義妹は変態なのか、それとも変態になってしまったのか?
チナツ・グレイシアは性女である。
いや、違った。
聖女である。
彼女の両親は旅の冒険者をしており、彼女が子供の頃に亡くなった。
その後、彼女の両親と仲の良かった俺の両親が彼女を引き取り、彼女は俺の義妹になった。
最初は塞ぎ込んでいたチナツも年と共に明るくなっていき、10歳になる頃にはチハルと何時も喧嘩をする様になっていた。
年上であるチフユにも年下であるチアキにも勇猛に挑んでいき、正にガキ大将であった。
彼女達の喧嘩の原因は大体俺の嫁になるのが誰かとかいう子供の夢であれば下らない話だ。
そして、チフユと婚約した辺りからチナツの態度は段々と悪くなっていき、俺の前では仏頂面をすることが増えていった。
しかし、彼女は嘘を着く時や恥ずかしい時には髪を弄る癖があったし、そもそも思っている事が顔に出やすいタイプに人間だった為、嫌われたと思うことはなかった。
そもそも本当に嫌っているのであれば、常に俺の側にいようとはしなかったはずである。
好意の反対は無関心とはよく言うが、彼女は俺の言動や好みには凄い敏感であり、ツインテールモノにハマっていた時は、髪形を常にツインテールにしていた位である。
そのことを言うと、
「あんたのために、この髪形にした訳じゃないんだから!!」
とか顔を赤くして反論していた。
テンプレである。
そんなチナツに一年ぶりにあった訳だが、性格は相変わらずだなと思った。
ベールに隠れていて見づらいが、瑞々しい青色の髪は腰まで伸びており、純白のシスター服は聖女の名に恥じない清楚さを醸し出していた。
ツンデレにありがちな猫の目の様な吊り目には深紅の瞳が浮かんでいる。
顔も小顔であり、俺の妹分達の中では一番スタイルが良かった。
手に持っている鞭は俺の麺職人としての初報酬で買ってあげたものだ。
「こんなもの貰っても嬉しくなんかないんだから!!」
とか髪の毛を弄りながら言っていたのが懐かしい。
まだ、大切にしてくれていた様である。
だからこそ思うのだ。
当時のチナツにはSMの趣味はなかったはず。
いつの間に彼女はそんな大人の趣味に目覚めてしまったのか。
「兄さん、彼女も大人になったってこと」
チフユも冷たい目でチナツを見ていた。
そんな目線を感じたからか牧師から口枷を外し、振るっていた鞭も腰のケースにしまった。
「迷える子羊たちよ、よく来たね。ここは大聖堂。アイリス清教の総本山でもある」
牧師は服装を正し、何事もなかったかのように言ってきた。
その姿は正に穢れのない聖職者そのものである。
先ほどまでSMプレイに興じていたおっさんには見えない。
おっさんが先程の事をなかったことにしようとしているのであれば、俺もその流れに乗った方が良いのであろう。
というか、乗らないのこの後の流れをどう進めればいいのか解らん。
「初めまして、牧師様。俺は、そこにいるチナツの義理の兄です。こちらは、俺の婚約者であるチフユと言います」
そんな訳で挨拶をする。
チフユも俺の言葉に合わせて目礼をした。
「チナツさんのお兄さんでしたか。私はここの聖堂で牧師をしているジャックと言います」
「失礼ですが、ジャック牧師はチナツとどう言った関係で?」
先ほどのプレイを見ていると真面な関係には見えなかった。
あんまりチナツに悪影響を与えるような場所なら、無理してでもチナツを連れ帰る必要があるのではないだろうか。
そんなことを思い、牧師に尋ねる。
「私はチナツさんを真の聖女に導くため、その指導を大司教様より賜っております」
この牧師はあろうことかチナツの教育係だという。
チナツはこいつの手によって新たな性癖を開発されてしまったという事なのか……。
俺は絶望した。
こんな事になるんならチナツを王都になんて送り出すべきじゃなかった。
「兄さん勘違いしてるみたいだけど、チナツは昔からああだったでしょ?」
項垂れた俺にチフユが声をかける。
「昔からチナツは納得いかないことがあるとああやって暴力を振るっていた。兄さんが見えない所でやってたから知らないだけ」
そうなのか?
牧師に開発された訳じゃないってことか?
「チフユ!! あんた、こいつに何吹き込んでるのよ!!」
「本当の事じゃない」
「暴力を振るったって言葉尻が悪いじゃないの!! 確かに鞭で叩いてはいたけど、アンタたちだって色々とやり返してきたじゃない。真剣で切りかかって来たときは本当に死ぬかと思ったんだからね!!」
「それでも、先に手を出してきたのはチナツでしょ?」
二人がヒートアップし始めたが、節々から聞こえる言葉によるとチナツは納得のいかないことがあるとすぐ手を出していたらしい。
今回の牧師との件もその流れによって生じたものの様だった。
牧師が恍惚とした表情を浮かべていたため、大人のお店の様な空気になってしまっただけであり牧師がすべて悪いんだとの主張である。
なんか深く介入すると面倒臭そうなので、そういう事にしておこう。
それでも、口枷はないと思うぞ……。
チハルから届いた手紙にも書いてあったが、チナツはこの一年間かなり努力をしたらしい。
薬草等による物理的な治療から魔力による回復魔法まで様々な癒しの力を身に着けた様である。
「あんた達は何時まで王都にいるつもりなの?」
「チナツに会うのが目的だったからな。正直目的終わったし明日にでも帰ろうかと思ってる」
「そんなに直ぐ帰らないといけない用事でもあるの?」
俺の回答にチナツは不服そうである。
「まぁ特にはないけど……。チフユはどうなんだ?」
「兄さんが、もう少しこっちいたいなら付き合うよ」
「それなら、明日位はこっちいなさいよ。あたしが王都を案内してあげる」
チナツがそんな提案をしてきた。
正直、会ってすぐ帰られると寂しいからだろう。
それを言うとどうせ否定するだろうな。
「分かったよ。それじゃあ明日はよろしく頼むな」
「ええ、任せなさい」
そう言ってチナツが浮かべた笑みは久々に見るものだったのである。
何だかんだで10000PV達成しました。
ここまで見ていただいた方には感謝しかありません。
今後も更新頑張っていきたいと思うので何卒応援よろしくお願いします。




