手記51
※一部に流血や、暴力的、もしくは生理的嫌悪感を伴う描写がある場合がございます。
苦手な方はご注意ください
「うーん……でも、君嶋さんに悪いし……ねぇ?」
「うん……」
山岸さんの合流でなんやかんやあった後、オレ達は当初の目的通り、残り五人のうち最も近かった白石さんと早瀬さんの元へと向かったのだが……
「君嶋の所にはこの後行くから大丈夫だって……第一、このまま二人で居るより私達と居た方が安全よ?」
山岸さんが事情を二人に話すものの、白石さん達は険しい表情で渋るのだった。
……というかこの二人、山岸さんと話しながらもチラチラ樋口さんを見てるから、恐らく樋口さんが居る事自体を快く思っていないか、若しくはこの場に居ない君嶋さんに忖度しているかの、どっちか……またはその両方だな。
ただ、樋口さんと手を繋いだままでいるアルマに怯えた様子が無いから、多分白石さん達も犯人ではないようではあるが。
「でも……」
「そう、分かった……じゃあ、君嶋を連れてくればいいのね?」
「君嶋さんを?」
「だったら、遠慮する必要はないでしょ?」
「それなら……」
どう説得しても首を縦に振りそうも無い二人の様子に、山岸さんが最終手段とばかりにとんでもない事を口走ると、それならばと白石さん達も頷いてみせた。
……のだけど、それはそれで難題だぞ!?
いきなり殺人犯扱いされなかったから、恐らく君嶋さん達は此処にも来ていないらしいけれど……それでも尚、同調圧力のが強いとはね。
とはいえ、今はまず殺人犯から自分の身を守る事を考えて欲しい所だが、こればかりはな……現実味が薄い話ではあるワケだし。
「じゃあ、また来るわ……」
山岸さんが呆れたようにそうやって呟き、足早に二人の部屋を後にしたので、オレ達もそれに倣ってその場を離れる事にした。
「……白石達とあんな約束してたけど、山岸は君嶋を連れて来れると本気で思ってんの?」
二人の部屋から少し離れた場所で立ち止まった山岸さんへ武田くんがそう問いかけると、山岸さんは不快感を隠そうともせずに口を開く。
「うっさい!!出来る出来ないじゃなく、やらなきゃいけないんでしょ!?」
確かに、やらなければ被害者が増えるのをみすみす見逃すだけだから、非協力的でも放置は出来ないのだけどさ……君嶋さんを説得出来る気が、全くしねぇんだわ。
「俺に言うなよ……落ち着け、カリカリしすぎだって。」
「別に怒ってない!目先の危険よりもハブられる恐怖が勝つあたりに、呆れてるだけ!!」
「それは、まぁ……うん。」
……ごもっとも。
しかし、薄々気づいてはいたが、山岸さんってかなり気が強い人だな?
樋口さんは見た目とは裏腹に、その実相手を見て振る舞っているから、実際は大して気は強くないのだけど……二人とも見た目とのギャップありすぎだ。
「まぁ、薄々……こうなるんじゃないかなーって、分かってはいたけどさ……言ったからには、なんとかしてアイツを連れて来なきゃ……」
「……山岸って、案外仲間思いなのな?」
「案外って何よ……顔見知りがただ酷い目に合うのはほっとけないだけだって……アンタらもそうでしょ?」
「まあな。」
さも意外と言いたげな武田くんの呟きに、山岸さんが困ったような表情で返すと、彼も微かに笑みを浮かべつつ応えたのだが、直後に青木くんが二人へ向け口を開いた。
「でもまずは、残りの三人に会ってからかな。それに、君嶋さんの説得には森田くんの協力が必要だろうから、君嶋さん達の前に森田くんにも会わないとだし。」
「……森田の協力?なんで?」
「清水さん殺害の現場で、桜井くんと樋口さんが会ってるらしいんだ。しかも事件後みたいだから、その事を証言してもらうつもりなんだよ。だから、君嶋さん達は四人に会った後になっちゃうね。」
「そっか……でも、森田……うーん……森田かぁ……」
どうやら、山岸さんは森田くんに説得の協力を依頼する事よりも、彼自身に思うところがありそうな口ぶりではあるが……?
「森田くんがどうかした?」
青木くんもオレ同様にその点が気になるらしく、彼が山岸さんに尋ねると、彼女は少し考える素振りを見せつつも話し始めた。
「聞いた話だけど、アイツ……樋口は何もしてないって、去年の担任に食ってかかってたらしいのよ?そんな奴の話を、君嶋が聞くとは思えないんだけど……」
「……え?」
森田くんが、樋口さんを庇った?
樋口さんと二人で一緒に二度程会ってはいるけれど、その際に彼と樋口さんの間に親交を感じさせる要素なんて、全く無かったと思うよ……?
樋口さんも何か悩むような仕草をしているし、心当たりが無いのでは?
「あぁ。あの噂って、森田くんだったのか……」
「あ……でも、こっち来てから森田は高橋達とつるんでたみたいだから、実際は分からないけどさ?噂が本当なら、高橋達と仲良くする理由がないし?」
……そういや、森田くんもこっち来てから運動部の連中と仲良くしてたとか、誰だったかが言っていたっけ?
確かに樋口さんを庇う人が、いじめ冤罪に関わっていたという高橋くん達と、仲良くする理由は無いわな。
「まぁ、森田に会って聞いてみれば分かるんじゃね?」
とはいえ、武田くんの言う通り事実確認をしてみない事には判断出来ないし、今は片隅に留めるだけにしておこう。
「それもそうね……で、樋口?次に近いのは誰の部屋?」
「えぇと……宮坂くん、かしら?」
「み、宮坂……マジ……?」
うん……?何だ?
森田くんだけでなく宮坂くんとやらにも、何かあるのかな?
山岸さんが先程とは違い、かなり嫌そうな顔をしているけれど……
「……まぁ、腐ってもクラスメイトだから、無視する訳にもいかないか。」
「あれ?山岸って宮坂苦手なん?アイツ、別に変な奴じゃないけど……」
何を思ったのか、武田くんが全く躊躇する事もなく山岸さんに問い掛けると、彼女は不快感を隠そうともせずに口を開く。
「苦手っていうか……何を考えてるか分からない……教室でアニメキャラについて語ってるのとか、普通にキモいって……」
「そう?俺もアニメとか見るから、別に気にならないけどなー……?」
「有名な映画とかなら、アニメぐらい私も見るけど……アイツが話すのは、誰も知らないようなアニメの話っしょ?」
広く知られている作品だろうが、マイナーだろうが創作物って観点だと変わらないから、そこに貴賤は無いと思うけれど……まぁ、個人の感想だからな。
こっそりと嗜む身としては、山岸さんの言い分も分からなくはないし。
「えー?俺はそのくらい別にいいと思うけど……アイツ、別に押し付けたりして来ないしさ?アイドル好きとかと大差ないって。」
「うーん……そう、なのかなぁ……?」
「それに俺からしたら、ゲーム実況とかのがよくわかんないよ……何、アレ?他人がグダグダ言いながらゲームしてるのとか見て、何が楽しいん?」
「それは……そうかもだけど……」
具体例を出してはいるが、武田くんが言いたい事の本質は、他人から見た場合どんな趣味でも楽しみ方や受け取り方は、人によって変わるって部分だろう?
ならその点で言えば、オレも武田くんに同意だ。
人に迷惑をかけるような趣味なら兎も角、現代はコンテンツが色々ある以上、アニメだってそのコンテンツの中の一つなのだからな。
「な?こんな事、言われても困るだろ?それに他人の趣味なんだから、イチイチ気にすんなって……それよか、樋口?そろそろ行こうぜ?」
山岸さんの態度にオレが若干モヤモヤしている内に、武田くんが山岸さんを嗜めた後で樋口さんを促したのだが、何故か樋口さんまでもが頷きながら顔を顰めてみせる。
「えぇ……ただ、彼については、別の意味で驚く事になると思うわ。」
……別の意味で?うーん……どういう意味だろう?
「それって何だよ、気になるじゃん?」
「行けば分かるわよ……」
樋口さんの意味深な発言のせいか、何故か全員がそれ以上聞くに聞けないまま、次の目的地である宮坂くんの部屋へと、オレ達は向かうのだった。
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次回更新予定は 5月10日(日)18時となります




