帝都へ
結局その夜は、そのまま綺麗な夜空をレンと寝転んで見続けた。
レンの持ってきていた薄っぺらい布を体に掛ける。
少し寒くなりそうだったけど、隣にいるレンの体温で暖かく・・・むしろ体が熱くなって・・・。
そしていつの間にか、私もレンも眠りに落ちたのだった。
そして翌朝。
「お腹すいたです・・・」
(あ〜昨日の朝から何も食べてないもんな)
またあの階段を降りることを考えると、気が滅入るが、そんな事も言ってられない。
(あれ?昨日は気づかなかったけど・・・これって)
「なにがあるです?」
ひよっこっとレンの体から頭だけを出し、レンの前にある看板を読む。
『お帰りはこちら』
「へ?」
看板の向こう側を見ると、滑らかな木の坂道が世界樹の外側に沿うように出来ていた。
「レン?まさかここから滑り降りるつもりじゃないですよね?危ないです。落ちたら死にますよ?」
(マリーはお腹すいてるよね?)
「え!?」
(一刻も早く下に降りたいよね)
「いやー命をかけるほどではないですかね〜ははは・・・」
(大丈夫!マリーの命は俺が絶対守るから!)
「レン!?」
振り向いたレンが私をお姫様抱っこし、勢いよく走り出す。
「いやぁ!!落ちるです!!」
(しっかり掴まってて!)
そのままレンは滑らかな坂に足を乗せ、立ったまま体を横にして坂を滑り出す。
「レン!!レン!!絶対落ちないでくださいよ!!」
(任せとけー!ってかこれ普通に楽しい)
「のんきですかー!?」
振り落とされないようにレンの首にしがみつく。
「うひょー!!もっとスピード出すですレン!!」
(お?乗ってきたねマリー!ここからが本番だ!)
「ひぇー!!」
慣れてくると楽しくなってきて、テンションがおかしくなったけど、何とか無事に地上に降りることが出来たことは言っておくです。
「レン〜これも皮剥いて欲しいです〜」
(いいぞーこっちに投げてくれ)
薄い緑色の果物を、レンに向かって山なりに投げる。
レンはそれを受け取り、キュルルと果物を回したかと思うと、いつの間にか果物の皮が無くなっていた。
「んーどれも美味しいですねぇ・・・名残惜しすぎます」
(そうは言っても肉も食いたいだろマリー。あと別の甘味とかも)
「むぅ・・・確かに・・・次はどこに行くです?またお義父さんとお義母さんに聞くです?」
(いや・・・実は行っとかないと行けない場所にそろそろ向かおうかな〜と思ってるんだけど・・・)
「行かないといけない場所?どこです?」
(帝都かな?)
「へ?なんで・・・モグモグ・・・帝都に用事があるです?」
(実はこんな手紙を貰ってさ・・・)
レンが私に向かって便箋を放り投げる。それをキャッチし、手紙の内容を見る。
そこにはこう書かれていた。
『いつでもいい。気が向いたら我が城に来い。この手紙を衛兵に見せれば、全て段取りをつけてくれるだろう。待ってるぞ。
ババール・ジン・オルガ5世』
「これって・・・皇帝?」
(らしいな)
「えぇぇぇぇ!?」
(帝都って人が多そうだからさ、マリーが嫌なら別に行かなくてもいいんだけど・・・)
「行きましょう!皇帝を無視とか肝っ玉座りすぎです!!」
(俺にとってはどこぞの知らない王様なんかより、マリーの方が大事だからさ・・・)
「レン!?サラッと恥ずかしくなることを言わないでください・・・人が多い場所は苦手ですが・・・レンが隣にいてくれるなら・・・私は大丈夫です!」
(ありがとうマリー)
「レンの行きたいところが、私の行きたいところですから!帝都の次は私の行きたいところに行きましょう!」
(もちろんだ!)
名残惜しくもエルフの森を去る。向かう先は帝都になった。
いつもはお互いがお互いを引っ張るためにつないでいた手は、どちらともなく自然と繋がれ、二人並んで歩く。
嬉しくてにやける顔を無理やりキリッっと正し、真顔で正面を向く。
しかし、あまり表情が変わらないレンの口角はわずかに上がっていて・・・。
そのレンの顔を見て私もにやけ顔が止められなくなって・・・。
「そんなに嬉しいですかレン~?」
(ああ。嬉しいよマリー)
「ふぇ!?ううう・・・浮かれ過ぎです!!」
(いいじゃん浮かれても。マリーだってにやけてるし)
「うるさいです!!見るなです!!」
そう言いつつも、繋がれた手は離さない。
「馬鹿なこと言ってないでさっさと行くです!」
(ちょ・・・いきなり走るなってマリー!)
いきなり恋人っぽく振る舞うなんてできないけど、私たちは私たちのペースで歩いて行こう。
今はまだ恥ずかしいから、私の赤くなっているであろう顔をじろじろ見るなです!!




