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男だらけの世界の方が、何故か女性にモテるんだけど?  作者: イノセス


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31/55

31話〜1つお願いがございます〜

「おはようございまーす!」

「おいっす!」「おう!黒川!」


 翌日の朝。俺はいつもより少し早めに出社して、いつもより声を張って挨拶を飛ばす。

 それに、返ってくる挨拶の多いこと、多いこと。特に営業部は殆ど出社している様子だった。


「おう、黒川。ニュース見たか?」


 係長が態々やって来て、俺にニンマリと怪しい笑顔を向けて来る。

 俺はそれに、大きく頷く。


「当然ですよ。興奮して、早めに出社しちゃいましたからね」

「なんだ、お前もか」


 やはりそうか。係長は…いや、この場にいる殆どの人は俺と一緒なんだ。

 今朝のニュース。そこには、昨日の慰問会についてが放映されていた。慰問会としてはかなり大規模であり、かつ満員を超えた大満員であった事も影響して、慰問会と言う日常イベントでも注目を集めていた。

 それに加えて…。


「大好評だったもんな。コメントしてた奴ら」


 テレビがインタビューした人達はみんな、大興奮でコメントを返していた。『今まであんな慰問会は見た事がない!!』とか『乙葉様のお姿が美し過ぎて、昨日は一睡も出来なかった!!』と、興奮ではち切れそうな声ばかりだった。

 それは決して大袈裟ではなく、今朝の繁華街は大型連休並に繁盛していると報道されていた。映るみんなガンギマリで『やる気が溢れて、止まらねぇんだよ!』と、配達のおっちゃんも階段を5段飛ばしで駆け上がっていたし。

 コメンテーターの話では、オトハ様の慰問会が与える経済効果は、通常の3倍とか言っていたけど…彼らを見たら、それが大袈裟とは言えなかった。


「いやぁ。やっぱ嬉しいよな。頑張った結果がこう、目に見えるってのはよ」

「そうですね」


 会社の名前も、短い時間だが報道された。協力会社って事にはなっていたけど、管理局の下に一般企業があること事態が異例だからね。結構良い宣伝になったんじゃないだろうか?

 

 そう思った俺の見立ては、当たっていた。

 今朝の朝礼では、社長が我々全員を褒めていたからだ。


『営業部と製品管理部の皆さん。本当に良くやってくれました。貴方達は我社の誇りです』

「「「っしゃぁああ!!」」」


 営業部から歓声が爆発し、俺達も喜びで肩を抱き合った。

 何処まで会社に貢献できたかは分からないけど、社長がこんなにも大人数を、そしてこんなにも深い感謝を述べたのは初めてだった。だから、余程上手く行ったんだと思った。


「「バンザーイ!バンザーイ!」」


 営業部が恒例の胴上げに入る。営業部の江川部長はかなりの巨体なんだけど…凄いな、営業部。コメントしてた人と一緒で、全員目がかなりキマッている。


「先輩!こっちもやりますよ」

「マジかよ!?まっちゃん!」


 星里部長、来年定年だぞ?腰とか肩とか、下手すると抜けちゃうぞ?

 心配だったが、管理部の神輿は既に完成していた。

 仕方ない。こうなりゃ盛大に飛ばしてやろうじゃないか。

 やる気になった俺達を、星里部長が心配そうに見回す。


「みんな、ちょっとだけで良いからね?江川君みたいな高さには、しないで良いからね?」

「任せて下さい、部長!僕たち若手が、営業部になんか負けたりしません!」

「いや、聞いてた?松本君。私はもう歳で…」

「行くよ!みんな!そーれ!」

「「「ワッショイ!ワッショイ!!」」」


 俺達は盛大に祝った。

 そして、後で知った。

 …星里部長って、怒るとマジで怖いんだな。

 

 〈◆〉


「あら?これは」


 自室でファッション雑誌を捲っていると、見覚えのあるドレスが映っていた。

 先日の特別慰問会で着た、赤いドレスだ。

 慰問会なんかでオシャレする事に抵抗を感じたが、思ったよりは悪くなかった。いつもは落ち込む心も軽やかだったし、男達の呻き声も気にならなかった。


「悪くないわね。キャラになりきると言うのも」


 慰問会も、雑誌の撮影も。今まではただ、蘇芳乙葉として出ていた。でも、先日みたいなのも面白い。服装と中身(わたし)が噛み合った気がした。

 これも、黒川達の方針。そう思うと、


「少し(しゃく)ね」


 私が鼻を膨らませた丁度その時、部屋にドアをノックする音が響いた。


「失礼しますっ!オトハ様。沢城ですっ」


 その声は、私の専属護衛である沢城亜心(あこ)の物。


「何かしら?」

「ご当主様がお呼びですっ」


 母が?

 嫌な予感がするけれど、私は平静を装って扉を開ける。途端に、アコのキラキラした目が私を見上げる。

 …ほら、そんな所に突っ立っていないで、早く私をエスコートなさい。


「それでは!参りますっ」


 私の前を歩くアコは、キョロキョロと周囲の警戒に余念がない。

 仕事熱心なのは良いけれど…ここは屋敷の中よ?貴女、もう2年目でしょ?少しは肩の力を抜きなさいよ。

 呆れている間に、母の部屋の前に着いた。


「失礼しますっ!ご当主様。オトハ様をお連れしましたっ!」

「入ってちょうだい」


 母の静かな声。

 それに…ちょっと待ちなさい、アコ。貴女はここで待つの。私だけが入室するのよ?


「失礼致します」


 母の執務室に入室すると、途端に花の香りが鼻をくすぐる。落ち着いたシックな部屋の中に、幾つものマネキンがドレスを着せられ、ポーズを取らされている。

 その中央奥のデスクで、母が座っていた。デスクの上に置かれた雑誌に視線を落とし、何やら書き物をしていた。

 私は彼女のデスク前まで進み、声を掛ける。


「ご当主様。私に御用とのことで伺いました」


 心を抑えた筈だったのに、少し声が震えてしまった。

 この人と面と向かって話すのなんて本当に久しぶりだから、色々と嫌な想像をしてしまう。

 先日の慰問会の事で、何か言われるのかしら?蘇芳ブランドの服を着たこと?それとも、館内で撮影をしたこと?色々と心当たりがある。

 一体、何が彼女の琴線に触れたの?

 私が心を乱していると、当主の目がこちらを見上げる。美しくも鋭い目が、私を射抜く。


「乙葉さん。先日の慰問会は、随分と盛況だったそうね。模範的だったと、神宮寺総理直々にお褒めの言葉を頂いたわ」

「そう、ですか」


 静かに頷きながら、内心で訝しむ私。

 何故、日本のトップが私なんかを気にかけるのかしら?蘇芳家の人間だから?それに、模範的って一体どういう事?


「貴女はその慰問会で、蘇芳ブランドを着ていたと聞いたけど?」

「っ…!ええ…」


 やはり来たかと、私は身構える。だけど、向けられる当主の目から、鋭さが失われる。


「それを見た雑誌編集者から、貴女へモデルのオファーが来ているわ。以前、貴女が出たあの雑誌よ」

「…っ」


 それって、スバルも出ている雑誌じゃない。ぽっと出のあいつを表紙にする様な雑誌だから、こっちから見切ってやったのに…。

 私はいつの間にか、視線を落としていた。再び上げると、当主の目とかち合う。その目が、私を探るように動く。私の出方を伺っている。

 私がモデルになった時の計算でもしているのかしら?そりゃ、家の人間がモデルの方が、色々と都合が良いでしょうね。


「分かりました、ご当主様。そのお話、お受けします」


 良いわ。乗ってあげる。私は既に、あいつが示した道に乗っている。その延長線上に、貴女達が居るだけ。

 編集者も母も、全て私の(いしずえ)にしてあげる。

 私の強い意志に、当主は「そう」と小さく呟く。そして、


「オファーを受けても、慰問会は続けるのよ」

「…」


 私は口を閉じる。

 慰問会自体は、続けても良い。それがあいつの提案でもあるから。首相にまで声を掛けて貰えるなら、それなりの影響もあったのだと思うし。

 でも、ただこの人の言いなりになるのは癪だ。

 だから、


「慰問会を続けるのでしたら、1つお願いがございます」

「…お願い?」


 訝しそうに見上げる当主。

 私は笑みを作る。


「男を1人、入区させて下さい」


 私の言葉に、初めて当主の表情が変わる。「はぁ」と短いため息を吐き、顔を歪ませる。


「執事から聞いているわ。貴女が慰問会で、局員でもない男と通じていると。その男に、何か吹き込まれたんじゃないの?」

「その結果が、これですわ」


 私はくるりと周り、カーテシーを行う。

 そうすると、当主は余計に大きなため息を吐き出す。


「どう言うつもり?乙葉。貴女、男を特区に招き入れて、何をするつもりなの?」

「何も。ただこれが契約なのです。私と彼の間の」

「それは知ってるわ」


 あら?やっぱり把握されていたのね。


「私が聞きたいのは、貴女がその男をどう思っているかよ」


 当主の目…いや、母の目が鋭さを取り戻す。怖いくらいに尖ったその目が、私を威嚇する。本心を言えと突き付けてくる。

 何を言っているの?この人は。

 私は笑みを深くする。


「ご心配には及びません、お母様。彼は私に道を示した。だから私も、彼に道を示す。ただそれだけのことですわ」


 〈◆〉


 オトハ様の特別慰問会から、数日が経った。

 あれから暫く、繁華街ではフィーバーが起きており、ある種の特需状態だったらしい。

 慰問会1つでこれだ。これを全国規模で行えば、高度経済成長も夢じゃないのでは?


 そんな風に思える程、オトハ様は慰問会で活躍された。

 でも、話はそこで終わっていなかった。特区の中でも彼女の事は話題になり、ファッション雑誌のモデルに起用されたらしい。鈴木さんからの情報だから、確かな話だ。

 オトハ様のドレス姿をネットに載せたら、そのドレスの売上が一気に伸びたらしい。彼女を真似て、服やメイクを変える人も少なくないのだとか。


 思った通りだった。これは、俺達が狙った結果だった。

 スバル様が売れた理由。それは中性的で、特区では珍しい王子様だからってだけじゃない。特区の女性が、彼女の強烈なキャラに惚れたんだ。周りには居ない特別な彼女に、特区の女性達は惹かれている。

 

 だから、オトハ様にも色を着てもらった。真っ赤で、情熱的で凛々しい、大人の女性としての彼女を演じて貰った。

 そしてそれは、見事に受け入れられた。スバル様とは違う憧れとして。隣にいて欲しい王子様ではなく、なりたい自分の目標として、オトハ様は輝き出した。

 きっとこれからは、彼女がファッションリーダーになっていくだろう。安室〇美恵さんや、浜崎あゆ〇さんみたいに、女性達の星として。


「言うなら、女王様スタイルってことか」


 背もたれに背を預け、俺は伸びをしながら呟く。先ほど鈴木さんから教えて貰った情報に、頬を緩ませる。

 いやぁ。良かったよ。この路線なら、スバル様に食われる事もない。彼女も容姿が整っているけど、オトハ様の様な色気はない。このキャラはオトハ様しか出せないものだ。

 これなら、スバル様を越えられるぞ。


「…っと。何を考えてるんだ、俺は。仕事しないと」


 後方仕掛け人面している場合じゃない。彼女はもう、1人で進んでいるんだから。慰問会が終わった今、俺達はただの観客に戻った。何時までもプロデューサー気分ではイカンぞ。俺にはまだ、仕事がたんまり残っているんだからな。


 悲しい現実に気合いを入れ直していると、電話が鳴る。

 知らない番号だ。


「もしもし?JIESの黒川ですが…」

『こちら、特区管理局』


 えっ?局が俺に、何用で?


『黒川慶吾。貴様に、局までの出頭命令が出ている。大人しく従え』

「なっ」


 出頭だと!?

 俺、捕まるのか?


「あの、それは一体、どういう意味で…?」

『…どうもこうも、入区の手続きを進めると言っているのだ。ごちゃごちゃ言うなら取り消すぞ?』


 えっ……えぇっ!?

 入区って…えぇっ?

 俺…特区に入れるのか?

いよいよ、壁越えでしょうか?


「壁を超えてしまえば、平凡な惚気話が続きそうだな」


ふっふっふ。そうはなりませんよ。

寧ろ…ここからがスタートです。


「言ったな?期待しておるぞ?」

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― 新着の感想 ―
ついに特区へ! (`・ω・)! っていうか管理局員の人 偉そうに取り消すぞ?とか言ってるけど 女性から頼まれてるのに連れて行かなければ 自分の首が危ないんじゃ 管理局員なんかみんななりたいんだから…
あえて言おう!ヒマであるの? そーりのひと(´・ω・`)  総理案件に成るほど本来慰問会が底辺罰扱いで低調か、蘇芳マザーが茶飲み友達で丁度良い話題だっただけか 主人公から見て元世界と比べたファッショ…
後宮に入れる宦官はちょん切られて…((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
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