Movement"Leave Japan"part2
サブタイトル『Movement"Leave Japan"/日本離脱』
part2
「さぁ、楽しいショータイムの始まりだ!!」
「さっそくエーシックスが出るとはねぇ。じっくり見させてもらうよ。」
「ふふふ、……まぁ、ミネリーがそういうのならやる気が出るまでみてていいよ。
エーシックス! 建物に隠れているざ子供を引き裂いてこい!」
「オォォオオオオオオオオオオオオオオッ!」
雄叫びが周囲に響き渡る。同時に空港に潜む人影にも緊張感が走る!!
「雄叫び……!?」
「ぼさっとするな! 来るぞ! 構えろ! 前線に戦闘部隊が立って守れ!
なんとしても……着陸に間に合わせるんだ!!」
その声で一気に人員がなだれ込む。
敵は雄叫びをあげてまだ動かないが、こちらはすでに敵に向かって広範囲をカバーするほどの
戦力を向かわせていた。空港内部の2階、窓で広く見渡せるフロアは察知能力者が多数揃い、
荷物運び担当はすでに逃げる準備に移り、空港内を正面出口から続々と出ていく流れがあった。
「俺たちも加勢するぞ!!」
俺は声をあげた。この勢いだ。恐らく戦いは止められない。
そして敵も止まらないだろう。この戦いはどちらかが潰れるまで収まらない!!
「着陸まで後17時間……それまでに……。」
ぶつぶつと呟く察知能力者達。リミットはそう長いわけじゃなさそうだ。
こうも短いと誘導すらできない。
俺たちは前線部隊と同じ列に並んだ。
「皆、用意はいいな?」
「ああ、大丈夫だ!」
「こっちもいける。」
「ええ、なんとか!」
「幽にぃがいるから大丈夫!」
「私はいつでも行ける。」
「やーっと親球がお出ましか……やってやる!」
皆、やる気だ。俺たちはこの戦いに勝って……俺たちの平和を掴む!!
「聖奈は2階で見ててもいいんだぞ?」
「大丈夫だって! ……それより、啓にぃたちどこ行ったんだろー?」
「啓……あ!!」
いない! あいつらこんな時に何やって――――
「ゆけ、エーシックス! 屑どもを食いちぎれ!!」
「グオオオオオオオオオ!」
敵は硲たちの到着を待たずに襲いかかってきた!!
「くそ……!!」
「ふぅ、彼らとはなんとか離れる事が出来ましたね。」
「関わってるから仕方な言っちゃ仕方ねぇが……な。」
「いいんじゃないの? 僕たちは便乗するのが役目だからね。」
「…………。」
啓、硲、弥栄、美鈴が空港内のとある一室で会話を交わしていた。
「うまく放れる事が出来ましたが……あの咆哮からしてすでに戦ってるでしょうね。
ふふふ、うまーく戦ってくれればいいんですけどねぇ。」
「俺たちにとってあのゾンビ使いは邪魔なんだっけ? めんどうだなぁ。
最初から出てぶちのめせば楽なのに。」
「ゾンビの制御だけはお手の物ですからね……彼らは。
油断すると啓君が持っていかれてしまう。戦力的にもそれだと勝てない恐れもありますし。」
「美鈴もなのか?」
「うーん……強力な薬剤に耐えうる精神力の持ち主ですから何とも言えませんが……。
彼女が相手の配下に置かれるなら、私たちに未来はないでしょうね。
少なくとも逃げる事すらままならない……私たちはね。」
「なるほど……過大評価してくれるじゃないの。」
「とんでもない。事実にすぎませんよ。それに……こちらも美鈴だけが最後の切り札とは
言いきれない事も事実ですから。切り札は一枚あればいいってもんじゃないんですよ?
しっかりたくさん手の内に納めないと。」
「切り札? まだそんなやつがいたのか。宮ノ小路の側近か?」
「いや、……違いますよ。幽君です。ふっふっふ、心外です。
側近? 彼らが屈指のエースだと思っていたのですか? ありえない。
能力は優秀でも圧倒的に美鈴と幽君には届かない。なぜなら……」
「なぜなら?」
「……実戦経験と、くぐりぬけてきた死線の数が足りないからです。」
「うおおおおおおおおお!」
俺の振りおろす矛が相手の手首にあたる。
鈍い感触が矛越しにつたわる。
そして、敵のうめき声。
なぜだろう。いつから俺はこんなことになったんだ。
周りには前線で戦った宮ノ小路の使いが倒れているが、
俺たちは誰一人として倒れていない。なぜだ。どうして俺たちが立って戦っている?
1つの巨体『エーシックス』に次々と倒れていく前線部隊。
しかし、幽一行だけは倒れていなかった。
「はぁあああ!」
藤島は炎の弾幕で敵の目を引かせると同時に遠距離攻撃。
その隙に俺や九なんかが近い奴から順に渾身の力を込めた攻撃をする。
聖奈は護身用のナイフできるだけだが体液がどっとあふれ出している。
長くはないだろう。あの巨体も……。
大門さんも、良成も懸命に協力してくれている。
大門さんは武器で殴打する事しかできないが、大人の力ならではの重みがある。
良成も藤島が間を開けている時に投擲術でまた引きつける。
敵は止まってはくれないが、良成の投擲術を起点とすれば
藤島の能力も引きつけるだけでいい。次には俺たちが巨体をなし崩すだけだ。
「うらぁ!」
九の手に持たれた鈍器が肉体に埋まるのではないかという勢いで振ったが、
敵はそれだけでは崩れない。まだだ。まだ足りない!
「うおおおお!」
俺は頭や手足を狙っている。少しでも危険を減らすために狙っているが、
思うように当らない時もあるし、当っても敵は精神力が人間ではない。
怪物だ。それが意識を保たせているのだろう……。
「化け物……!」
「ヴぅ……」
敵も披露しつつあるようだ。ここらでラストスパートでもいれたほうが……!
塊を……ゆるくつかむ!
そのイメージを思い浮かべた。
「……ふぅ。」
開放的だ。意識が現れるようですがすがしい。
エーシックスは幽の変化を敏感に察知した。
すると、飛びのいて後退してしまった。
「なんだと?」
なぜ、なぜ飛びのいたんだ?
「エーシックス? 戻ってくるぞ。」
「……ふむ、怪物か。」
「怪物だって?」
「敵も秘策を残していたようだな。だが、まさか人間でエーシックスを圧倒するような
力を持つ奴がいるなんてな。」
「こっちも全力を出した方がよさそうだね。仕方ないか……ジュミネィ、フラーウィンド!」
敵も、ついに全力で動きだす!!