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異世界王女の農村生活  作者: アメショー猫
5・寝台列車ノエル号
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寝台列車と意外な出会い

私達はすぐに出発するとユーグリス村から暫く歩き、神父さんのミヒュリムという名前の魔法でイルフィンザールにある駅に到着した。

俊和さんと二人で行った時は駅に立ち寄ることはなかったが、街中と同じくらいに多くの人で賑わっている構内はとても新鮮な体験だ。


「お、大きい……!」


私達は電車を待つ広い場所、ではなく、ホームという場所で待っていると普通の列車よりも数倍大きい金色の車体が目の前で停車する。

ホームも列車も、本では見たことがあっても実物は想像以上のものだ。


『随分早く完成してたんだね。

ボクが見た時は建設中だったのに』


「ああ、財団Gが手配したみたいだよ。

何でも快適な生活をして頂きたいとか」


財団G、という言葉に露骨に嫌そうな表情を浮かべるアリーさん。

私にはよく分からないが、アリーさんと因縁めいたものがあると神父さんは小さな声で教えてくれた。


『──めっちゃ胡散臭い』


「僕も同感。

何はともあれ、乗り物酔いするミリアナちゃんでも楽しめるんじゃないかと思ってね」


「あ、ありがとうございます!

凄く高そうだけど………」


とにかく派手な寝台列車は車体を黄金で染められ、宝石や貴金属で彩られているのを見れば、私だって一目で豪華だと分かる。

なんかこう、貴族でも利用が出来るのは極一部に限られそうだ。


『確か何十万リフスだっけ?

ボクはクソ神父の所持品、ってことで無賃乗車さ』


「な、何十、万………!?」


何十万リフスが一回の乗車で消える寝台列車。

どんなサービスがあるかは分からないが、たった一回乗車することと、そのお金で色々と本が読めると思うと震えが止まらない。


『……ねぇ、本当に君って元王女様?』


金銭感覚がおかしい、とばかりに呆れたような表情で私を見つめるアリーさん。

何となく、アリーさんはあまり値札を見なそうなイメージなのだが………


「そうですよ!

でも、姉さん達が無駄遣いばっかりして………」


『アステムブリングは財政的には無駄遣いしても平気なくらいに豊かだった筈なんだけどね』


「えっ………」


──衝撃の事実。

確かに、姉さん達は自由奔放で、特にセリア姉さんの浪費癖は度々話題になるくらいだ。

それを咎めないのは何故だろう、と常日頃から思っていたのだが…………

羨ましいというか、凄くズルい気がする。


「まぁまぁ。

現地は俊和がいるし、ミリアナちゃんがハマらなければ大丈夫だと思うよ」


私の表情が余程恨みがましいものになっていたのか、神父さんは苦笑しながらも白くてふわふわで、ほんのり甘い不思議なものを私の口の中に入れてくれた。

雪みたいなのに、ちょっと弾力があって面白い。


「お、おいひい………!」


「これはマシュマロ、って言ってね。

これ以外も各地の美味しいものが食べられるんじゃないかな?」


神父さんが出してくれたマシュマロを手に取るか悩む間もなく食い意地が先行し、一つ、二つ、三つと私の口の中にマシュマロが消えていく。

なんかこう、スコーンやクッキーよりも早く消えていくような気がする。


「は、はい!

えっと、その………」


一袋空にして言うべきではないことは分かっている。

だが、先程のマシュマロによって食欲に火がついてしまった以上、止められそうにない………ッ!!


『どうしたの、ミリアナ?』


「あのワゴンサービスって、利用しても、良いですか………?」


『好きにしなよ』


アリーさんが気付いてしまった、否、アリーさんが気付いて支払ってくれたお陰で既にワゴンサービスのカートから取り出して開封したお菓子もお咎めを受けずに済み、無銭飲食にならずに済んだのは本当に感謝しきれない。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


それから電車に揺られると共に、ワゴンサービスの係の人は忙しなく倉庫と私の座席を往復し、呆れたようにジト目でアリーさんが見つめていた。


『──かなり食べてるね』


「食べ方は綺麗だし、感謝していない訳ではない。

それでも………」


「放置したらこのまま帰ることになりそうだ」


『それは困るよ』


珍しく蒼白になった神父さんをアリーさんが小突き、何か言いたそうな目線でじっと私を見つめてきた。


「ひゃんへふは?」


『食べながら喋らないで。

それと、これで今日は終わりだよ』


もう持って来なくて良いからとアリーさんがワゴンサービスの係の人に告げ、開けたばかりのクッキーがアリーさんのポケットに収納される。

お楽しみにしていたクッキーがお預けになってしまったが、あまり煩くすると拳が飛んできそうだ。


「にゃんれれふはー!?」


『ダメって言ったらダメだよ、お姉ちゃん』


「ん、んん………」


それでも少しは、と思ってアリーさんに向けて手を伸ばすも、お姉ちゃんと言われては我慢せざるを得ない。

一度くらいはお姉ちゃんになりたいと思っていたのだが、血は繋がっていなくても大丈夫だろうか。


(アリーも上手くなったね〜)


『ぶっ殺すぞクソが』


神父さんがアリーさんに耳打ちすると一瞬で殺気立ち、外に向かって吐き捨てるように暴言を口にした。

礼儀正しいアリーさんを見てみたくはあるが、この様子では間違いなく無理だろう。


「え?」


『……何でもない。

ほら、早く準備して』


アリーさんは見られているとは思ってなかったようで、僅かに頬を染めながらバックを手に私を急かしてくる。

じっと見上げるアリーさんに心を奪われながらも、


「準備、とは……?」


『え?

そりゃ、お風呂しかないでしょ?』


普段のアリーさんの言動からは想像できないような可愛らしいネグリジェが現れ、私の興奮は暫く収まることはなかった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


すぐに神父さんの許可を得るとアリーさんに連れられて大浴場の更衣室に入り、早く大浴場を見ようと素早く下着を脱いで全裸になっていく。


『ちっちゃ………、ふにふに………』


私の上半身を見ながら口に手を当て、笑いを堪えるように蹲るアリーさん。

これに対しては流石に許し難い。


「これから大きくなるんです!!」


『ま、頑張ってよ。

あれぐらいにさ?』


アリーさんの指差す方向にはウェストフェレスに居た、殺人鬼の………、


「あら、ミリアナちゃん?」


「リーシェさん………!?」


綺麗なブロンドの髪に蝶の刺青と羨ましい体型、何より私のことを知っている女性はリーシェさんくらいだろう。

俊和さんには会わない方が良いと言われてはいたが、今回は仕方ないと思いたい。


『──ミリアナに手出しすんなよ』


そのままリーシェさんに駆け寄ろうとし、アリーさんの小さい手が私を強く引き止める。

人らしく見えるけど、一切体温を感じない無機質な手。

アリーさんは人形のように美人だけど、こうして触れてみると本当にそう思ってしまいそうだ。


「そう、ねぇ………」


『………』


アリーさんの手に驚いている間、何故か二人の視線が激しくぶつかり合ってる気がする。


「『…………』」


──多分、気の所為だと信じよう。


「ふふ、アリーちゃんがボディーガードなら手出しできませんよ?

──それでも」


リーシェさんの姿が見えなくなり、アリーさんは舌打ちと同時に神父さんの持っている剣の縮小版を左手で握り締めていた。


「リーシェさん……!」


『クソ、あのイカレ殺人鬼が……!!』


リーシェさんが殺人鬼という話は本当だった、とアリーさんの行動を見て咄嗟に目を瞑る。

斬られたら痛いし、殴られたら痛い。

痛いのも、死ぬの嫌だ。



怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い


恐怖は身体を支配し、微塵も動かすことは出来ない。

自分の甘さが、アリーさんを巻き込んでしまった。

私の、所為で。


「ふぇ?」


後悔が頭の中を埋め尽くそうとした瞬間、胸に何かが触れる感触でふと我に返る。

この細長い指は、もしや………、


「ミリアナちゃんのふにふにおっぱいゲット!」


「ひゃぁあああッ!?」


背中に回り込んでいたリーシェさんは容赦なく私の胸を揉みしだき、剣を放り投げたアリーさんの飛び蹴りを難なく回避。

続く投げナイフ、右ストレート、回し蹴りのどれも回避し、それからも攻撃し続けたがリーシェさんにアリーさんの攻撃は当たらなかった。


「いつもの癖だから……、許して?」


『お前なぁあああ……ッ!!』


クソ神父並にうぜぇ、と吐き捨てたアリーさんを笑顔で見つめるリーシェさん。

私はと言えば、


「は、恥ずかしい………」


その間も揉まれ続け、恥ずかしさのあまり動けずにいたのだった。

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