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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第二部 妖精編

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幕間 ミラの心配

「いっつ!」


 少し腕を動かしただけで痛みが走った。どうやらアベルの攻撃を防いだ時に痛めてしまったらしい。こんな腕では弓を使うこともできるわけがなかった。


「足手まといになっちゃったな」


 あの時、私が万全の状態だったならアベルを近づけさせることもなかっただろう。精霊の力を込めた矢で倒すまではいかなくとも吹き飛ばすなりして、最悪オズさんの助けを待つ時間くらいは作れたはずだ。


 だというのにそれすらできなかったのは自分の力が足りなかったからに他ならない。


「とにかく今は傷を治さなきゃ」


 なけなしの魔力を使うのは躊躇われたが、回復しなければ動くこともままならないので致し方ない。精霊の力を借りるこの回復魔法は通常の魔法よりも使用する魔力に対して効果が高いのがせめてもの救いだろう。


「肉屋さんもすみません。私のせいでこんなところに足止めして」

「いえいえ、お気になさらず。そもそもミラ嬢がいなければ妖精郷に侵入することすらできなかったのですから」


 だからと言って足を引っ張っていい理由にはならない。そう思ったが、その好意だけは受け取っておくことにした。


「ありがとうございます。でも、もう大丈夫です」


 動くくらいなら問題ない。後は移動しながらでも回復はできる。


「そこまで急がずともオズ殿なら大丈夫ですよ。あの方は規格外の存在ですから」


 規格外、そう言われればそうなのだろう。


 最弱と名高いスライムの身でありながらネームドモンスターを倒した、その世界の法則を超えているとすら思える強さはすごいなんてものではない。ただその本人はそのことをあまり自覚していないようだけれど。


 そしてなにより、ミラが惹かれるのがその優しさだ。彼は今まで見てきた誰よりも優しくて、暖かい人だと思う。


 見知らぬ他人のために命をかけて戦い、敵にすらその優しさを向けられることは人によっては甘いと言われるかもしれないがミラからすればそんなことはなかった。現に彼はその躊躇いを乗り越えて今も戦っている。


 割り切るのでもなく、現実を受け止めてそれでも可能性を探りながら戦うその姿はミラから見ても眩しいものだった。


 誰よりも優しく、そして辛いことも乗り越えられる強さを持った人、それがミラがオズに抱いている印象だった。


「でもだからと言ってオズさんに全部任せっきりにはできませんから」

「これはまた、恋する乙女のような顔をして健気なことを言いなさる」


 この言葉に私は勢いよく立ちあがった。


「な、何を言ってるんですか!? こんな時に!」

「いえ、思ったことを言ったまでですが?」

「そ、そんなことあるわけないじゃないですか! 変なこと言わないでください!」


 そうだ、自分が惹かれているのはあくまで人間的にであってそういう意味ではない。誓ってだ。


 だが確かにいいなと思うことも無きにしも非ずだし、カッコいいと思うこともある。


(って、何を考えているのよ私は!)


「さ、さあ行きましょう! もう大丈夫ですから」

「畏まりました」


 肉屋さんが呆れたようにため息をついているのが釈然としなかったが、これ以上話を続けるのはやめておいた。こういうことはもっと落ち着いたときにするべきものだろう。少なくともこの状況で話す類の話題ではない。


 そうしてオズさんの後を追いかけている最中にふと、肉屋さんに聞きたいことがあったのを思い出した。


「オズ殿に食べさせた肉ですか?」

「はい、あれって何だったんですか?」


 単純な興味だがあれだけ不味そうにしているので気になってしまったのだ。


「あれはマジックワームと言われる大量の魔力を持ったモンスターの肉です」


 聞いたこともないモンスターだった。


「洞窟の奥に住み着いてあまり地上には出てこない種族ですし、普通の者が食べればまず魔力の過剰摂取で暴走するか命を落とすので誰も欲しがりませんからね。滅多に耳にすることはないでしょう」

「ちょ、ちょっと待ってください。そんな危ない物をオズさんに食べさせたんですか?」


 いくらスキルで安全を保障されているとはいえだ。


「オズ殿が望まれたことを成すためにそれが必要だったので提供した、それだけのことです」

「はあ……」


 肉屋さんはなんというかやはり変わっている。こう言ってはなんだがオズさんほど信頼はできないというのが正直な感想だった。


「まあ、白骨の想定としてはオズ殿が暴走することで新たな進化を可能になるというものですが、何分あの方はこちらの思惑を超えてきますからね。今回は何をしてくれるのやら」


 肉屋さんもオズさんのことを信頼はしているようだし、両者がそれでいいと言っているなら私が口を挟むことではないと無理やり納得しておくことにした。


「とにかく早く追いつかないとですね」


 そう言って一歩踏み出した時、私は気付いた。


「何、これ?」


 過剰とも言える魔力がこの先から漂ってくる。こんな中に生物が長くいたら何があってもおかしくないと言えるほどの強烈にして濃厚な魔力が。


「急ぎましょう」

「はい」


 肉屋さんに急かされるままに私は急いだ。

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