俺は・・・?
自らの姿も見えないほどの暗闇が広がる空間。
そこにレンはいた。
レンはただボーっと立ち尽くしていた。
突如その真っ暗な空間に、雷が落ちる。
一瞬空間が雷の光によって照らされるが、それでも先は見えない。
そしてレンの目の前に現れたのは、かつて殺したはずの魔物・・・名も知らぬ狼だった。
バチバチとその体に電気を纏う白い狼はレンに向かって威嚇するように唸っている。
レンに降り注ぐ雷の雨、それをレンは難なくよける。
「チッ!やはり当たらんか・・・しかし!ようやくお前に恨みを返す時が来た!!死ね小僧!!」
雷を纏いながら、超スピードでレンに攻撃を繰り返す白い狼。
レンはその攻撃を全てヒラリヒラリと躱していく。
「なぜ剣を抜かん!!腑抜けたか小僧!!」
白い狼はいらだちを隠さずに吠える。
「お前がいるってことは・・・ここは地獄なのか?」
哀れみのような目を白い狼に向けて、レンはそう言った。
「だったらどうだと言うのだ。俺はお前の親を生きたまま喰らったお前の仇。そしてお前は俺の配下を全て殺した!!俺自身も!!ならば俺とお前の関係は、永劫恨み恨まれの関係だろうが!!さっさと剣を抜け!生きたままそのはらわた食いちぎってくれるわ!!」
しかしレンは剣を抜かない。それどころか白い狼に向かって笑みさえ浮かべていた。
「そういうのはあの戦いで全部終わった。俺がお前を殺し、俺が勝った。俺はそれで十分。お前の気が済むなら、好きに俺を肉なり焼くなり好きにするといい」
そう言ってレンは両手を広げる。もう避けないという事だろう。
「お前・・・もういい興が削がれたわ」
そう言って白い狼は纏っていた雷を消す。
「なんだ?いいのか?」
「ふん!お前が自らの死に、惨めに泣き叫ぶ姿を見る為に姿を現した。それなのにお前と来たら・・・未練は無いのか?どうしてそう飄々としている」
「未練ならあるさ・・・でも、俺は大切な人を守れた。ならば納得するしかない。お前も俺の中から見ていたはずだろ?」
「気付いておったのか・・・」
「声が出せない理由、回復魔法やポーションで身体的な問題は無い。両親を失ったショックで一時期声は出にくくなったが・・・そもそもお前と戦ってた時は普通に喋ってたしな」
「お前が声を出せないせいで人々から淘汰され、殺されかけているところを見てると気分が晴れるようだった」
「趣味悪いな。というか直接呪い殺せよ。陰湿で地味なんだよやり方が」
「うるさい。お前の喉を噛み切るつもりで呪ったはずが・・・」
「ふっ」
「・・・鼻で笑いやがったな・・・」
「いや・・・あまりにお前がマヌケで・・・」
「前言撤回だ。やはり殺す。そこから動くな」
「俺も気が変わった。こんなマヌケに殺されるわけにもいかないな」
両者睨み合い、お互い姿勢を低くする。
(・・・ン・・・レ・・・・ン・・・)
静寂な空間に、途切れ途切れだが、かすかに誰かの声が聞こえる。
「チッ!時間か・・・」
「マリー?」
レンが聞き違えるはずはない。確かにマリーの声だった。
「行け。お前の番いが呼んでいる・・・俺も悪友の元に行かなければならない。あいつを一人にはしておけんからな」
「・・・そうか。清々するな」
「もう二度と会う事もない。精々苦しみ、泣き・・・・幸せに生きるがいい」
「そのつもりだ。・・・じゃあな」
「ああ」
そうして白い狼は真っ暗な空間から消えていく。
レンは上を見上げる、そこには一筋の光が見える。
「マリー!!」
レンはその光に、手を伸ばした。




