6:ある日、森の中で氷の王子様拾った
毎度閲覧・ブクマありがとうございます。
今回から5話の約1年後ぐらいの話になっています。
やぁ☆みんな元気?
俺の名前はギルバート・オルコット☆
現在7歳の公爵家長男だよ☆
俺?俺は超元気!今日も朝早くから師匠に連れられて山で修行中の身さ☆
え?なんで山かって?
ハハハハハハ☆
そんな俺だけどね、本当に元気なのさ☆
未だぽっちゃり体型だけど超走れるぜ☆
…少年一人を小脇に抱えて走れる位には。
「…何っっでこうなった!!!!」
俺は今、何故かこの水の国の王子であるランス・レインウォーター王子を抱えながら全力疾走している。
その後ろからは大量の動物達が追いかけて来ており、今立ち止まれば巻き込まれる事必至である。
ちなみに王子は、身に纏った大きめなローブに包まり、真っ青な顔で震えながらも暴れる事なく大人しくしている。
もし暴れられたら思わず放り投げてしまう可能性もあったのでこの固まった状態は大変有難い。
…いや!有難くねぇわ!!何だこの状況は!!
そうツッコミを自身に入れながら、俺は今朝からの出来事を思い出していた…。
遡ること約半日前。
朝食後、俺達兄弟は今日一日の予定を執事から聞いていた。
ちなみに俺達には側付きの使用人として、アリスはメイドが1人、俺とクリスには執事が1人兼任で就いている。
ほぼ行動が一緒な俺達なので兼任となっているが、もし俺達が別行動をとる際には警備担当も兼ねている師匠が俺に付くようになっている。
大抵の予定管理などは執事が全て行っている為、今日何をすべきかは執事に聞けば大抵分かるようになっている。
「ーーとなっております。以上、何か質問はございますか?」
「はい!」
「はい、ギルバート様。」
「ピクニック行きたい。」
「ギルバート様?」
俺の提案に、執事はにこやかな表情を引き吊らせながら返事する。
「だってさ!今日天気良いし絶好のピクニック日和だって!今から料理人に言って弁当作って貰えば…」
「何勝手仰ってるんですか。先程本日のご予定を確認しましたよね?」
執事がなるべく表情を崩さないように努めて俺に話し掛けているのが分かる。
分かるが、どうにも最近の過ごし方はほぼルーティーン化していてつまらないのだ。
まず普段の過ごし方だが、午前中は家庭教師による授業、そして午後からは昼食後師匠の剣術、武術指導がある。
家庭教師の都合もあり、午前と午後が逆になったり授業が無くなったりもあるが大抵はこんな感じだ。
以前は自分で飛んで頻繁に来ていたカルロスが来る時は、武術指導を早めに切り上げたりして遊んでいたりもした。
だが、最近は魔獣が出て危険だと言う俺の忠告に従い側近の人達と来るようになった為回数も少し減っていた。
本当に「少し」だけだが。
そんな訳でほぼ授業(武術指導)➡武術指導(授業)➡遊ぶの予定がほぼ変わらない流れになっていた。
なんだかほぼ小学校と同じ流れである。
体育は小学校のレベルじゃないけど。
ちなみに前世では小学校までは普通に通っていた俺だが、病気の関係で中学に上がる前からは病院の院内学級がほぼメインになっていたので参考に出来るものは小学校くらいしかないのだ。
まぁ、大抵の学校は多分こんな流れだろうと思う。
授業も武術指導も興味深く学びたい気持ちも確かにあるのだが、あまりにも代り映えしないこの流れに飽きてしまうのはしょうがないだろう。
そこで俺は、昨晩唐突に小学校時代に行った遠足を思い出したのだ。
あの頃は、近くの山に弁当を入れたリュックを背負いながら同級生達と仲良く登ったものだ。
山に登った後の弁当は、普段なかなか作って貰えないようなものをお弁当に入れて貰い、それを新鮮な空気と絶妙な疲労感を感じる中で摂るからか、格別美味かったのを覚えている。
今思えばあれが最初で最後の遠足だったな、と少し寂しくなる。
なので、こんなにもいい天気であるなら!
思い立ったが吉日と言うではないか!
そう思い提案したのだが、当然執事にあっさり却下された。
「もう今日の予定は組んであるのですから、せめて後日に予定をいれておくようにしましょう。」
「その日が必ず晴れるとは限らないだろ!この世界、天気予報とか無いから特に分からないし…」
「天気よ…?なら、また後日に予定を組めば…」
「だーかーらー!その日も晴れるとは限らないだろって!」
そう言うと、俺は窓に近づきカーテンを思いきり開ける。
「見ろ!この青空を!眩しい日差しを!絶好のピクニック日和じゃないか!」
窓の外は雲一つ無く、雨どころか水分一滴降りそうになかった。
この日を逃しては成らないと思った俺は、必死に執事へと力説する。
「とにかく!俺は、外出たいから!室内ばっかとか飽きたから!何ならアンタ縛ってから屋敷抜け出してもいいんだからな!」
「ちょ、ギルバート様…それは洒落になりませんて…」
「私も、お外でピクニック行きたいですわ。」
すると、先程まで静かに聞いていたアリスが口を開いた。
「だろ!?」
まさかのアリスの賛同に俺はテンションが上がるが、執事の方はギョッした態度でアリスを見る。
「あら義兄さま、こんな所にとてもいい長さの紐が…」
「いや、今スカートの中から出してたよね。アリス、どうやって仕込んだの。」
「そ、そう言いながらもクリス様!?なぜ私の背後に回って手を掴んでいるのですか!?」
クリスは気配を消しながら執事の背後に周りこみ、どこにそんな力があったのか執事の手を絞め上げた。
「こうなった2人は止められない…せめて怪我しないように抑えておくから、大人しくした方が良いよ?」
憐れみながらもクリスも案外ノリノリの様なので、多分クリスもも外に出たかったんだろうと思った。
「何この兄弟!?恐ろしく連携とれすぎ!!ちょ!本当に縛らないでくださいよ!だ、誰かあああ!!」
そう暴れようとする執事を床に転がし俺が乗り上げた所で、後ろからガチャリと扉が開く音が聞こえた。
「…何やってるんだ、お前達…」
その声に振り向くと、師匠が呆れた表情でこちらを見ていた。
「あ、師匠。」
「ちょ!クロスリー殿!!この3人止めてください!」
「いや、状況がサッパリなんだが、どういう事なんだ。」
「実は…」
クリスが手短に師匠に経緯を話した。
「なるほど、理由は分かったが、縛る必要あったか?端から見れば、お前ら完全に悪人だぞ。」
悪人とは失敬な。
『こちらが優勢な立場で交渉を進める為には、時として行動を抑制する事も必要だ』と、師匠が言ったことを参考にしただけなのに。
そう思っていると師匠が、転がされいつの間にか後手を縛られてしまった執事の元にしゃがみこんできた。
「とにかく、まぁ執事殿よ。こいつらはどうやら今回引きそうにないようだ。仕方ないからこいつらには私が着いて行くから、お前さんは家庭教師達に断りの連絡を遣わせてやってくれないか?」
「本当!?やった!!師匠カッコイ~!」
「く、クロスリー殿!?」
「リチャード…あ、いや旦那様には私から後で良いように言っておくから。心配するな。」
「く、クロスリー殿ぉ…」
目を潤ませながら、執事は師匠を見上げる。
「まぁ普通の人間にこの3人を止めるのは難しいし、私もたまには外で身体を動かしたいしな。こっちの準備は私がしておくから、ついでに料理人にも弁当を至急作るよう伝えてくれるか?」
そう言いながら拘束を解いた師匠の言葉に激しく頷いた執事は、その指示に従い急いで準備へと走っていった。
「まったく…やることが物騒なんだよ。もう少し穏便に進められないものかねぇ…」
師匠はため息をつきながら、アリスが用意した紐をヒラヒラとしながら見つめる。
「普通に話しても聞きそうになかったから、仕方なくない?勝手に脱走するよりはいいでしょ?」
「どちらにしても物騒なんだよなぁ。」
そう言いながら、師匠はアリスに紐を返した。
「とにかく、弁当の用意が出来たら出発出来る様に支度しとけ。」
「「「はーい。」」」
「それと、場所は私が決めるが、良いな?」
「「「はーい。」」」
「それから、縛り方が甘いし紐の強度も弱い。執事だからいけたようなものだが、もう少ししっかりとした物と縛り方を復習しておくように。」
「「「はーい。」」」
そう全員で元気に返事を返したが、クリスは心の中で「師匠も大概だよね…」と口には出さず考えるのだった。
そうして準備が済んだ俺達は、それぞれリュックを背負いながら、師匠に促され馬車に乗り込んだ。
「ししょーや、この馬車は何処へ向かってるんだい?」
「ん?あぁ、これからリチャード…お前達の親父殿が所有してる山の一つに行こうかと思ってな。」
「つまり、オルコット家の山ってこと?」
「まぁな。」
ウチって土地だけでなく山まで所有してるのか。
しかも「一つ」ってことは複数所有してる事に…と俺は公爵家の凄さを思わぬ所で感じてしまった。
「実は最近、外での演習をリチャードに相談してたんだが。流石に庭が荒れるからって許可が貰えなかったんだ。」
庭が荒れるって…何する気だ師匠よ。
まぁ最近の師匠、俺達が大分動けるようになってきたからか、指導がエスカレートしてきた気がするし、「庭が荒れる」レベルならまだましかもな。
ちなみに、最近の俺達の武術指導は基本オルコット家の敷地内にある演習場で行われている。
もともと屋敷内のダンスホールでやってたんだが、日に日に動きが派手になってきた俺達に、義母さんから「もっと広い所でやってください!」とお叱りがあったのだ。
この間なんか、その演習中に師匠が軽く本気出した結果。壁に直径20㎝程の大穴を開けてしまった。
因みにその壁の厚さは15㎝程の石壁である。
その弁償は師匠の給料から引かれるらしく、珍しく奥さんに怒られた師匠がしばらく落ち込んでいたのは記憶に新しい。
「ふーん、で?やるんなら山でやってくれ、って事になったの?」
「まぁな。オルコット家の山だから多少の無茶は見逃してやるって事でなんとか同意して貰った。」
「多少ね…。」
「義父さん達には本当に申し訳無いね…」
クリスは肩を落としながらそう呟いた。
「…ん?てか、その感じだともしかしてこれから山でやるの?」
「ん?んー…、まぁでも今日はあくまでピクニックが目的だからな。ピクニックついでに山で演習しようって思ってな。」
「えー、マジかよ。普通に楽しもうぜピクニックー。」
「うるせい。ピクニックは出来るし、こうやって環境は変えてやれるんだから有り難く思えや。」
「…へーい。」
ぶつくさ言う俺に対し、アリスは慰めるように頭を撫でてくれた。
因みにこんなにも優しいアリスも、無事婚約が決まった事で、俺達について師匠の指導を受けている一人なのだった。
そうして到着した山は、本当にただの山だった。
「この山の頂上に一応広場を作っておいたから。そこまではしっかり山登りするぞ。」
「え?作ったの?」
「あぁ、作った。お前らが授業受けてる間に魔法使ってちょこちょこっ…とな。」
そういえば、師匠は土属性の魔力持ちなんだよな。
師匠は普段そんなに魔法使わないけど、話によるとそれなりに強い魔力を持っているらしいと、魔力指導を受けているクリスは言っていた。
なら土地を馴らすのも造作もない事か。
しかし広場作るって…本当に何でも出来るな師匠。
憧れるぜ。
そう思いながら、俺達は師匠の後に続いて山を登っていくのだった。
ギルバートの一人称は、段々本人が取り繕うのが面倒になったので「俺」に変え(戻し?)ています。
猫被ると「僕」になるのは変わりません。




