第四章 森の奥へ
これからの方針を決めるにあたって現状の確認だ。
まずはチャットと会って、その後を追ってきたらしき機械のような妖精達と戦って、その戦闘には勝利した。だが最後の一撃で何らかの攻撃を受けたもののオレ、ミラ、チャットに異変はなし。その他、周りにも影響は見られない。
唯一の変化は肉屋が影も形もなくなってしまったことだ。死んだか攫われたか、はたまた別の可能性かはわからないが周囲にはいないと見て良いだろう。
そこに加えるとするならチャットからの情報だ。だが、子供の所為なのかほとんど片言だそうで聞き出せた情報はほとんどないに等しい。
街道から外れた森の方向を指して助けて、チャットからもたらされる情報はこれだけだった。
「助けてって言われてもな。誰を助ければいいんだ?」
チャット自身を助けるならこのままここを立ち去ってしまうのが最善だ。わざわざ追手やモンスターがいるであろう森に行っても危険なだけだ。
だからチャットは自分じゃない誰かを助けたいと言っていることになる。その肝心の誰かだが、
「ダメです、私の力じゃこれ以上の会話は無理みたいですね。チャットが子供だからか、それとも私の力不足かはわからないですけど」
「精霊を介しても会話には限界があるか」
そもそも、その言語系のスキルを持ってない相手と片言でも会話出来ているのがすごいことなのだろう。よくやってくれているミラを責めることは出来ない。
責めるとすれば、こういう時に真っ先に通訳役になるべきあのドケチ商人だ。
厳しいようだが、あんな骨に優しくする気は更々ない。もしも攫われていたとしても気を抜いたあいつ自身が悪いのだし。
という訳で万が一チャットを追ってきた奴らの仲間に捕まっていた場合、逆にこっちが助ける代わりの対価を請求してやる。たまには逆の立場を思い知らせてやろうではないか。
実を言えば、あいつが捕まってない方が厄介なのだ。そうなると姿を消した理由がわからないし、まさかと思うがバックれたわけでもないだろう。そんなオレとの契約をないがしろにして商人と言い張れるとは思えない。
「一応聞いておくが、グーラみたいな奴はそうそう現れないよな?」
「当たり前じゃないですか。そもそもあんなのがそう簡単に出てこられたら私も恐くて旅なんて出来ませんよ」
ごもっともな意見だ。だったら余程の事がない限り命の危険に陥ることはないだろう。
それに手がかりはチャットの示す方向しかない。あの不気味な妖精達が肉屋を攫ったなら、なおさらだ。
十中八九チャットが助けてという相手もこうして妖精達に攫われたのかもしれない。そう考えれば色々と辻褄は合うし。
ミラも概ね同意見だったので結論は出た。
「チャットが助けてって言う人を助けるついでに肉屋も助けるとするか」
「普通、逆じゃないですか?」
「だってミラみたいな可愛い女の子を助けに行くならともかく、あんな骸骨だとモチベーションが上がらないじゃん」
頭の中で肉屋が囚われのお姫様のようなドレスを着ている姿を思い浮かべて吐き気がした。それなら見知らぬ人を助けるヒーロー気分のほうがいい。
通常なら真面目な性格から、この物言いに注意をするであろうミラだったが
「そ、そんな可愛いだなんて……か、からかわないでください!」
今回は顔を赤くして激しく動揺していた。初心なようで実にからかい甲斐がある反応だ。
「はいはい、了解です」
ふざけるも大概にしないと本気で怒られかねないのでここでやめておいた。そうじゃなくてもあまり時間を掛け過ぎると麻痺の効果が切れてまた妖精達に襲われるなんてことになりかねない。
そこからは荷物などを手早くまとめ、改めて妖精達を麻痺させて時間を稼ぐなどの準備を終えて、
「さてと、行くか」
「はい!」
オレ達はチャットが示す方向に進み始めた。




