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ある暗殺者の手記 ー崩壊の序曲ー  作者: 眠る人
瓦解 ーCollapseー

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手記52

※一部に流血や、暴力的、もしくは生理的嫌悪感を伴う描写がある場合がございます。

苦手な方はご注意ください

 樋口さんが何であんな思わせぶりな事を言ったのだろうかと、頭を悩ませているオレを他所に彼女は先頭を進む。


 すると、今までは前を通る事はあっても、素通りするだけだった通路へと入っていくのだった。


 確か……丁度この向かいの通路の入り口辺りに、中村さんの部屋があったっけ?


 ……などとオレが考えた直後、オレの耳に人のくぐもったような声が聞こえてくる。


「やっぱりね……」


 やっぱり?やっぱりって、何だ?どういう意味だろう?


 樋口さんの発した溜め息混じりの一言に、オレはますます首をひねるのだが、通路の奥へと近付くにつれ、すぐにその言葉の意味を理解した。


 ……何故なら、聞こえてきていたのが、男女の営みを想起させるような女性の声だったからだ。


「……えっ?え?これ、マジ?」


 どうやら、武田くんも気付いたらしく、驚きを隠せない様子で呟くのだが……


 ……にしたってさぁ?真っ昼間なんだけど……


「私が、他の誰でもなくマサトくんに近づいたのはね?青木くん達と近藤くんの仲違いの他に、来て数日で宮坂くんの変貌を目にしたのもあるのよ……」


 武田くんの呟きを受けてか、樋口さんは足を止めて振り返りながら、声を潜めてそう告げる。


 そいや、確か柴田がこういう事をしている奴は居ると言っていたっけ……


「……ね?皆がおかしくなっていると考えても、仕方がないでしょう?」


「そうだね……」


 樋口さんが顔を顰めるのも道理だよ。


「……いや、それよりどうするの?」


「俺、行きたくねぇ……」


 樋口さん同様、青木くんも嫌悪感や気まずさを隠しきれない様子で呟くと、武田くんがゲンナリした表情で洩らす。


 そうなのよね……幾らオレ達が男子だからって、知り合いのそういった行為には、どうしても嫌悪感が先に出ちゃうんよなぁ……勿論、人によるのかもだけど……


 ……仕方ない。此処はお茶を濁す意味でも、先に昨晩見かけた近くの灯りが点いていた部屋へでも行ってみようか。


「じゃあ、この辺りに誰の部屋か分からないけど、昨晩灯りが点いていた部屋があるから、先に……」


「……それはもしかして、中村さんの部屋の斜向かいかしら?」


「え?うん、そうだけど……」


 ……あれ?樋口さんはその時、こちらに背を向けていたような……まぁ、皆の部屋の位置を知っているようだから、おかしくは……


「そこは、高橋くんの部屋よ……」


 ……って、マジか!?


 つまり、あの時オレ達が外で騒いでいたのに何の反応も無かったのは、既に殺されていたからだと……


 だから、樋口さんは高橋くん達の殺害を素直に信じたのね……


「ねぇ?それより、マジでどうすんの?宮坂見捨てんの?私、こんなとこにずっと居たくないんだけど。」


「そんな訳にもいかないわ……行きましょうか。」


 元より山岸さんの中で宮坂くんの評価が低いからか、不快感を隠しもせずに切り捨てる前提で彼女が尋ねると、樋口さんが瞑目しつつ深く息を吐き出してから、彼の部屋へ向かう事を全員に促す。


「だよなぁ……」


「……ねぇ、武田?アンタ先に行ってくれない?」


「お、俺かよぉ……」


 山岸さんのフリに、武田くんは心底嫌そうな表情で肩を落とすのだが、それを見た山岸さんは少しムッとしながら口を開いた。


「何?私とか樋口とかその小さな子に、先頭を歩けっていうの!?アンタ男子でしょ!?」


「分かったよ……俺が行くよ……」


 確かに山岸さんの言う通り、樋口さんやアルマを前に立たせたくはないな……


「じゃあ、オレも一緒に行くよ。」


「桜井……スマン……」


 かと言って、武田くんだけに押し付けたくもなかったオレは、一緒に前を歩く為に名乗り出ると、武田くんは余程嫌だったのか、オレに向け軽く頭を下げる。


 直後、それを受けて青木くんが続けた。


「なら、リクと桜井くんの後ろは僕達が歩くから、樋口さんや山岸さんは最後尾にいて。」


「分かったわ。」


 ……あれ?そういや、佐藤くんがずっと喋ってないな?


 彼ならこういう時、真っ先に武田くんを諌めると思うのに……まだ青い顔をしているけれど、そんな怖かったのか?


「へぇ……武田より、転校生のが男らしいじゃん?樋口が靡くのもちょっと分かるかも?」


「な……山岸さん!?何を言っているの!?」


「冗談よ、冗談。」


 ……樋口さん、また赤い顔をしてるが何言われたんだ?


 会話が一区切りしたからか、不意に山岸さんが樋口さんに耳打ちをしたかと思えば、樋口さんが急に声を荒げる。


 だが、その様子を不思議には思いながらも尋ねる事まではせずに、オレ達を先頭にして宮坂くんの部屋へと近づいたのだった。






「……よし。」


 扉の前で何故か気合いを入れ、緊張した面持ちでいる武田くんを尻目に、オレが迷う事なくノックをすると、中から聞こえていた嬌声が止み、暫くの沈黙の後でゆっくりと扉が開かれる。


「……何か用?」


「宮坂……だよな?」


「見てわかんない?」


 ……武田くんがこんな反応をするのも仕方ないだろう。


 どうしてかと言うと、扉の隙間から顔を覗かせた人物は、何故か上半身裸のままで、上気しながら微かに息を切らせていたからだ。


 その様子に、オレは思わずアルマの方へ振り返ってしまうのだが、樋口さんも似たような感情が湧いたらしく、アルマの目を塞いでいる所だった。


「……んで、何の用?今忙しいんだけど。」


「あ、あぁ……宮坂に話があるんだけど……」


「だから、何かって聞いてんだよ。」


「……実はさ……」


 宮坂くんの不遜な態度に、流石の武田くんですら表情に不快感を滲ませたのを見て、オレは咄嗟に割り込んで話し始める。


 だが……


「ふーん……そう。」


「そう……って、クラスメイトが殺されてるのに、何だよその言い方は!?」


「だって、僕には関係ないでしょ。」


「はぁ!?」


 説明を終えた直後、全く興味が無さそうな様子で宮坂くんが返したからか、とうとう武田くんが怒りを抑えられなくなったようで声を荒げるも、すぐ後ろにいた青木くんが武田くんに落ち着くよう、彼の肩を軽く叩いてから口を開く。


「そうは言っても、宮坂くん自身も危険なんだよ。だから、僕達と……ね?」


 そう青木くんが言い掛けた直後、宮坂くんは一瞬何かに気付いたような様子を見せると、青木くんが話しているにも関わらず、考える素振りを見せた。


 ……何だろう?凄く嫌な目付きをしていたような……


「……宮坂くんにとっても、悪い話じゃないはずだからさ?考えてみてくれないかな?」


「……いいよ。」


「本当に?」


「その代わり条件があるんだけど?」


 条件……?


 何かニヤニヤしてるし……すっげぇやな予感がするのだが?


「何かな?」


「暫くソイツら置いてけよ。そうしたら、僕も君達と一緒に行く。」


 ……ソイツら?


 宮坂くんが厭らしい笑みを浮かべながら指差した方向に、オレは恐る恐る視線を向けてみる。


 すると、その先には樋口さん達三名が居たのだった。


 宮坂くんは、一体何を言っている……?


 いや……彼が何を言っているか、正直分かってはいても余りにも下卑た意味合いの為か、頭が理解を拒んでしまい、オレは咄嗟に言葉が出なくなるものの、次の瞬間今まで感じた事の無い怒りと正体不明の高揚感が同時に沸々と込み上げてくる。


「……ふっざけんな!!!!」


 ……のとほぼ同時に、後ろから怒声が響いた。


 一瞬、自分が叫んだのかと思ったけれどどうやら違ったようで、直後に声の主は間髪を入れずに言葉を続ける。


「さっきから黙って聞いてりゃ、調子に乗んなよ!?キモいんだよ、お前!!」


「や、山岸……?」


「何様のつもりだよ!?あぁ!?クソキモいナルシストかっての!?もういい!こんな奴どうなろうと知った事か!!行こ!!」


 彼女の性格を考えれば、激昂するのは当然だろうな。


 ……寧ろ、よくあそこまで我慢していたなと思いつつ、宮坂くんの部屋の前から立ち去る彼女を追って、呆然とする彼を尻目にオレ達も無言でその場を離れた。

よろしければ、ご意見、ご感想をお待ちしております。

批判などでも構いません。物語をよくする為の貴重なご意見は、真摯に受け止めさせて頂きます。


ブックマークや、評価、コメントは大変励みになりますので、是非よろしくお願いします。


次回更新予定は 5月17日(日)18時となります

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