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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第三部 ギルド編

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第五章 意外なところ

 そうしてオレとミラがこれまでに起こった事を大まかにカーラに説明し、チャットの了解も得られたので、妖精郷の一件も話した。


 ただ、肉屋の事だけはうまく伏せておいた。本人が話されることを拒否する旨を小声で伝えてきたからだ。何の理由があるのか知らないが、話されたくないと言っていることをばらす必要はない。


 こいつとは今後も仲良くやっていかなければならないのだし。


「これで全部かな。あ、このことは誰にも言わないでくれよ? でないと……」


 そこから先は匂わせるだけに留めた。本気ではないが一応釘を刺しておかないとな。


 まあ、ミラが信頼しているようだし、余計な心配だろうけど。


「わかってるよ。でも、にわかには信じがたい出来事だね」


 カーラはそう言うと何かを考え込むように唸っていた。まあ、いきなりこんな話されたら混乱もするだろう。何しろ、現れた名付きをスライムなんかが倒して、そいつが新たな名付きになったなんて少なくともオレなら鵜呑みにはしない。


「ただ、アタシ一人で抱え込めるレベルじゃない。ギルドマスターにだけは話を通しておきたいんだけどダメかい? その方があんたらの為だろうし」


 事情をよく知らないオレは判断しかねたので、ミラに任せることにする。

 ミラは少し迷ったがすぐに頷く。


「あの人に隠し事が出来るとは思えませんから」


 そういう事らしいが、一体ギルドマスターとやらは一体何者なのか。気になるな。


「まあ、話は後で通しておくとして。それで、あんた達はこれからどうするつもりなんだい?」


 ごもっともな質問だ。


「とりあえず、今は金稼ぎかな。ほぼ無一文だし、その為にここに来たんだ」

「そうじゃなくて、もっと大きな意味でだよ」

「どういうことだ?」


 カーラは苦笑していた。


「だから、あんたらはいつまで一緒にいるのかってことだよ。話を聞く限りオズはこの二人を安全な場所に届けたら、別れる気なんだろ? 少なくともミラに関してはこの街でその条件を満たせると思うけどね」

「それは……」

「ま、アタシが口を挟むことじゃないかもしれないけどね」


 咄嗟にオレは答えられなかったが、カーラは気にせず話題を終わらせた。恐らくこちらに気を使ったのだろう。


「さて、金を稼ぐなら依頼をこなすのが一番だね。少し待ってな」


 カーラはそう言って部屋から出ると、数枚の紙を持ってすぐに戻ってくる。


「今すぐ稼ぐならこの中から選ぶのがいいよ」


 読めないだろうが、とりあえず覗いてみると、


「あれ? 読めるな」

「それは当然ですよ。オズさんもスキルを手に入れたんですから」


 スキルの効果は文字にも適応するのか。


 いや、待て。さっきカーラが紙に書いた文字は読めなかったではないか。


「あれはエルフ族の文字なので読めなくて当然ですよ」

「アタシは遠縁でエルフの親戚がいるせいか、スキルを覚えていてね。だからミラとも仲良くなったんだが」


 だとすると、チャットはエルフの言葉を解読したと言うのか。スキルの有無はともかく何故そんなことが出来るのか。


 その答えは、


「え、だって、あんなのスキルが無くても誰でも読めるでしょ」

「く、くそ!」


 何ともプライドを傷つけられる言葉だった。チャットが勉強してエルフの言葉すら読めるようになっているというのが何故かむかつく。バカだと思っていた相手が実は賢かった時、人はこんな思いを抱くのか。


「ま、まあ、知識があるけど常識ないしな」


 そう強がっておくことにした。だってオレ、こっちの世界の事に関しては無知もいいところだし。


 そうして気を取り直し、改めてカーラに差し出された紙を眺める。


【荷物整理 ランクF- 銅貨五枚】

【薬草採取 目標数三 ランクF 銅貨十五枚】

【ゴブリンの討伐 目標数十 ランクF+ 銅貨三十枚】

【ヘルハウンドの討伐 目標数五 ランクE- 銅貨五十枚】

【キラーアントの巣の発見及び殲滅 推定目標数五~十 ランクD- 銀貨一枚】


 随分と簡潔な内容だった。わかりやすいが、これでは情報が不足してはいないだろうか。


「受けたい依頼があったらその紙を持って受付に行く。そこで詳しい内容を聞いてから受けるか否かを決めるって仕組みなんです」

「まあ、E+以上になれば簡単な依頼は受付に行かなくてもいいんだけどね。ただ、初心者のバカが自分の力もわきまえずに危険な依頼を受ける場合があるんだよ。それに少し前に内容を盗み見て、本来は受けられない高ランクの依頼をこなそうとするバカな集団が現れたんだ。そいつら全員死亡ってことで正式にこの仕組みが全ギルドで取り決められるようになったのさ」


 自分の力を過信するとろくなことにならないといういい教訓だ。オレも自惚れているつもりはないが、名付きの力が覚醒したからっていい気にならないように気を付けよう。


 それにしてもランクか。この書かれている英語のことだろう。


「ランクはどっからどこまであるんだ?」

「上からS、A、B、C、D、E、Fにそれぞれプラスマイナスが付いて全部で二十一段階になってます。ちなみに私はD-ランクですよ」


 ミラの力でも下から数えた方が早いのか。


「Cで一流、Bで超一流とも言われているからこの齢でD-ランクはとてつもなく優秀なほうさ。普通の奴がE+からDの壁を超えるには十年は掛かるしね」


 この冒険者というのは思った以上に厳しい職業のようだ。ランクの約下半分を上り詰めるのに十年、相当シビアな世界だろう。


 ただその分、報酬は良いみたいだ。命を懸けるからかもしれないが、ゴブリン十体で銅貨三十枚。これを三度こなせば銀貨一枚になると考えると、かなりうまい話だ。


 オレがもし依頼を受けられる立場だったなら、既に銀貨五枚は報酬で得ているはず。それくらいあの小鬼共を仕留めてきた。


「これなら金は思ったより早く集められそうだな。このキラーアントの奴を受ければ一発で目標クリアだろ?」


 この言葉にカーラが大きな声で笑った。


「そんなうまくはいくことは稀さ。この依頼で言えば、巣を探し出すまでにも時間と労力を要する。仮に運よく巣穴をすぐに発見できたとしても、その戦闘で武器が壊れたりすればその修理代が、怪我をすれば治療費が必要になってくる。その他もろもろのことを考えれば、手元に残るのはそう多くはないさ」

「私のような弓だと矢を買うのも結構な出費になりますからね。だから、依頼は自分のランクより数段階下を選ぶのが普通です。余裕をもってこちらの被害を出さないことこそが一番効率いい方法ですから」

「ふーん、なるほどな」


 非常に勉強になる話だった。


「まあ、ミラに関しては矢より他の物に対する出費の方が多いだろうけどね」

「か、カーラさん! 余計なことは言わないでください!」


 ミラが慌てた様子でカーラの言葉を打ち消すように大声を上げる。そんなに焦ることだろうか。


「そうは言っても、どうせ今の金がない状況だってあんたの浪費癖が原因だろう?」

「う! それは、否定できないですけど……」

「ミラって金遣い荒いのか?」


 さっきの買い物の仕方からもしかしたらと思っていたが、まさか本当にそうだとは。


「ち、違います! 私は知識を知るために旅をしているのであって、その為に貯めたお金を使うのは当たり前と言うか。確かに本を買うのにお金は結構使いますけど、浪費癖とまで言えるようなことではないと言いますか」

「金をたくさん使うことは否定できないだろうに」

「カーラさん!」


 言い訳の途中でバッサリと切り捨てるカーラとそれに怒るミラ。本当にこの二人は仲良いのな。


「はは、ミラは金遣い荒いのか」

「だから違います! オズさんまで変なこと言わないでください!」


 思わず笑ってしまったが、オレはこの事実に妙に安心していた。これまでミラは完璧と言うか、性格的にもキッチリしていた。それが悪い訳ではないが、どこか人間臭さがないとも思っていたのだ。


 だからお金の使い方が荒いなんていう、まさに人間独特のところが見られて、なんだかほっとした。ミラもそういう弱点のようなものがあるのだと。


「なんだ、可愛い所もあるじゃないか」

「か、からかわないでください!」


 顔を真っ赤にさせてムキになる姿は、やはり子供らしくて可愛らしかった。


 ミラ以外の三人が微笑ましいものを見るかのように笑っていると、ミラが更にムキになるという繰り返す何度か起こり、


「もう知りません!」


 そうしてむくれたミラの機嫌を戻すのは結構大変だった。

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