第五章 「俺」は誰なのか
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現在、主に更新している「隻眼錬金剣士のやり直し奇譚-片目を奪われて廃業間際だと思われた奇人が全てを凌駕するまで-」という作品が投稿開始から二週間ほどで月間ローファンタジーランキング86位に入りました。
しばらくはそちらを毎日更新していくつもりです。
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親友が結婚して約三年。ようやく望んでいた子供が出来たということで俺は祝いの品は何を送ればいいのかと頭を悩ませていた。
(こっちも子供が出来た時は盛大に祝ってもらったからな。お返しには同じようにしてやりたいもんだ)
そして送るのは喜ばれる物にしなければ。そう考えれば考えるほど何を送ったら良いのか分からなくなるから不思議なものだ。
「なあ、お前は何を送ったらいいと思う?」
「私はあっちの奥さんと話して決めるつもりよ」
悩むこちらのことなど知ったことではないという様子で妻はあっさりとそう言ってくる。
「なんだよ、内緒にして驚かせたりはしないのか?」
「それで他の人と同じものを送ってもしょうがないでしょう? それが役に立つならともかく二つもいらない物だったら扱いにも困るじゃない」
「それはそうだけどな……」
理屈で考えればそうなのだろうがやっぱりこういう時は驚かせたいじゃないか。
そんな俺の浅い考えなんていつもお見通しの妻は溜息を吐いて呆れている。
「間違ってもあなたが作った武器とか防具を送るのは止めてよ。騎士団所属の旦那さんは喜ぶでしょうけど納品するんじゃないんだから」
「いや、子供用の装備ならどうだ? それなら大きくなった時に使えるかも」
「男か女か分からない内に何を送るってのよ。いつも手にする装備は高い物ではなく自分に合った物を選べとか偉そうなこと言ってるくせに」
「じゃあ男女兼用の武器とかなら」
「女の子が武器で喜ばないこともあり得るでしょうが。いいから武器とか防具は絶対禁止よ」
「ぐうぅ」
自分の得意分野を封じられてしまうと更に困ってしまう。
だが俺と違って賢い妻はただ禁止するだけでなく素晴らしい代案も授けてくれた。
「まったく、どうせなら魔除けのアクセサリーとかにしなさいよ。それなら両親が付けても役に立つし腐らせることもないでしょう? あなたが本気で作った逸品なら既製品なんかよりずっと効果が高いでしょうし」
「そうか、その手があったか!」
何故それを鍛冶師である自分で思い付かなかったのかと言いたくなる妙案である。
「ありがとう。早速作ってみるよ」
「はいはい。それはいいけど集中し過ぎてあまり遅くならないでよ?」
「分かってる」
賢き妻の頬に感謝の口づけをして早速仕事場に向かった。
そして素材を厳選して、いつも通り丁寧に仕事に取り掛かる。
「よし、出来た」
そうして完成したのは魔除けのネックレスだ。
これならチェーンの部分を調整すれば大人でも子供でも簡単に付けられる。街の外に出る機会は騎士の親友以外はそう多くないだろうが、魔物を近付かせにくくなる魔除けの装備は持っていて損するものではない。
「そうだ、どうせだから人数分作っておくか」
騎士である親友にはこれまでにも何度か送っているが戦いなどで破損させてしまうこともあった。代わりがあって困ることも無いだろう。
そう思ってネックレスを作って誰の物か分かり易いようにその裏に名前を彫っておく。
まずは親友のものだ。
「これでよし」
魔除けのネックレスには確かに親友の名が刻まれていた。
そう、ゲオルギウスという名が。




