第一章 ペット
肉屋が用意したのは小さな鳥籠のようなものだった。
「オズ殿にはこれに入っていただいきます」
まさかのペット扱いである。これは簡易的な檻というわけだ。
「これはモンスターを生かしたまま捕獲するための檻です。エルフのミラ嬢もいますし、調教したモンスターだと言い張ればどうにかなるでしょう」
この檻は多少魔力が込められているらしく見た目ほど脆くはないようだが、この程度の檻では今のオレを抑えることもできないのがわかる。だが、他の奴から見たらオレは雑魚の代名詞、スライムだ。色違いであってもそこまでの強さを持っていると考える奴はいないだろう。
そうしてオレが檻に入り、緊張しながら門に向かう。
「そこで止まってください」
男の門番がやってきてオレの方を凝視してくる。そりゃモンスターを持っていれば目を引くわな。
「失礼ですが、そのスライムはどうされたのですか?」
「私が捕まえたんです。調教して使役するために」
ミラが前もって用意しておいたセリフを述べる。すると男は納得するように頷いた。
「モンスターを使役するという事は魔獣調教師の方ですか」
「よく知ってらっしゃいますね。あんまり数もいないし、有名な職業じゃないと思うんですけど」
「いえ、私も恥ずかしながら最近、知ったばかりなのです。数日前からこの街に大きな獣のモンスターを連れた方達がいらっしゃって一時は騒ぎになりましたから」
数がいない魔獣調教師が集まる理由とは一体何なのか気になったが、ここで聞けるわけもなく黙っているしかない。
その後、ミラが幾つかの質問に答えて、二人の身体検査も終えたことで許可が出た。
「やっと話せるわね」
それまで黙っていたチャットがほっと息を吐く。こいつに喋らせると何を言いだすかわからないので街に入るまで固く口止めしておいたのだ。
「とりあえず一安心だな」
「オズさん。今は大丈夫ですけど、気を付けてくださいね」
「おっと、すまん」
周りに人がいないから普通に話してしまったが、どこで誰が聞いているかわからない。スライムが人の言葉話しているなんてことになったら絶対問題になるのはオレでもわかる。
奥の手としては常に発動している「言語・人族」のスキルを切ってしまえばいいのだ。そうすればオレの言葉が普通の奴に伝わることはない。
ただ、そうするとチャットと会話が出来なくなってしまうので止めておいた。いざって時にこいつと意思疎通ができないって考えると恐ろしいし。
ちなみにこの例の通り、スキルには常に発動するものと発動するのに使用者の意思が必要なものがある。前者が言語や強化などのスキル、後者が火炎吐きなどのスキルだ。
そして常時発動スキルでも、本人の意思でオンオフを切り替えることが出来るのだ。その為、使わないという選択肢もできる。
もちろん、中には呪いのように使用者の意思にかかわらず常に発動するものもあるのだが、そんな危ないものはまだ手に入れていない。
「とりあえず宿を取りましょう。そこならオズさんも気兼ねなく話せますし」
拠点確保、まずはそれからだ。
「私が前に使っていた宿があるので、そこに案内します」
二匹と二人はそうして南の街に入っていった。




