し時間をくれるなら俺の持てる全力でお前の体をぼろぼろにして這いつくばらせてやるよ!」
「面白い!面白いぞ人間!やってみろ!お前ごときに屈服などするわけも無かろう!」
どうやらこの風龍は退屈していたようだ。絶対強者として君臨し続けていて自分と対等なものがいなかったのだ。そして、これは多分だがこいつ戦闘狂だ。さて、こんなことをしている暇はない。ステラに向き直り、次の行動に移る。
「ステラ、レイとシャディを連れて街に戻れ。そして、もしもの場合は街の連中を連れて逃げろ」
「兄さん!?」
「これは当面の金だ。お前の力ならもう一人でも生きていけるだろうけどセラの面倒見てやってくれ」
「受け取れません!!」
「いいから!とにかく俺から離れてろ!この事態を街に知らせる必要もあるんだ!」
「でも!」
「頼むから!俺の言うことを聞いてくれ!!!」
無理な頼みなのは分かっている。しかし、4種の混合魔法ですら、かなりの威力なのだ。しかし、今からそれを超える6種混合をやろうというのだ。周りへの影響がどの程度になるかわからない。しかもそれでこいつに勝てるのかもわからないのだ。
「大丈夫、すぐに片づけて戻るから」
涙を浮かべながら必死に抵抗するステラだったが、そういって、頭を撫でてやったら、渋々、それはもう本当に渋々といった感じで頷いてくれた。そして、ステラが胸に飛び込んできて、ぎゅっと抱きついてきた。
「絶対・・・帰ってきてくださいね・・・」
「もちろんだ」
そうして、レイとシャディを召喚し、ステラとともに退避させる。そして、すぐ順番に魔法を唱えていく。火、水、風、土、氷結、雷撃、およそ混ぜ合わせること叶わぬであろう属性までも無理矢理織り交ぜていく。やはりというべきか、5つを越えたあたりから、魔法をうまく制御できなくなり始めた。弾けてしまいそうになる魔法を精神力で必死に抑え込む。汗が額を流れていく。歯を食いしばり、敵を見据える。実際どうかはわからぬが、にやにやとこちらの動きを見ているような雰囲気を醸している。負けていられない。
恐らく、ここ数週間のうちで一番の集中力だったろう。全力、そう全力だ。すべての力を注いで、魔法を発動させる。
自作混合魔法・6種!!
4種までは余裕で組み合わせることができた。5種も難しかったが発動は可能だった。しかし、6種、これはかなりの集中を要するうえに、MPの消費量が他とは桁外れ、具体的にはすべてを注ぎ込む必要があった。要するに、マ○ンテ的なものだ。気合で六つの属性を混ぜ合わせることに成功した。
「・・・・またせたな・・・行くぞおおおお!!!」
完成した魔法は、これまでのどんな魔法よりも早く、そしてすべてを食らいつくすと思われるほどの力を孕んでいた。しかし、発動させたはずなのに、辺りを静寂が包み込む。
「・・・なんだ?失敗か?所詮そんなものだったのか・・・興醒めだ・・・」
「まあ、そう焦んなって・・・」
落胆の色を隠すことなく風龍の言葉が人語ではないが龍種言語のスキルを通して頭に流れてくる。MPをすべて使い切ったことで意識が飛びそうになるのを精神の力で耐えながら吐き捨てる。MPの自然回復力がスキルによって高められている状態だったために、ことのほか早く、意識が覚醒してきた。しかし、このままここに留まっていてはならない。足に魔力を集め、一気に風龍から距離を取る。
「さあ、風龍よ。存分に味わってくれ、お前のために用意した俺の全力だ。楽しみすぎて消し飛んでくれて構わねえ!!!」
大口をたたいたくせに、大したこともできなかった小さな人間を見下していた風龍だったが、ハヤトが遠ざかった辺りで、異変に気が付いた。その日、ミスリムにいた人々は遠くの空を見上げ、その光景を目に焼き付けたという。誰かが言った。
「空が、墜ちてきた・・・・」
空が墜ちる、とは正しい表現とは言えない。現れたのは、巨大な、そう、直径数十メートルに及ぶであろう巨大な塊だった。そして、それだけではない。水魔法と氷結魔法の力でその形を成した無数の長大な氷の槍が空から降り注いできたのだ。先の塊は、火と土魔法からなり、ただ岩のように見えるが、溶岩の塊である。そして、その塊は、風と雷撃魔法の効果で、回転と速度を得て、回避不可能な速さで降り注いでくる。真っ赤に染まったその塊の周囲を雷が火の海を泳ぐかのように這い回っている様子はまるで、太陽を見ているかのようだ。氷の槍も風と雷撃魔法の援護を受け、驚くほどの速度を手に入れ、雷撃魔法のせいで氷の槍の一本一本がバチバチと音を響かせている。
まず、風龍を襲ったのは氷雷の槍だった。広範囲に氷雷の槍が降り注ぐ。着弾した槍は風龍の体を凍りつかせ、次の瞬間、大爆発を起こした。火魔法の効果だ。途切れることのない、氷雷槍の雨が降り注ぎ、次々爆発を起こして辺りの景色を変えていく。そして、少し遅れてやってきたもの、それらは槍とは大きさを比べることもできないほど巨大で、圧倒的な威力を孕んでいた。溶岩の塊達が着弾すると、圧倒的質量により、大地が沈み、辺りを焼け焦げるようなにおいが漂う。そして一拍おき、天から漆黒の雷が風龍を襲った。雷が風龍に落ちると同時に、氷雷の槍がもたらした爆発とは比較にならないレベルの大爆発が起きた。キノコ雲を形成し、辺り一面を爆風が駆け抜ける。その影響で辺りの木々は根こそぎ吹き飛ばされてしまっていた。
そして、その威力のよる犠牲者がもう一人、そう、ハヤトだ。溶岩群が着弾する際、これ以上遠ざかること叶わぬと直感し、少しだけ回復していたMPを使って結界魔法を展開し、迷宮で見つけてきた盾を構え、衝撃に備えていたのだ。しかし、いくら距離を取ったところで近いことには変わりなく、魔法の余波を受け、あっさりと結界は破壊されてしまった。なんとか衝撃を盾で受け止めることには成功したものの、足が地を離れ、どこまでもゴロゴロと転がるように吹き飛ばされたのだ。
「・・・やったか・・・!?」
よろよろと立ちあがり、風龍の生死を確認すべく着弾点に向かって歩く。すべての飛来物が着弾し、辺りを覆っていた土煙が晴れてきたとき、爆発によって出来上がったクレーターの中心には、風龍が血塗れのぼろぼろの状態で、しかし、それでも何とか立っていた。
「やるな、人間。さすがの私も死ぬかと思った」
「いや、そこは素直に死んでくれよ・・・」
心からそう思った。もう、一歩も動けない。それくらい今は満身創痍といえる状況だった。
「ふむ・・・このまま続けてもいいが、折角見つけた、私と戦うことができる人間だ、今回はここでお開きにするとしよう。次また会った時は、私も全力で戦う。今回のように攻撃を受けるだけではないからな。それまで力を高めておくといい」
「もう、会いたくはないんだけどな・・・」
「そう連れないことを言うな。お前だって楽しかったのではないか?自分の全力を出せる機会がそうなくて、退屈だったのではないか?暇つぶしのつもりで人間の街を潰しに来て、こんなにも面白い奴と出会えたことで今、私は頗る機嫌がいい。だから、今日はここまでだ。あとこれは餞別だ、持っていくがいい」
そういって、渡してきたのは、風龍の頭に生えていた立派な一本角だった。角は根元から折れていたが、それは折れてなお、荘厳な存在感を放っていた。
「時が来たらまた、存分に楽しもうではないか!では、さらばだ、人の子よ」
ばさっと翼を広げ、今までのことが何でもなかったかのように飛んでいく風龍の姿を最後に、ハヤトは崩れ落ちるようにその場に倒れこんだ。
お読みいただきありがとうございました。なんだかあっさりとしてますがこれで風龍戦終了です。戦闘シーンなかなかうまく書けません。
コメントへの返信ができていないことを謝罪するとともにここでいろいろなコメントしてくださっている方々へ感謝申し上げます。誤字などはなるべく早く修正しようと思っているのですがいろいろ追われすぎていてできていない状態で、ご迷惑おかけしております。
今後もお付き合いいただけたら幸いです。




