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ある暗殺者の手記 ー崩壊の序曲ー  作者: 眠る人
瓦解 ーCollapseー

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手記49

※一部に流血や、暴力的、もしくは生理的嫌悪感を伴う描写がある場合がございます。

苦手な方はご注意ください

「なるほど……それが、僕たちに与えられた力の正体か……でも何で二人にだけ聞こえたんだろう……?」


「えー……俺、そんな地味なのより魔法が良かったな……ファイアー!とかさ……」


「何で異世界に来てまで英語なんだよ……しかも、ファイアって……せめて、もっと捻りを加えないと。」


「捻りって、例えば?」


「そうだなぁ……」


 三人に向け、因果の力や樋口さんの見た物について簡単に説明すると、武田くんがオレと似たような事を言い出したからか、青木くんが呆れたように呟くのだが、佐藤くんは青い顔で黙り込んだままだった。


 ……事実上のデスゲームが行われている事と、オレ達が人間以外になっている可能性についてはまだ触れないままではあるのだが……この様子だと多分、佐藤くんは何かに気付いているな。


「これは推測だけれど、私達の力では魔法の様に火を起こしたりは出来ないはずよ。」


「え?樋口さん……?」


 キミまで二人にのっかるの!?


「そうなん?」


「ええ。恐らく、ね……例えば、火を使いたいと考えたら、まず武田くんならどうするかしら?」


「俺……?俺なら……えっと、マッチとかライター……を、使うかな……?」


「それが答えよ。」


「……いや、どゆコト!?」


「ごめん、僕も分からない……」


 え……?マジでどういう事?それじゃあ、説明になってないよ?


「ええと……火を使いたいなら、簡単に火を起こせる道具を真っ先に思い浮かべるでしょう?つまり、そういうモノは人の願望たり得ないの……無人島どうこうとかは、現実味が薄いからこの際無視してね。」


「あ、なるほど……例えは悪くなるけど、誰かを攻撃したいと考えても人ならまず武器を持つから、因果の力とやらでは誰かを直接傷付けるような力を得づらいって事か……」


「……そうよ。」


 そういう事か……って、おい!?


 それだと、思いっきり矛盾しているのだが!?


 だとしたら、樋口さんの力って何だって話だし!?


「柴田の力で斎藤くんや高橋くん達がおかしくなるのを見ているから、納得は出来るかな。」


「そうだな……こっち来てから何日かした頃に、柴田と一緒に現れたヒロトが俺達と絶交するだとか、急に言い始めたりもしたしな……アレもそういう事だろ?柴田自身だって、元はあんな奴じゃなかったもん。」


「今の話が本当なら、多分ね。」


 傷付けるどころか、物体を消し去る能力だよ!?強力を超えて、凶悪とすら言えるレベルなんですけど!?


「……それより、そろそろ行きましょう?」


「そうだね、そうしようか。」


 会話が一段落したからか、一瞬だけ樋口さんはオレに視線を向け微かに首を振った後、再び青木くん達へ視線を戻してから出発を促した。


 ……これ多分、話がややこしくなるから言うなって意味だよね?


 元々言うつもりはなかったけど、つまりは彼女自身、自らの力に疑問を持っているって事か……


 ホント、何なんだろうね?樋口さんの力って。



「とはいえ、何処から回ろうか?僕達もほぼ部屋を出ないから、誰の部屋が何処にあるのかあんまり知らないんだよ。」


 それはまぁ、仕方ないよな。


 柴田が暗躍していた所為もある上に、もしかしたら拘束魔術が原因の可能性だってある訳だし。


「此処からなら……そうね、山岸さんの部屋が一番近いはずよ。」


「……やけに詳しいね?」


 ……おっと、余計な事を考えている場合ではないみたいだ。


「樋口さんは追われながらも犯人を突き止める為に、皆の部屋の位置を調べてたらしいよ。追ってきている奴の部屋は不在だろうからって。」


「ふーん……まぁいいや。じゃあ、山岸さんの部屋から行こうか。」


 今ので多分、青木くんの中での樋口さんへの疑惑が、深まったのだろうな。


 そりゃ、全員の部屋の位置を知ってるとなれば、下調べ済みって捉えられても不思議では無いけどさ……こうなっては彼女を知って貰う時間も無いから、オレがフォローするしかないか。



 そうして、先頭をアルマと手を繋いだままの樋口さんが歩き、その後ろからオレ、青木くんと武田くん、最後にまだ顔色が悪いままの佐藤くんの順で、山岸さんの部屋へと向かうのだった。


 

ーーーコンコン


「……誰?」


「ごきげんよう、山岸さん。樋口よ。」


 辿り着いて早々、樋口さんが躊躇う事なくドアをノックすると、中から恐る恐るといった様子で尋ねられた。


 ……いや、山岸さんって君嶋さん達と仲良かったんだよね?


 そんな態度だと、また話が出来なくなりそうなのだけど……


「樋口……?私に何か用なの?」


 おや?山岸さんは思ったより冷静だな?


「山岸さんにお話があるのだけれど、いいかしら?」


「……そっちから来たのに、そんなの今更でしょ……で、話って?」


 ごもっとも……とはいえ、山岸さんのこの様子だと、ちゃんと話は出来そうで安心したよ。


 ……でも、これってもしかして、君嶋さん達はまだ来ていないって事なのかな?


 彼女達なら、樋口さんを貶める事であれば平気でやりそうだと思ったけど、考えすぎだったのかもね。


「実は…」


 扉越しに、殺人犯が徘徊している事を樋口さんが山岸さんへ説明するのだが、その間時折聞いている事を示す相槌はあるものの最小限だった為、オレは徐々に不安が増していく。


「……だから、皆で一箇所に集まらないかと、提案して回っているのよ。」


「ふぅん……」


 ……話は聞いてくれたけれど、これはダメそうだな。


「昨日から一人で居る人ばかりが狙われているの。だから、山岸さんも協力してくれないかしら?」


 樋口さんもあまり良い感触を得られていないと感じたからか、誰が殺されたかを説明するより前に、敢えて本題をぶつけているようだし……


「私〝も〟……?ねぇ今、樋口一人なの?何人か居るみたいな言い方だけど……」


 ……って、あれ?


「いえ、一人ではないわ。此処には私の他に青木くん、佐藤くん、武田くんに加えて、転校生の桜井くんも居るわね。」


「武田に青木……そう。なら、今開ける……って、樋口!?アンタ何やってんの!?そ、そんな子供と……手……手なんか繋いだりしちゃって、ア、アンタ……らしくも、ない……」


「え?」


 樋口さんの説明の後、山岸さんは漸く扉を開ける気になったらしく顔を覗かせたのだが、アルマと手を繋いでいる樋口さんを見た途端、山岸さんはいきなり顔を伏せ堪えるように蹲った。


 その様子を見た樋口さんが心配そうに山岸さんに近寄るのだが、不意に顔を上げた彼女は今にも笑いだしそうな表情で口を開く。


「や……やめてよ!そんなので、急に私を笑わせようとしないで!!」


「山岸さん……?」


 ……もしかして、樋口さんがアルマと手を繋いでるのがそんなに面白かったのかな?


 いや、確かにいつまで繋いでるんだとは思うけどさ?


「別に、貴女を笑わせようとしたつもりは無いのだけど……」


 山岸さんに指摘され、今頃になって恥ずかしくなったものの、アルマの手を振り払う気にもなれないらしく、少し赤い顔で樋口さんは繋いでいる手にチラリと視線を向けた後、山岸さんへと向き直る。


「……そ、それより、まだ話には続きがあるのよ。」


「続きって?」


「それは僕から話す方がいいかもね……」


「青木……?」


 昨晩誰が亡くなったか説明する段になって樋口さんが顔を顰めたからか、それまで黙っていた青木くんが口を挟むと、山岸さんも怪訝そうな表情で彼へ視線を向けた。


「……実は、昨晩殺されたのが、中村さん、高橋くん、南くんの三人なんだ。」


「マジ……?」


「まだ僕達自身は確かめてはいないけど……桜井くん曰く、君嶋さんや小川くん達がそう言っていたみたい。」


「君嶋、ね……アイツが言ってるのは怪しいけど、樋口がそんな顔してるなら根拠があるんでしょ?」


 山岸さんはチラリと樋口さんへ視線を向けた後、オレ達全員へ視線を投げつつそう言うのだが……この人、樋口さんをよく知っているような口ぶりだな?


 それに、山岸さんは君嶋さん達の方をよく思ってもなさそうだ。


「……昨晩、ガラスの割れた音が聞こえたからそちらへ向かったら、中村さんが殺されていたの。」


「……そう。」


 山岸さんも中村さん殺害に思うところがあるらしく、複雑そうな表情で顔を伏せ短く呟いた。


「私一人では、床に寝転がされていた中村さんをベッドに寝かせられなかったから、一緒に居たマ……桜井くんに頼んで手伝って貰ったわ。だから、私達二人が証人よ。」


「別に疑ってなんてないって……それより、気になった事を聞いてもいい?」


「何かしら?」


「夜に転校生と一緒だったの?……アンタが?男子と?」


「な、何よ……?」


 オレと一緒に居た事を樋口さんが告げると、山岸さんは一瞬驚いたような表情の後で、面白いモノでも見たかの如く、微かに口角をあげながら口を開く。


「別にぃ〜?……ただ、その子と手を繋いでいる事といい、男子と仲良くしている事といい、鉄仮面と言われてたアンタにしては、随分かわいい事してるなぁ〜って。」


「……そ、そんな事はどうだっていいじゃない!!それより、山岸さん!!協力してくれるの!?してくれないの!?どっちなのよ!?」


 山岸さんの揶揄うような言動に、樋口さんは何故か早口で詰め寄る。


 何で焦ってるのかはよく分からないが……こちらが協力をお願いする側なのに、偉そうな事言うのはどうなのよ?


 それじゃ、協力して貰えなくなっちゃうのでは……?


「……いいわ。私もアンタの仲間になってやろうじゃない。」


 ……え?マジで?ダメかと思ったのに。


「何?君嶋と仲良かった私が、協力するってそんなに意外?」


「え、ええ……」


 どうやら、樋口さんも山岸さんの返答に驚いていたらしく、山岸さんの質問に恐る恐る頷くと、山岸さんは溜息を吐いてから言葉を返す。


「中村達が殺された所為で、青木達はどうも樋口を疑ってるみたいだけど、コイツにそんな事が出来ないのぐらい、同じ小学校だった私は知ってるからね……だから、君嶋もあんな手を使ったんだし。」


「疑ってるのはケイだけだって。」


「リク!今は黙ってなよ!」


 ……なるほど、山岸さんと樋口さんは同じ小学校だったのね。


 だから、樋口さんの人となりを知っていると……


「……それに、私は君嶋達と違って樋口をどうこうしようとは考えてないの……だから、こうして一人で居たのにね……それも危ないなら、アンタについてく方がマシだわ。」


よろしければ、ご意見、ご感想をお待ちしております。

批判などでも構いません。物語をよくする為の貴重なご意見は、真摯に受け止めさせて頂きます。


ブックマークや、評価、コメントは大変励みになりますので、是非よろしくお願いします。


次回更新予定は 4月26日(日)18時となります

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