16_カクシの雑談配信
小学六年生のバレンタイン。
チョコを貰えるかという期待でクラスメイトがソワソワと浮き足立つ中、俺は最初から縁がないからと、何も考えてもいなかった。
だが放課後、クラスの女子達が俺を呼び出して、教卓の前で俺に贈り物をした。
「はい。 これバレンタインデー」
教卓の陰から出てきたのは子供には大きすぎる段ボールで、おそらくそれは何人かの子供たちが持ち寄ったものなのだろう。
箱の中身はカンパンや、防災パン、インスタントのカップラーメンなど。 備蓄が出来る非常食だった。 ……ただ、そのどれもが賞味期限が切れていたり、差し迫った物。 備蓄を更新する際に処分しきれなかったものであることは、子供の俺でも想像がついた。
それは、善意から来る贈り物ではあっても、明確な施しだった。
俺がどのような扱いを家で受けているかは、きっとみんなは知らない。
だけどロクな扱いでないことだけはわかっている。
一度として親は学校行事に来たことはなく、俺の制服は体が成長しても更新されることはなかった。
留め金が止まらなくなったズボンを紐で縛りながら使い始めると、見かねた先生が卒業生の服を貰ってきてくれた。
サイズは合わなかったから結局ブカブカのズボンを紐で縛って使い、上着は袖を折って着用していた。 だからクラスの子達は、俺を"かわいそうな子"と認識していたのだ。
「お返しはいらないからね! おうち大変でしょ?」
「……ああ、ありがとう」
無邪気にそういう女子達に俺は礼を返すことしかできず、その段ボールを大事に抱えて帰路に就いた。
バレンタインでチョコを貰った相手に囃し立てる男子たちも、俺には何も言わない。
廊下を歩くとき、大荷物を抱えていることに奇異の視線が向けられるが、俺だとわかれば納得したように興味を無くす。
バレンタインのチョコは禁止と朝礼で言われていたのに、ランドセルに入れることも出来ず俺が抱える段ボールを見ても先生たちは何も言わない。
先生たちも女子達が考えていたことは知っていたのだろう。 じゃないと、教卓に隠しておくなんてことはできないから。
お返しがいらないという言葉も。 それを持ち替えることを禁止しない先生たちの配慮も。 そして、期限切れのものでも困っているなら食べるだろうという無意識の見下しも。 すべてが俺を惨めにさせた。
だが何より……、それを要らないと突き返すことも出来ず、ちゃんとホワイトデーに返すと宣言することも出来ず。 そして実際にその食品を食べて生活が助かったという事実が一番惨めだった。
それ以来、俺は今まで以上に自分の境遇を隠すようになった。
悪気はないのはわかっている。 純粋な善意から来た行動なのも伝わっている。
……だけど、俺はみんなと対等でいたかった。
苦しんでいるのは事実なのに、それを認めたくないちっぽけなプライド。
幼き日々の、無邪気な善意に傷ついた思い出。
***
八月四日、火曜日の夜。
今日の配信枠は、リスナーとの雑談枠だ。
殆どリスナーに情報を開示して来なかったので、リスナーに自分の昔のことなども含めてお話する時間として枠を取っている。
「こんばんは、本や物語を紹介するVTuber、紙カクシです。 今日は本とは関係のない雑談枠、リスナーさんたちと色々お話ししたいと思って枠を取りました」
>コメント:こんばんは
>コメント:大丈夫? 前みたいにヤバいの来ない?
>コメント:お話しできるの嬉しい
「ヤバいのは……、どうでしょうね? 以前ポロっと言った話は私にとってはもう終わったことですし、別に言って困るようなものでもなかったので。 ……ホントに、同情とかはしないでくださいね?」
>コメント:アレでそのレベルなら、言って困る話を聞くのが怖いのよ
>コメント:アレって?
>コメント:異種恋愛紹介の配信、最後の方見ておいで
正直に言えば、感覚がマヒしていたのだ。
両親が俺を放置していくことは人生において当たり前で、俺は図書館と小学校の入学以外で、親に連れられて何かをした記憶がない。 だからあの程度の話をして憐れまれるようになるなんて思いもしなかった。
「でもやっぱりどうせなら楽しい話が良いですよね。 なのでまずはミコトが八月一日から参加してるTAC企画の話をしようと思うんですよ」
>コメント:おー、アレかぁ
>コメント:楽しい話で自分の事以外が出てくるんだ
>コメント:楽しい=ミコちゃんなの?
「ダメですか……? 本や物語以外だと、他に思いつかなくて……」
>コメント:いいよ
>コメント:てぇてぇからどんどんやっていこう
>コメント:ミコちゃんの昔の話とかも聞きたい
リスナーからも楽しい話で他に無いのかとツッコミが入るが、概ね問題はないようだ。
ほっと胸をなで下ろしてその話題を継続する。
「よかった。 最近結構ミコトの切り抜き沢山出回ってますよね。 ミコトメインの視点は一つしかないんですけど、マーブルincの一条さん視点の切り抜きを色んなチャンネルで上げてくれてるみたいで」
切り抜き師と呼ばれる人たちは、様々な配信の切り抜きを投稿している。
基本的に個人勢にそういった方はつくことがなく、配信者側がお金を出して依頼することが多い。 ただ企業VTuberの場合は注目度が高いため、リスナーが自主的に制作して投稿している。
今回も一条さんのファンなのか、それとも箱としてのファンなのかはわからないが、三人ほど切り抜き動画を投稿していた。
特に人気が高いのがミコトを中心にした支店の動画。
ロールプレイ部分が出てない二人の打ち合わせや素の部分をカットして、ドラマ仕立てに再編集した切り抜きのようで、昨日Part1と銘打たれて投稿された動画が、既に十万再生を超えていた。
パン屋のミコトと、ギャングのゼロイチ。
ミコトは相手の素性を知らないという設定で、ギャングと恋仲になっていく。
彼の住所だと聞いている場所の近くで事件が起きれば心配の連絡をして、時々パンを買いに来るゼロイチに笑顔を向けていってらっしゃいと送り出す。
ゼロイチは強盗や他ギャングとの抗争に明け暮れ、組織内で活躍していく中、ギャングであると明かさない罪悪感を抱えていく。
ミコトとゼロイチの行く末はどうなるのか、というのが三日目終了段階での展開だった。
>コメント:私も見てるよ
>コメント:あれ編集凝ってて面白いよね
>コメント:カクシさんは焼きもちとか妬かんの?
「え、焼きもちですか? 昔からミコトはモテてましたから別に。 男女問わず告白されてましたよ、軽くあしらってましたけど。 ……あ、ミコトから大学時代の話とかは聞かれても答えていいって言われてるのでご心配なく」
大学一年目の頃は人から避けられていたミコトは、似合う女装を心掛けた二年目以降は先輩後輩、男子女子問わず告白されるようになっていた。 結局すべてお断りしていたけど。
>コメント:相手をあしらうのは解釈一致ですわ
>コメント:リスナーのガチ恋勢も作らないようにしてるしね
>コメント:あんな可愛かったら男女問わず好きになるよなぁ……
「それにTAC企画のあれ、ロールプレイですしね。 昔のTRPG企画とかでも似たことはやってましたし、ミコト的には友達にやることの範疇じゃないですか? 私もしてもらった覚えがありますし」
>コメント:いやロールプレイなのはわかるけど
>コメント:絶対その認識おかしいよ
>コメント:ミコちゃんがモテると言えば、カクシさんってモテたの?
「モテた……かは微妙ですね。 比較対象がミコトなので、あっちと比べたら全然モテてないですよ。 大学の時に告白してくださった相手は数名いましたが、あまりそういうことを考えられなかったのでお断りしています」
>コメント:モテそうなのに
>コメント:告白されてる時点でモテてるのでは? ボブはいぶかしんだ
「ははは、皆さんが見てるのはアバターの姿ですからね。 確かに平野先生謹製のこの体なら凄いモテそうです」
>コメント:身長高かったらそれなりにモテると思うよ
>コメント:女子にとっての高身長は、俺達にとっての巨乳ぐらいと聞く
>コメント:ちょっと骨延長して来るわ
>コメント:カッコいいとか言われなかった?
「ミコトからしか言われてないので一般評価がどうなのかはちょっと……。 髪や肌の手入れと服装には大学から気を使ってるので、悪くはないと思いますが」
>コメント:昔の動画とかに映ってるけど、カクシさんって手とか凄いきれいだよね
>コメント:ミコちゃんの美容動画いいよね。 スキンケアよくわからんかったから助かってる。
>コメント:コラボしてる美容品買ったわ。 男性向けスキンケアって全部スースーするけど、それが無かったからお気に入り
昔の動画、というのは紙を作っていた活動初期のことだろう。 あの時は半分実写なので、腕までは良く映りこんでいた。 活動初期のリスナーはミコト以外残っていないが、今のリスナーも過去動画を探して見てくれたようで少しうれしくなる。
そして、美容やスキンケアの話題に乗ってくる人はミコトから流入したリスナーだろうか。 ミコちゃん呼びだし。
最近では男性でスキンケアに気を使う人も増えてきたから一概には言えないが。
>コメント:告白全部断ってるって、彼女いたことないの?
>コメント:彼氏も?
「別に隠すことじゃないので言いますが、私の恋愛経験はゼロですよ」
ふとコメントが目に入ったので、特に何も考えずに回答したところ、急に流れが加速し始めた。
>コメント:親近感湧いてきたねぇ!
>コメント:俺も恋人居ないよ!
>コメント:私もいません!!
>コメント:バレンタインにチョコとか貰ったことある?
「バレンタインですか? いえ、チョコは一度も貰ったことが無いですよ」
チョコ以外なら貰ったことはあるが……。 相手の善意であることはわかっているし、感謝もしているが話したい想い出ではない。
そのため、そのことを伏せて"チョコは"と言及する。
>コメント:マジ?
>コメント:友チョコとか無かった?
>コメント:仲間仲間。 俺もお母さんからしかチョコ貰ってないわ
>コメント:おいやめろ馬鹿
「あはは、私は親からも貰ったことがないので、通算ゼロ個です。 負けちゃいましたね」
>コメント:だから言ってるのに
>コメント:なにわろてんねん
>コメント:そもそも数は勝ち負けじゃないから……
「いや、私にとって親自体はホントに何とも思ってない相手ですし、もう死んでますしね。 なのでちょっと繰り返して、鉄板ジョークみたいに笑える内容にしていこうかと」
ミコトにも笑えないと言われたが、ミコトは女装で友達が減ったことを何も気にしてないと相手がわかれば弄れるようになると言っていた。
なら俺のこの話も、繰り返すうちに笑えるのではないだろうかと思ったのだが、コメントの反応は芳しくない。
>コメント:きっつぅ……
>コメント:反応に困るのよ
>コメント:マジで一度大阪の方に行って笑いを勉強した方がいいよ
「押し通せば何とかなると思ったんですけど……。 ダメでしたかね?」
同情より、笑い飛ばしてくれた方がずっといい。 そう思っての発言だったのだが、どうやらダメだったようだ。
>コメント:いや、無理に笑ってる気はしないから良いけどね
>コメント:ジョークのセンスはない
>コメント:もうちょっとこう……! な?
>コメント:生涯通算ゼロでドン底スタートにした後、実はチョコ貰ったんですよで上げて、お母さんから何ですけどね、で下げてオチにするといいよ。
>コメント:その母親からももらえてないって話なんだわ
「なるほど、上げて下げて起伏を付けて笑わせるんですね」
>コメント:羨ましすぎると嫌味になるから、自分に置き換えてギリ羨ましくないぐらいが良い
>コメント:なんならちょっとくらい盛ったり作ったりしてもいい
「笑いって難しいですね……。 コメディも読むのは好きなんですが、自分で考えるとなると……」
コメントの方には壊滅的な笑いのセンスを何とかしようと、様々な意見が書き込まれていく。
>コメント:チョコを貰ったことがない(ドンマイ)→でも最近貰えた(よかったね)→男から(友チョコやないかい!)という流れならどう?
「友チョコがオチ、ですか? でもミコトからでも他からでも嬉しいですし、オチにならないと思うんですよね」
恋愛感情であれ、親愛であれ、対等な立場から贈られるのであればそれは嬉しいものだと俺は思う。
そう思っての発言だったが、コメントはかなりの勢いで流れていく。
>コメント:いや、これは聞いてる側が笑えるかどうかの話だから、カクシの感情は一旦良いんだよ
>コメント:前提として親チョコすらない場合、そら友チョコでも嬉しいか
>コメント:ナチュラルにミコちゃんかそれ以外で区別してるの草
>コメント:まぁミコちゃんからのチョコはめちゃ羨ましい
>コメント:ってか告白されてるのにチョコ貰ってないの?
「告白されてるのにチョコを貰ってない、それに関してはタイミング次第ですからね。 バレンタインになる前に告白されてお断りして、それっきりということが多いです」
>コメント:あー、バレンタインの前にクリスマス前の駆け込み告白あるよね
>コメント:そこで振られたら流石に義理でもチョコは渡せんわな
実際、学生の時に告白してきた相手は俺の誕生日である九月か、クリスマス前の十二月であることが多かった。
「あ、でもバレンタインは毎年ミコトから服を貰ってますよ」
>コメント:ふぁ!?
>コメント:それは話変わってくるだろ
>コメント:さっきまでの仲間意識を返してくれ
>コメント:服はチョコより重いよ
「そうでしょうか。 ミコトとは良く一緒に買い物してましたし、似合う服とかは全部ミコトに色々教えてもらったので、その延長かと思ってました」
どうしても無難な服ばかりだった俺に、服のセンスを身に着けさせたのはミコトである。 見た目は一番他人に侮られやすい場所だから、アイロン掛けや着こなしには気を使っていたが、色んな服を試す余裕はなかったのでミコトのセンスには非常に助けられた。
>コメント:デート?
>コメント:いや男同士で服屋は普通に行くだろ
>コメント:まぁ友達かな?
「ホワイトデーのお返し期待してるよって言われて、毎年すっごい悩むんですよね」
>コメント:デートじゃねえか!
>コメント:何度も言うけどそれ絶対友達の距離じゃないよ
>コメント:カミカクは何贈ってるの?
「ちょっといいマグカップとか、ミコトが好きな可愛いぬいぐるみ、この辺りにミコトが好むタイプの読みやすい本を一冊つけて贈る、という感じですね」
>コメント:本を贈ってくれると嬉しいよね。 自分で買わない本読めるし
>コメント:ただ本以外は男に贈る品か……?
>コメント:でも相手ミコちゃんだし
>コメント:じゃあ友達かぁ……
「私も同じように服を贈りたかったんですが、どうしてもミコトのセンス以上に良いものを贈れそうになくて……、毎回すごく悩むんですよ」
>コメント:なんか物品として残るものだったりで、友達に贈るにはちょっと重いか……?
>コメント:発端の服を贈ってるのがそもそもちょっとどころじゃなく重い
>コメント:カクシさんそれ大学に着て行った?
「え、勿論着て行きましたよ。 嬉しかったですし、毎回似合う物を送ってくれるので周りも褒めてくれましたし」
というか、贈られたものを使わないというのはそれはそれで失礼なのではないだろうか。
>コメント:褒められた時にミコちゃんからもらったって言った?
「言いましたね。それセンス良いねと周りが褒めてくれて私も、ありがとう、ミコトからもらったんですよって返してました」
大学時代はほぼ毎年繰り返されていて、後輩以外は慣れたのか、「ミコトから?」「そうだよ」 という流れにもなっていた。
>コメント:もうそれ、完璧にボクのものアピールのマーキングなのよ
>コメント:これを前提にすると、告白してきた奴が勇者に見えてきたな
>コメント:わざわざホワイトデーに、って言ってるのも遠回しにデートのお誘いなんじゃないのか
>コメント:ミコちゃんの好きな人居る宣言の答え合わせ会場ってココ?
>コメント:恋人にキスマークつけまくるミコトくんちゃん概念か……
コメントではみな思い思いのことを書き込んでいる。
ただ……。
「皆さん考えすぎだと思いますけど……。 学生時代は頻繁にミコトと会ってるので、別にデートのお誘いとかはしなくていいですし。 私とミコトの付き合いってそれこそ十四年くらいになるので、それならそもそも告白してるんじゃないですか?」
>コメント:ほんまや
>コメント:解散解散
>コメント:そんなことないと思うけどなぁ……
>コメント:流石に十四年は無いな
そういうと、一種の妄想に近かった盛り上がりはほぼ沈静化した。
実際、ミコトはそういった思わせぶりな行動でからかいはするものの、どこか一線を引いているように思う。
だからたまにコメントで書かれるようなことも、俺はおそらく思い過ごしだと思っている。
「そんなわけで、ミコトへの贈り物は毎回悩むんですよ。 ミコトの誕生日は明後日ですし……。 定時で上がって、凸待ちの最初から入りたいんですが……、ちょっと今仕事が立て込んでるんですよね」
ミコトがVTuberになってからは誕生日配信をするようになったため、当日の朝にお祝いの連絡を入れて、後日一緒に会って食事をするときに贈り物を渡してきちんと祝うのが恒例になっていた。
だが最近はミコトとコラボすることが増えたため、今回はきちんとミコトが企画している誕生日凸待ちに参加したいと考えている。
しかし、間の悪いことに外せない仕事が立て込んでしまっているのが現状だ。
>コメント:仕事の話珍しいね
>平野律:バレンタイン用の衣装ありますよ。 これでミコトさんとVRデートしたら絶対喜ばれると思います。
>コメント:うわでた!
>コメント:絶対やばい衣装でしょ
>コメント:もう見なくてもわかるわ
>コメント:逮捕しろ逮捕
>コメント:どう考えてもプレゼントは私パターンだろ
そうやってリスナーと雑談していると、コメントに突然平野先生が現れた。
配信開始の挨拶にもいなかったし、どうやらずっとROMしていたらしい。 これまでの配信でもそうしていたのだろうか。
そして、チャットアプリのDiscordに通知音が鳴った。
「……はい、なんか今画像とデータダウンロード用のアドレスが来ました」
>平野律:リスナーのみんなにも共有してね?
アドレスの方はおそらくアバターだろうから、配信後にするとして……。
贈られてきた画像を開いてみると、それは基本衣装のアレンジをしたスクリーンショットだった。
半透明の朱色の帯を天女の羽衣のように纏い、髪や袖にワンポイントで朱の帯が付けられている。 動けば視覚的にも華やかで良いアバターに見えるだろう。
画像を開くまでは少し疑っていたが、問題ないどころか素晴らしいものだったので、OBS上に表示してリスナーと共有する。
>コメント:うーん、凄い。
>コメント:ええやん
>コメント:疑ってごめん(手のひらクルッ
>コメント:やっぱセンスも技術もある凄い人なんだよなぁ
リスナーからも賞賛されており、みんなで細部を見ながらココが好きと言い合っていく。
すると再度、連続で二度通知音が鳴った。
「あ、なんかもう二枚画像がきましたよ。 ……うわぁ」
それらの画像には、「羽衣はこう使います」と書かれていた。
一枚目は、その羽衣でミコトの両腕を拘束し、ミコトの顎に手を伸ばす紙カクシの姿。
ミコトが若干頬を染めており、今にも口づけを交わす数秒前という状態だ。
二枚目はベッドの上に仰向けになり、腕が羽衣で拘束されている紙カクシの姿だった。
羽衣の先はおそらくベッドの柱に繋がっているのだろう、両腕は頭上に上げられ、露出度の高い脇は隠されず、薄衣が半分捲れて片目だけが露出した状態で、口には何故かハートのチョコを咥えていた。
俺はため息を吐くと、二枚目の画像だけ配信ソフト上に表示する。
「平野先生、ミコトが写ってる方は私の一存では見せられないので、アップするのは片方だけですからね」
>コメント:エッッッ
>コメント:一番持っちゃいけない人がカクシのマスターデータ持ってるのやばいだろ
>コメント:ミコちゃんのも持ってんだよなぁ
>コメント:逮捕しろ逮捕(手のひらクルッ
>平野律:一枚目で無理な要求を押し付け、本命を通す。 これがドアインザフェイスですよ。
「あ! しまった、自然と私だけのやつは見せちゃってた! 普段なら絶対隠すのに!」
平野先生の罠にかかったことに気付き、少し悔しい気持ちになる。
>コメント:いやぁ、眼福でしたね。
>コメント:本人に直で贈るのはどうかと思うけど、とても良いものだと思います
>平野律:真面目な話、今ミコトくん配信中なんで、誕生日のサプライズにはなると思うんですよ。 なのでその衣装で凸してくだされば嬉しいな
平野先生からは先ほど送られてきた衣装で、誕生日の凸待ち配信に出てほしいとコメントされる。
だが……。
「いやその……、二次色先生に他所行き用の一枚絵を依頼したのがあるので、凸待ちにはそちらを使わせてもらいますね」
>平野律:なんでー!? えーん、パパに負けたー!
>コメント:そりゃそうやろ
>コメント:スクショ一枚目まではよかったんだけどね
>コメント:そもそも凸待ちはアイコンとかのサイズか立ち絵しか使えんわな
そんな話を交えながら、月曜日の夜は楽しく更けていった。




