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英雄の憂鬱


 私はゴットフリート・フォン・キルステンという。

 この王国の隣にあるイーリスタ帝国で伯爵の地位についており、ドラゴンと鬼人族を討伐した事から帝国では英雄と呼ばれている。

 今回その実績を買われ、隣国で復活としたという魔王討伐のパーティに声を掛けられた訳だ。

 私も、魔族の中では最強種と呼ばれるドラゴンや鬼人と呼ばれる人の数十倍の力を持つ種族を討伐した事から、自分の力にはそれなりの自信がある。

 私が連れて来たエルフのリーフや姪のアネットもドラゴンや鬼人を討伐した際、私が戦功を立てるのを大いに助けてくれた優秀な武人である。

 そんな私達は帝国の威信を背負い、今回の魔王討伐に参加したのである。


 しかし私はこのパーティに参加したことを後悔し始めていた。

 この勇者達が頭がおかしいのである。


 まずは勇者チハルだ。

 彼女は基本的に話しかけても返事をしない。

 彼女の義姉であるチナツや従妹のチアキが話しかける時ですら三回に一回は反応をしないのである。

 人見知りなのかとも思ったが、彼女の兄について話を振った時だけ物凄い勢いで喰いついてきた。

 兄の話をしている時の彼女はとても快活であり上機嫌であったが、それ以外の話題には一切の反応がないのだ。

 魔王城は王都からかなり遠い場所にあると聞く。

 長旅になるだろう。

 それであれば戦闘での連携を取ったり、道中ギスギスしない様にする為にはコミュニケーションが必須である。

 私も色々と冒険をしてきたから、それ位は分かっている。

 しかし、彼女はそのコミュニケーションを取る気が一切ないのである。

 挙句の果てにはこの間、お兄ちゃんに会いたいから帰るとまで言い始めた。

 彼女は勇者ではないのか!?

 普通、勇者というものは人々の為に身を粉にして戦う存在だと思うのだが……。

 そして、そんな存在だからこそ、人々から尊敬され崇められる人物のはずだ。

 しかし彼女にはそんな素振りが一切ない。

 何故こんな人物が勇者になってしまったのか疑問が残る。

 神は我々を見捨てたのというのか……。


 そして聖女チナツである。

 彼女は勇者達の中では最も真面な人物だろう。

 他のパーティと積極的にコミュニケーションを取り、円滑な人間関係を築こうとしていた。

 また疋田君が行方不明になった後、彼が連れていた年若い少女を最後までサポートし立ち直らせた後、近くの教会まで案内してあげていた。

 道中、傷付いた人がいれば対価もなしに治療をし、人々に笑顔を分け与えていた。

 彼女こそ歴代で最高の聖女と言えるのではないだろうか。

 是非、私の息子の嫁に来て欲しい位である。

 最初はそう思っていたのだ。

 しかし彼女は悪に対しては苛烈だった。

 悪い事をした奴を見掛けると、問答無用で締め上げ磔刑に処していた。

 それに彼女の恋愛観は異常である。

 彼女の義兄には婚約者がいるらしいのだが、その婚約者から義兄を寝取ろうと考えているらしい。

 聞いた話によると婚姻届を出す前に離婚届を書いて行けと迫ったらしい。

 これには我がパーティも困惑してしまった。

 天は人に二物を与えないと言うが、それはまさに彼女の事を指すのであろう。


 最後は賢者チアキだ。

 彼女が一番頭がおかしかった。

 いつもニコニコと人畜無害そうな顔をしているが、それはまやかしである。

 その顔に釣られて寄ってきた連中を罠にかけて陥れていく姿は、正に食虫植物と言っても過言ではないだろう。

 私も一度その罠に嵌められそうになってしまった。

 精神感応系の魔法というのはそれだけで凶悪な物であるため、私は基本的にそれを無効化できる様な魔道具を装備している。

 この国ではこの手の魔法は法に違反する行為になる様だが、念の為装備していたのだ。

 彼女は私と会った瞬間に何の躊躇いもなくこの【洗脳魔法】を使ってきたのである。

 私は装備のお陰でレジスト出来たが、彼女に二度とこのような行為をしない様に厳重に注意をした。

 彼女は私の言葉に感銘を受けたかの様な空気を出し、そして私が油断してシャワーを浴びている時に再度【洗脳魔法】を掛けて来たのである。

 私が洗脳されていることにアネットが気が付き助けてくれたため、大きな被害は出ずに済んだが、あのまま洗脳されていたら、どうなっていた事だろうか。

 彼女が勇者パーティの一員としてきた時は戦慄したものである。


 そして、何よりも彼女達は皆一様に強いのだ。

 チハルは私達の誰よりも早く敵に気付き討伐していくし、チナツは通常の聖女とは違い積極的に前線に出てダメージソースになっている。

 チアキも多数の敵が出て来た時の殲滅力は他の類を許さないレベルであった。

 同じ賢者であるドワイト君等は彼女の足元にも及ばないし、私の仲間であるリーフも「魔法が得意であるエルフだってあそこまでの火力を出せる人はいない」と言っていた。

 つまり、彼女達3人で全てが片付いてしまい、私達の存在意義が感じられないのである。


 夜、宿屋に泊まる際に、私は部屋で仲間達と相談していた。


「私達はこのパーティに必要ないのではないだろうか? と言うかこのパーティは大丈夫なんだろうか?」

「伯父さん、元気を出して。彼女達がおかしいだけで、伯父さんだってかなり強いよ」


 アネットが私を励ましてくれる。


「確かにあの賢者が信用できないのは否定できない。でも、ここで帰ったら英雄としての名に傷が付くのも事実」


 リーフもそう言って私に激を入れてくれる。


 二人とも目付きが悪く悪人面で、他の人達から犯罪者呼ばわりされていた私に付き合って来てくれた大切な仲間である。

 アネットは亡くなった弟に変わりに赤ん坊の頃から育てて来た大切な姪であるし、リーフもまたエルフ族の危機を聞きエルフ達を助けた時からの付き合いである。


「そうだな。ここで引き下がる訳にはいかないな。帝国で待っている家族達の為にももう少し頑張ってみよう」


 そんな二人に報いる為にももう少しこのパーティでやっていってみよう。


「二人とも悪いが、もう少し付き合ってくれ」

「当り前だよ。伯父さんを散々犯罪者呼ばわりして、寝取リストとか馬鹿にしてきた人達をここでちゃんと見返してやろう!」

「私たちの部族を救ってくれた恩義にはちゃんと報いる」


 二人の温かい言葉を胸に受け、私は魔王討伐を新たに心に誓ったのである。


隣国の英雄回でした。

ゴットフリートさんは意外と真面な人です。

お陰様でチハルとチアキのキチガイ行動に心が折らそうになっています。


次回は英雄と三人娘の戦いです。


引き続きよろしくお願いします。

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