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妹と幼馴染と ~二人は仲が悪い~

ブクマ、評価ありがとうございます。

これからも、応援してもらえると嬉しいです。


 俺はチハルを連れてチフユの家に向かった。

 チフユの家は俺の実家の隣にある。


「小母さん、こんちには。チフユはもう起きてますか?」


 チフユの家に訪れると家の前にいたチフユの母親に声をかけた。

 家が隣同士なだけあって、俺は小母さんとは結構仲がいい。

 小母さんは俺に気が付くと、


「はい、こんにちは。もうお義母さんって呼んでくれて構わないのに相変わらず他人行儀ね」


 そんなことを言う。

 後ろにいるチハルが黒いオーラを出していた。

 殺気だけで人が殺せるんじゃないだろうか。

 というか勇者が出して良いオーラじゃないだろ。

 光と闇が合わさると最強になるというアレなのか?

 そんなくだらない事を考えていると、小母さんは後ろにいたチハルに気付いた様だ。


「チハルちゃん、王都から帰ってきたんだね。久しぶりじゃない。美人さんになったものね」


 チハルはその言葉を聞き小母さんに会釈をする。

 チハルは小母さんのことが昔から嫌いだった。

 つっけんどんな態度になるのも仕方がないのかもしれない。

 どうしてそんな態度をしてしまうのか理由を聞くと、『お兄ちゃんとチフユお姉ちゃんを何かとくっ付けようとしているのがムカつく』とのことだった。

 小母さんはそんなチハルの態度にも気を悪くせずに、


「チフユに用事かい。もう起きてると思うから呼んでくるよ。それとも、チフユの部屋に行くかい?」

「いえ、取り敢えずここで待ってます」

「遠慮しなくても良いんだけどね」


 とか苦笑しながら、チフユを呼びに行ってくれた。



 それから少し経つと眠そうな顔をしながらチフユが家から出てくる。

 普通に寝間着だった。

 幼馴染とは言え許嫁なんだからもう少し見栄えに気を使うべきではないだろうか。

 チフユは昔から自分の見栄えには一切気を使わない少女であった。

 肩で揃えた見るものを魅了するかのような綺麗な銀髪を片耳に掛け(寝癖が立ってボサボサであったが……)、切れ長の目には魔性の様な金色の瞳(若干眠そうで且つ目の下には隈がある)を浮かべている。

 泣き黒子も一つのアクセントになっており、見た目を整えればチハルよりも美少女と言えるだろう。


「ふわ~。兄さん、おはよう」


 俺の顔を見ると眠気も隠さずに挨拶をしてくる。

 チフユは剣士として神託を受けたため、近場のギルドで冒険者として不定期に活動している。

 剣士は剣聖や暗黒騎士、聖騎士といった剣を扱う職業の中では最もポピュラーなもので結構普通の職業である。

 仕事は正確で速く依頼者とこれといったトラブルも起こさないので、結構優秀な冒険者としてギルドでは評判らしい。

 昨日の夜まで依頼をやっていたため、今朝村に帰ってきたのだ。


「寝起きに悪いな」

「兄さんなら、別に構わない。それでどうしたの? また、調味料足りなくなった?」


 彼女がギルドに所属しているのは俺のために食材を集めてきてくれているからだ。

 ちなみに、俺もヒモと呼ばれない様にお金をちゃんと払っているぞ。


「そう言う用ならもう少し遅い時間に来る」


 俺がそう言うとチフユは頭の上に?マークを3つ位浮かべていた。


「そう言えば、後ろにいるのはチハル?」

「久しぶりだね、チフユお姉ちゃん」

「なるほど。私の書いた手紙に文句を言いに来たって感じね」


 二人の間に冷たい空気が流れた。


「何でわたしにお兄ちゃんと結婚したとかいうデマを流したの?」


 チハルの口調は穏やかそうであったが声は震えていた。

 あれは怒っている。


「いい加減諦めて貰った方がいいと思って」


 対する、チフユは冷静だった。

 流石は冬を冠する名前をした女である。


「諦めるって何よ!!」

「王都には良い男が一杯いたんじゃないの? 兄さんを諦めて一人くらい捕まえればよかったじゃない」

「お兄ちゃんほどの人はいないもん!!」

「そんなの当り前じゃない。頭沸いてるんじゃない?」


 チフユの口撃は相変わらずキツい。


「やっぱり話にならないね」


 口喧嘩で勝てないのがチハルには分かったらしい。

 腰の聖剣を抜く。


「お兄ちゃん、どいて。そいつ、殺せない!!」


 確かに俺が間にいたらチフユは殺せないだろう。


「いや、殺すなよ」


 俺は溜息をつきながら、チハルにチョップを決めようとした。


―――瞬間、


「ちょ、痛い痛い」


 気が付くとチハルに手を捕まれ地面に押し付けられていた。

 流石は勇者様だ。

 見事な合気術である。

 お兄ちゃんに決めてほしくはなかったが……。


「ごめん、お兄ちゃん」


 慌ててチハルは手を放す。

 チフユはニヤニヤとこちらを見ていた。


「勇者様は心配した兄であっても攻撃するんだ?」


 チフユは更に追い打ちをかける。


「もういい、帰る!!」


 そう言ってチハルは俺の実家に入っていった。




「完全にお前悪役だぞ?」


 チハルがいなくなってからチフユに声をかける。


「いくら知り合いとは言え、私も兄さんを取られたくないし」

「嫉妬してくれるのは嬉しいけど、あんまりやり過ぎないでくれ」

「兄さんは優しいね」


 チフユは微笑む。


「お前ほどじゃないさ。あの手紙だってチハルに発破をかけてたんだろ?」

「何でそう思うの?」

「お前が態々角の立つような事をするとは思えん。ああ言えば、チハルが早く村に帰ってくる様に努力すると思ったんだろ?」

「はぁ。やっぱり、兄さんは何でもお見通しだね」


 チフユは否定をしなかった。


「もう用も終わりだよね。まだ、眠いしもう一眠りしてくる」

「そうか、起こして悪かったな」


 俺は謝罪の手を作りながら、チフユに謝った。


「兄さんなら、いつ来てもらっても構わないから。遠慮しないで」


 チフユは笑みを浮かべながら、そう言いつつドアに手を掛けた。


「でも、あいつが帰って来たってことは、そろそろ魔王が復活するってことだろ。大丈夫なのかね?」


 俺は胸中の不安をチフユに尋ねた。

 チフユに聞いたからと言ってどうにかなるものでもないが……。


「どうにかなるんじゃないの」


 チフユは振り返らずに答える。


「それじゃあ。おやすみ、兄さん」


 そう言って、チフユは家の中に帰っていった。



 なお、家に帰ったらチハルは超ブチギレていた。

 物に当たるのは止めなさい。

 

次回は賢者の従妹が登場予定です。

タイトル詐欺にならない様にメインヒロインは次々回くらいまでには全員出すつもりです。

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