39.2周目!レベル2ダンジョン!!(後篇)
「ひゃっ!?」
私の体が、思った以上に勢いよく弾丸のように打ち出される。
そのまま、こちらへ向かって来ていたゴブリンの内の1匹に体当たり。
それでも勢いは止まらず、私はゴブリンもろとも7~8メートルぐらい離れた石の壁に激突してしまった。
しかも逆さまの上に大の字に、だ。
結果、そのまま下までずり落ちて、頭のでっかいたんこぶをもう一つ増やす羽目になってしまった。
運よくゴブリンがクッション代わりになってくれたから腕輪の判定も即死判定にはならなかったけど、そうじゃなきゃ完全にアウトだ。
これでもたぶんダメージはかなり受けてる判定になってるはず。
後頭部を壁にぶつけた上に頭から下に落ちたからかなり痛かったよ・・・。
「あいたたたた・・・」
うーむ。
カッコ悪すぎだなあ・・・。
だいたいもしこれで即死判定でゲームオーバーだったら、敵の攻撃なんて何も受けてないから完全に自爆っていうね・・・。
あと、それよりも切実な問題は、私の服はローブだから、腰のベルトで止めてるだけで基本的な構造はワンピースと同じで、そのまま逆さまになったと言うことは、当然ベルトより下のスカート部分は完全に裏返しになるっていう事・・・。
つまり、かなりブザマな恰好でパンツ丸出しって事だ。
それにゆーくんはやさしいからツッコまないでくれたけど、今の絶対見られてるし!
ゆーくんはあわてて視線もそらしてくれてるんだけど、それ、『見えてるよ』って言う証明だからね!
悪く言えば『ゆーくんむっつりスケベ!』って言えないこともないけど、私が勝手に自爆しといてそんなことを言ったらそれはそれでヒドイ。
まあともあれ、私が体当たりした方の一匹は倒した判定にはなった。
だけど、結局私の方に来ていたゴブリンのうちのもう一匹はゆーくんの方へ。
そしていきなり敵が3匹に増えたゆーくんはちょっと動揺した感じもあった(別にパンツで動揺したわけじゃないよね!?)けど、すぐに体制を立て直して的確な判断できっちり敵を倒し切ったのはさすがだ。
完全に私が足ひっぱっちゃってるなあ。
「ゆーくんごめんね・・・」
なんか集中できない環境だったとはいえ、ここまでひどいとなんかへこむ。
「だいじょうぶ!ミルフィはぼくがまもるからムリしないでね!!」
ゆーくんはなにかとこういう台詞を言いたがるんだけど、今の状況だと何も言い返せない・・・。
けど、最後の部屋はちゃんと頑張るよ!
ラストの大ボスは結構強そうだし、さすがに、ゆーくん一人に負担かけたら危なそうだもん。
そして、最後の部屋。
まず先に魔法を使う方の中ボスをやっつけちゃう作戦を私が提案したらゆーくんもすぐに同意してくれた。
「ミルフィがリーダーなんだから、作戦全部決めていいよ。ちゃんと従うから!」
って、こういうところは私を立ててくれる。
ゆーくんが最後の扉を開けると、一番最初に私が『ウォーターフレイル』を、魔法を使う中ボスの顔面に命中させて呪文を止めた。
呪文の詠唱の速さには自信があるからゴブリンの魔法使いなんかには負けないよ!
そして魔法が来なくなったコイツの対処はゆーくんに任せ、私はすかさず『固い風』で壁を作ってもう一匹の中ボスと大ボスの足止めをする。
本当は別の属性の魔法を連続して使うのは同じ属性の魔法の時よりもかなり難しいんだけど、最近はだいぶ慣れてきた。
さっきフタバがやられたみたいに後ろからこの2体に一度に攻撃されたら、フタバよりも体の小さいゆーくんは一発で負け判定にされる可能性があるし、そうじゃなくても危ないから、この足止めはすごく大事だ。
そしてさらに、この『固い風』が消えかかる寸前に今度は『ウォーターカッター』で攻撃。
引き戻しては次の攻撃に移る感覚も、だいぶつかめてきた。
ヨーヨーで遊ぶ時の要領だ。
ゆーくんが問題なく魔法を使う中ボスを倒して2対2になると、今度はゆーくんが大ボスと向かい合い、私が中ボスの方と対峙する。
そしてこんどはゆーくんに時間稼ぎをしてもらう作戦をとった。
私とゆーくんのどちらが大ボスと戦うとしても、1対1でまともにやるのは危険だから、中ボスと戦う方が先にやっつけて、大ボスと戦う方はまともに戦わないってことだ。
まあ、戦略としては基本だよね。
私は大きな打撃は狙わず、距離を取って『ウォーターカッター』の連続技でちょっとずつ相手の体力を削って行った。
さっき壁に激突してるダメージがあるから実は私の体力はギリギリかもしれないんだけど、この中ボスが相手なら距離さえとっておけばこれ以上ダメージを喰らうことはない。
ここまで来ればこの中ボスを倒すのは簡単だった。
削り切るのにちょっと時間はかけちゃったけどね。
そして最初からの狙い通り、大ボスと2対1の戦いに突入した。
ボスはさっきと同じように吠え始めたけど、さっき効果があったのはフタバの恐怖症のせいであって、私やゆーくんには効果なし。
さっきは『フタバの弱点まで的確についてくるの!?』って驚いたけど、もしかしたらはじめから『不利になると吼える』って設定されてるだけなのかも。
こういう所は2周目をやってみないと分からないよね。
「ミルフィはダメージ受けてることになってるから気をつけてね!」
相変わらず、ゆーくんはこれでもかってぐらい私に気を使ってくれる。
立ってる位置も私を庇ってくれるような位置。
嬉しくないわけじゃないんだけど、なんか・・・ねえ。
こう見えても私だって将来は冒険者目指してるんだから。
もうちょっと信頼してほしい。
もしかしたらゆーくんのイメージでは、私は『悪い人にさらわれたお姫様』みたいな感じなんじゃないだろうか。
そんなに過保護じゃなくても平気なんだからね、ホントに!
ちなみに『私だって』とは言ったけど、実はゆーくんは(そしてお兄ちゃんのジャッキーも)冒険者志望ではなくて、騎士志望らしい。
冷静に考えれば冒険者より騎士の方が仕事としては圧倒的に安定してるし、ゆーくんなら良い騎士様になれると思うよ。
さて、話は戻ってこの大ボス、かなりしぶとかった。
さっきフタバが戦ってた時もギリギリではあったんだけど、手数としては3~4発でトドメまで持っていってたよね?
けど、私もゆーくんも、もう10発以上当ててるのにまだ倒れない。
さすがにそろそろだと思うんだけど・・・。
「ミルフィ、次、『ウォーターフレイル』をもっと大きいのにしてみて。水筒の水を目いっぱい使ったやつ!」
そう言ってから、ゆーくんは大ボスと剣を合わせた。
単純な力比べになるとゆーくんの方が不利なはずなんだけど、大ボスもかなり弱っているので状況は互角。
そして、こうやって動きを止めてもらえてるのはすごくありがたい。
私はウサギさんの水筒の中の水を全部出し切って、意識を集中した。
この水全部ってことは、だいたい1.5キロぐらいの重さにはなる。
「ゆーくん、準備できたよ!離れて!!」
私が言うとゆーくんは絶妙のタイミングで距離を取った。
大きな水の塊を上に掲げ、そして大ボスに思い切り叩きつける。
『バシャンッ!』って言う音と共に、今までで最大の『ウォーターフレイル』が大ボスを直撃。
そして、大ボスは動かなくなった。
私たちの勝利だ!
私とゆーくんは思わずハイタッチ。
「ミルフィすごい!今のはスゴイいりょくだったよ!!」
ゆーくんは私の最後の魔法をすごく褒めてくれて・・・。
そして、私はちょっと頭の後ろをかいて照れたふり。(指がちょっとタンコブに当たって痛かった)
だって、私にはわかっていた。
ゆーくんはトドメの一撃を、わざわざ私に譲ってくれたのだ。
それを私が見破っちゃうのも悪い気がしたから気づかないふりをしてたんだけどね。
もしかしたらフィオナちゃんもこんな風に自信をつけさせてもらって上達したのかな?って思った。
でも、私もレベル2を自力でクリアしたのは素直にうれしかったよ。
序盤はあまりにもダメダメすぎたけど、最後の方は充実してたと思う。
これもゆーくんのおかげかな。
だけどその頃・・・地上では、私にとって大変な事態が起こっていたのだった。
次回の更新は2月1日(水)の予定です。




