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剣と魔法の世界でお金を稼ぐ術とは


 魔王様はまた玉座に座られ、私はその前に跪く。

 玉座の間には崩れた札束の山や飛び散った札が散乱している。埃やゴミと違い、ぜんぜん気にならない。苦にならない。掃除しなくていい。いや、むしろ掃除したい。


「剣と魔法の世界でお金を稼ぐには、敵やモンスターを倒すしかないのだ」

「手っ取り早く稼ぐ方法ですね」

 RPGの基本です。冷や汗が出る。

「さらに人間同士では戦争をして互いを殺し合って金を奪ったり、殺し合うための武器や兵器を売買したりして金を稼いでおるのだ」

 魔族においてはは考えられない愚行……。同種族の争い。殺し合い。戦争ビジネス。ビジネスマン。

「愚行の極みでございます」

「うむ。だが、人間共の愚行と軽視していてはならぬ。小さい頃から敵を倒してお金を稼ぐゲームやライトノベルの見過ぎで、知らないうちに奪い合うことを脳に刷り込まれていたとすれば、卿はどう思うか」

「――!」


 小さい頃からの……刷り込み――。


 悪者を倒せばお金を稼げて……地位が上がるという刷り込み――。ゲームはともかく、ラノベは冷や汗が出ます。

「人間共が魔族に危害を加えてくるのならば、その時は身を守るために戦わねばならぬ。だが、自分の私利私欲のために戦ってはならぬのだ」

「私利私欲のために……戦わない?」

 おっしゃることは確かなのだが……。

 そんな剣と魔法の世界やRPGに……いったいなんの魅力を感じるのだろう……。冷や汗が出る、自分達を全否定しているようで。

「ほのぼの剣と魔法の世界でスローライフでございましょうか」

 意味分からんぞ。ほのぼのに剣と魔法はいらない。デスボイスなアニ声のようだ。

「さよう。ほのぼのでよいのだ。予は戦いを促す反平和的な刷り込みをするぐらいなら……お金を刷り込んだ方がいいかなあ~って考えたのだ」


 ――お金の刷り込みとさりげなく掛けた――上手い!


「とは言ってられません! 上手くても駄目です!」

 お金を刷り込んでは駄目です! 戦い合うのも駄目かもしれませんが、戦わずしてお金ばかり作っていても駄目です――!

「危うく騙されるところでした」

「チッ」

 舌打ちしないでください魔王様。せっかくいいことを言っていても全てが無に帰しますから~。


 魔王様は立ち上がると、両手を上げ短い呪文を詠唱された。

「テッャチエキ、ドレケイナイタッモ!」

 すると、禁呪文で出した大量のお札は……風に吹かれる落ち葉のように床を流れ、スーッと消え去った。


 玉座の間が殺風景になり……これほど広かったのかと寂しく感じる。……なんだろう……体力を奪われたような脱力感だけが残る。


 お金には力がみなぎる魔力でもあるのだろうか。


「寂しいのならもう一度だそうか? いつでも出せるぞよ」

 また禁呪文を詠唱しようとする。

「やめてください……」

 こっそり鎧に挟んで隠し持っていた札もなくなっていた……シクシク。


 お金を消し去り玉座に座られる魔王様は少しも落胆されていない。……さすがだ。さすがは魔王様だ。ローブの袖にこっそり札束を忍ばせているのかもしれない。

「予を卿と一緒にするではない」

「御冗談を……」

 ああ……今すぐ確認したい。ボーイズラブと間違われてもいいから――身体(ボディー)チェックしたい。



「予には向上心があるのだ。次は……無限の魔力で純金を出せる禁呪文を編み出そうと思うのだが、どうだろう」

「ジュンキン! すなわちゴールド!」

 おおよそは同じ過ちを繰り返すことになりましょう。金の価値が大暴落します。

 ですが……純金はその性質上、様々な材料に使えます――! 熱や電気が伝導しやすく、さらには腐食にも滅法強い!

 純金の玉子焼き器や純金の電線。ちょっと重いかもしれない。さらには金箔が入った日本酒は……金とお酒の比率を真逆にしてもいい――!

「もやは飲み物ではなくなるぞよ。一升瓶型の金の棍棒ぞよ」

「逆さにしても瓶から酒は一滴も出てこないでしょうね」

 鈍器だ。サイクロプトロールの武器になるかもしれない。


 であれば、純金は出して貰おうか……。

 バレないように人間界へ出向き、こっそり換金すれば……罪は軽い――! 金なのに軽い――!


「名案にございます! ただし、たくさん出せば金の価値が暴落するのでほどほどに……」

「悪っい顔をしておるのう、デュラハンよ」

 ヘッヘッヘ。首から上は無いのです。

「だが、そんなことをしては駄目ぞよ」

「――なぜでございますか! ホワ~イナット!」

 ぬか喜びさせないで――! 大量の札束が一瞬で消えてしまい……ちょっとナーバスになっているんよ。

「魔力でそんな重たい物をホイホイと出してはこの星の比重が重くなってしまい、遠い未来、自転速度や公転速度に影響を及ぼすぞよ」

 自転速度や公転速度に影響を及ぼす――って。どうでもいいぞ。どうでもよくないけれど。

「ああー、残念で御座います」

 純金のデュラハン……皆が見たかったはずです。ゴールドク□スみたいで格好いいはずです。冷や汗が出る。原作は古過ぎて。

 か、兜も欲しいです……首から上は無いのだが。

「私利私欲のために魔力を無駄遣いしてはならぬのだ」

「――御意。……御意?」

 いやいや魔王様、言っていることが矛盾しております……。


 さらには、現金だって……数十トンも重さがあったではないか――!

 数千億円の重みもあったではないか――! シクシク、ピエーンでございます。

「矛盾を飲み込んでこその四天王ぞよ」

「――!」

 矛盾を飲み込めって……ひょっとしてパワハラ? さらにはコンプラ違反? ……言えないけれど。


 魔王様、魔法で現金をいっぱい出しちゃダメです。

 ちょっとだけで……お願いします。


「予の50円玉をやろう」

 今日一日の日当が50円!

「有難き幸せで御座います――!」


最後まで読んでいただきありがとうございました!!

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また次の作品でお会いしましょう!

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結お疲れ様です! ほのぼのに剣と魔法はいらない! けどほのぼのしてた方がいいー! 50円で喜ぶデュラハンさんは、まさにほのぼのですね!
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