いい加減、実妹は兄離れをすべきである
「チアキ、俺も王都に行くぞ」
イーストウッドからの帰り道チアキにそう宣言する。
「本当? お兄ちゃんが一緒に来てくれるんなら、わたし的には百人力だよ!!」
「本気? 道中の旅費どうするつもり?」
「良いのっ? 兄様が来てくれるなら、うちも歓迎するよっ」
俺の言葉に、チハルとチアキは嬉しそうに、チフユは懐疑的に反応した。
「まぁチハルはどういう生活送ってるのか興味あるし、二人に会っておきながらチナツに会わないでいると後が怖いし……」
「それは、まぁ確かに……」
俺が王都に行きたい理由を説明すると、チフユも納得したようである。
「それなら、私も付いていく」
「良いのか?」
チフユの生活圏は俺達の村にある。
そんなに長く王都にいるつもりはないが、離れるとなるとそれなりに影響が出るだろう。
王都までは俺達の村から馬車に乗り継いで行っても片道1、2週間はかかる。
「冒険者家業の最大のメリットはどこでも働けること。兄さんが王都にいる滞在費位は私が王都で稼ぐ」
「いや、貯金あるしお前のヒモ生活をする気はないんだが……」
「お金の心配はしなくて大丈夫だよっ。王宮からチハルの捜索でお金出てるからね」
費用の心配をしている俺とチフユに、チアキが心配はないと主張する。
「それは良いのか?」
王宮の金の私的流用にならないのか……。
ちょっと不安になる。
「うん。だって兄様達が来るってなったらチハルも喜んで王都に帰ると思うし、必要諸経費だよっ。ねっ、チハル?」
「そうだよ!!お金だって、王座でふんぞり返って無駄金使ってるだけの人たちより、お兄ちゃんのために使われる方が嬉しいと思うよ」
チハルも横領することに賛成の様だ。
実妹と従妹の倫理観に不安を感じてしまう。
良い意味で考えれば、それだけ俺と一緒にいたいという事だろう。
むしろ、深く考えてはいけない気がしてきた。
「私の旅費も出して貰えるの?」
「当然だよっ。出さないとか言って兄様に怒られたくないし」
チフユの旅費も一緒に出して貰えるようだ。
お金の問題はこれで解決である。
「そうするといつ頃出発するの?」
「そうだな。長く村を空けることになるから仕事の引継ぎとかもしないといけないし、3日後位かな」
チハルの質問にそう答える。
村に帰って来て仕事がなくなっていたら話にならない。
定住して仕事をしている商人の悲しいところだ。
「そう言えば、チアキの転移魔法でもっと気軽に往復できないの?」
そんな計画を立てていたらチフユから良いツッコミが入る。
忘れていたが、最もな意見である。
「残念だけど、転移魔法はまだ開発中だからそんなに気軽には使えないんだっ。準備にも時間かかるしねっ」
チフユの疑問にチアキは残念そうに答えた。
更にチアキに言わせると失敗するとどこに飛ばされるか分からない、最悪体がスライム上になる可能性もあるとのことだった。
こいつ良くそんな危険な魔法で帰って来たな。
それだけ急いでいたってことか?
そんな俺の視線に気づいたのか、
「兄様達の村には前から目印つけて転移魔法の目標地点に設定していたんだよっ。それにこの村から魔術研究所に通う為にも、王都とこの町のゲートは開通させておかないといけなかったしねっ」
チアキは苦笑いしながら、そう答えてくれた。
「チアキ、何で村から魔術研究所まで通う必要があるのかな?」
「そんなの言わせないでよっ」
チアキは顔を赤くしながら、ハイライトの消えたチハルの質問に答える。
「やっぱりチアキもわたしの敵ってことかな?ここでチフユお姉ちゃんと一緒に滅する必要があるかな?」
「チハル、そういうこと言うなよ。それに王都と村のゲートが開通すればお前だって簡単に帰ってこれるってことだろ?」
確かにと思ったのか、チハルの目にハイライトが帰ってきた。
チフユはそんな様子を見ながら溜息をついていた。
「そう言えば、チフユの試験とやらはどうだったんだ?」
今回の旅の目的であった試験の合否判定を尋ねる。
「あっ」
チアキはしまったといった顔をしつつも、
「及第点だったよっ」
とか取り繕っていた。
完全に忘れてたな。
「兄さん、やっぱりチアキを信用したらダメってこと」
最初からこうなる事は分かっていたのかチフユは諦めたようにそう言った。
ちなみに、家に帰ってから振舞った焼豚は大変好評でした。
次回はやっと義妹のチナツが登場します。
タイトル詐欺にならなくて良かった……。
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