第3話:大学デビュー
なんとかぎりぎり1週間で書けました。
では、お楽しみください。
姉さんとの初めての登校は周りからの視線がとても痛く、こんなに多く知らない男共から睨まれたのは久しぶりでしたよ。
その視線の多くは嫉妬や妬みで、入ったばかりだけど大学生活が早くも不安でいっぱいだ。
歩くときは常に腕を組んでくるし、女の人を横切るときは必要以上にボクを遠ざけさせようとするし、人がたくさんいるところでも好きを連発してくるしで大学に着く前からもうクタクタだ。
まぁ、ほんとのところ優越感も感じてることは姉さんには内緒にしておく。
調子に乗られたら困るし。
家は電車1本で大学まで行ける。
大体7,8駅くらいだね。
だから、そのぶん辱めタイムが短く不幸中の幸いだろう。
ただ、ラッシュとぶつかった時はそれを利用して、ただでさえずっとベタベタしてくる姉さんが電車の中だと満面の笑みで抱きついてくる。
とは言っても、ボクの方が10センチくらい背が低いから姉さんに抱かれるように見えるんじゃないのかな。
男として情けないな。
奇跡が起きて身長が伸びてほしいよ。
起きないけどね。
「人が多くて窮屈だからしょうがないよね。うふふ」
そう言ってくるけど、しょうがない感じがしないのはなぜだろう?
数十分後、ボク達は花咲大学に着いた。
先日、姉さんがこっちへ来る前に、入学式や各オリエンテーションに行ったので、ボクがこの学校のことを姉さんに教えてあげなくちゃいけない。
「いちおう家で教場のコピ-は取ってきたから姉さんにわたしておくね。ボクがなにか急用ができて一緒に行動できないときは、その紙を見て移動してね。今日のスケジュールは、月曜日だから1、2、3限に授業があるから。そのあとにサークルとか部活のことを話し合おう。姉さんの意見も聞きたいからさ」
「ありがとう。でも、急用はなるべく作らないでね。じゃないとお姉ちゃん寂しくて死んじゃうかもしれないから。部活とかはハルちゃんがやりたいものに一緒に入るよ。お姉ちゃん、がんばってハルちゃんの入りたいところでも活躍するから」
そんなことでは死なないよ。
ウサギだって本当は誰かといるよりも、むしろ1人のほうが落ち着くらしいし。
そんなことはどうでもいいとして、姉さんが同じ部活に入ったりしたら、その部活でも姉さんは才能を発揮しちゃうから、ボクはみんなから姉さんと比べられなくちゃいけないじゃないか。
このことを姉さんに喋ったら余計調子に乗るからやめるけど、比べられるのはやっぱり嫌だな。
できることなら違う部に入りたいけど、どうしても無理なら、最悪姉さんが嫌いなジャンルに入ろう。
例えば、アニ研。
姉さんはアニメは好きだったけど、ボクが夢中になりすぎて全然かまってくれないって理由でちょっと嫌いになったんだよね。
アニ研に入れば、ボクは楽しいし姉さんは入ってこないで、一石二鳥だね。
でも、姉さんなら無理してでも一緒に入りそうで怖い。
まぁ、これもお互いが独り立ちするきっかけになるかもしれないし。
「姉さん、ボクアニ研に入ろうと思うんだ」
言い終わった瞬間、姉さんの顔が引きつった。
「ハルちゃん、他のサークルに入らない?例えば、・・・そう、スポーツとか」
若干焦ってるね。
けど、ごめんね、姉さん。
ここは心を鬼にしないと。
「姉さんがソッチに入りたいなら入ればいいよ。ボクは運動が、夏休み最終日に溜まってる宿題と同じくらい嫌いだから絶対入りたくない」
自分で自分がすごく嫌な奴に思えるよ。
「そんなぁ~。ハルちゃんと離れるなんて嫌だよ。わかった、お姉ちゃんもアニ研に入る」
えっ。
そう言われるとどうしよう。
きっと、言うと思ったけど言われたら言われたで考えてなかった。
「わざわざ入りたくないサークルに入る必要ないよ。卒業までずっと活動しなきゃいけないんだよ。姉さんがやりたい方を選んでよ」
「お姉ちゃんはね、一人で好きなことをするのもいいけど、ハルちゃんと二人で居られる方が好きなの。だから、姉さんがやりたいことは、アニ研でハルちゃんの活動を隣で見守ることなんだ。それに、一緒にいないとハルちゃんはカワイイから、ワルイ女の子に誑かされるかもしれない。そんな時にお姉ちゃんがいなかったらハルちゃんを守れないからね。ハルちゃんを守護することもお姉ちゃんのやりたいことだし」
どうしよう。
姉さんの心にアニ研の(?)情熱が燃え出してきちゃった。
今日は授業も説明やオリエンテーションばかりでノートをとらなかった。
そのおかげでサークルのことばかり考えてしまう。
「ハルちゃん、今日の授業はなんか上の空だったね。お姉ちゃん心配しちゃうよ。ちゃんと単位は取ってね。じゃないと、お姉ちゃんも留年しちゃうぞ~」
姉さん、そういうところだよ。
その後、とうとう何も言えないまま、放課後のアニ研の新入生歓迎会に来てしまった。
周りは秋葉で見かけるような方々ばかりだ。
眼鏡にリュックスタイルが多いのが、まず感じたことだ。
ボク達が教室に入った途端、教室中の男共が一斉に目を見開き、姉さんに視線を集中させた。
毎度のことだけど、なんか嫌だ。
教室の中は男と女の比率が9:1くらいだった。
その少ない女子にいたっても、姉さんにうっとりしている。
やっぱ、本当に美人なんだ、と改めて実感する。
誰もが喋ることを忘れ、姉さんに見とれているので、姉さんも気まずいらしく、おどおどしている。
そんな時、その教室の中の部長らしき人物が声をかけてきた。
「あなたもこのアニ研に興味を持ってくれたんですね。こんなにも美しい人は初めて見た。
ぜひとも我がアニ研に入っていただきたい。申し遅れましたが、僕は、このアニ研の部長をやっている池照彦です」
名前だけで笑いを取れそうなのに、マジでイケメンだ。
同じ人間の男としてスペックの差を激しく感じる。
それにしても、まぁ、恥ずかしくもなくそんなセリフを吐けるよ。
「まだ、完全に入ると決まったわけじゃないんですけど。ただ、説明とか聞き終わった時点で決めますので急かさないでほしいんですけど」
こころなしか、姉さんが嫌がっている。
なんか止めてほしい。
「ハルちゃん、早く席に着こう」
そう言って姉さんがボクの背中をそっと押す。
そのことに池部長が表情を歪ませた。
そして、池部長が「君、この女性のなんなんだい?もしかして、こんななりで彼氏だったりして」と、ボクに半笑いで声をかけてきた。
すると、姉さんがムッとして「だったら、なんなんですか。あなたに言われる筋合いはありません」
クルッと姉さんがボクに向きなおって「やっぱり帰ろう。こんな人がいるサークルに入るのは間違ってる」と、ボクの腕をつかんできた。
「おい、待ちたまえ。怒らせてしまったなら謝るよ。ただ、そんな影の薄い貧弱そうなやつより、僕みたいな男の方が釣り合うんじゃないかってね。だから、君だけでも入ってくれよ」
その言葉が姉さんの耳に入った瞬間、池部長は数メートル先に吹っ飛んでいた。
隣の姉さんは少年漫画の主人公のような綺麗なフォームで池部長の顔面を殴っていた。
周囲はパニックになっている。
部長を付けんの面倒だからよびすてでいいか。
池と一緒に椅子やらプリントやらが散乱していて片付ける人は大変そうだ。
池は気絶しているようで少しスッキリした。
「うちのカワイイ弟をそんな風に言わないで。悪いですけど、入部以前に説明会も遠慮させていただきます。ハルちゃん、早く行こう」
そう言って姉さんはボクの手を引っ張って教室を後にした。
今日は初日ということもあり、大学デビューは絶対に成功させたかった。
あんなことがあった今、そんなことを考えていてももう遅いんだけどね。
「ゴメンね、ハルちゃん。お姉ちゃんのせいでもうアニ研は入れなくなっちゃったね」
姉さんは小さく泣いていた。
ボク達が幼いころから、こんなことは何回もあった。
優れた容姿と才能をもつ姉さんが、ボクみたいな良くて平凡クラスみたいなのにかまいすぎて、ボクに嫉妬するやつがボクに攻撃してきて、それを姉さんが怒りのあまり才能を間違った方向に使う。
そのせいでボクだけでなく、姉さんも傷つく。
「別にいいよ。ボクもあの池ってやつ気に食わなかったし。姉さんのおかげでスッキリした。サークルはあと1週間、新入生歓迎会の時期だからそれまでに決めよう。今日は帰ろっか」
久しぶりにボクから姉さんに手を差し出す。
ゆっくりと姉さんはボクの手を掴み、笑顔を取り戻す。
「ありがとう。ハルちゃんは優しいね。明日から、もう1回頑張ろう。それで楽しい大学生活を送ろうね」
そんな優しい顔で見つめられると今日のこともどうでも良くなるくらい元気が湧いてくる。
明日こそはサークルを決めたいな。
もちろん、どうやって姉さんと離れるかじゃなくて、二人で頑張れそうなところに。
2次の方はまだ全然構想すらできていない状況なので、しばらくこれ1本でいくと思います。
次話も1週間を目標に頑張ります。
コメントや今後の展開でアイディアがあれば聞かせてください。
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