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転生ミスで弱小盗賊団の頭になっちゃいました。やり直しは出来ないと言われて頭に来たので地味スキルで生き抜いてやろうと思います。  作者: 駄犬X
第二章

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30 苦難。

 その日から俺は、17年後の悲劇に備えてソージ王子として生きていく事を決めた。


≪その身体は赤ん坊ですが、出来る事から少しづつ始めて行きましょう。自由に動く事が出来ずとも、魔法の基礎知識を得る事は出来ます≫


 クロニエルの言葉に、俺はあぅあぅと答える。


≪幸いな事にその身体には既に魔力が備わっています。魔法の基礎知識と発動方法を覚えれば魔法を使えるようになります≫


 …続きまして、と言いつつクロニエルが俺をじっと見つめる。


 …そんなに見つめられても…なんか恥ずかしいだろ。クロニエルは俺を見ながらふむふむと頷いている。


≪…これからソージさんの魔法≪構築(こうちく)に付いて説明します。この魔法は特殊枠に入る魔法で属性はありません。特殊枠の魔法の中でも初歩に当たる魔法ですね…≫

≪…それで、その魔法、具体的にはどう使うんんだ?魔法名だけだと意味が良く解らないんだが…≫

≪はい、これから説明します。特殊魔法『構築』は敵対者が発動した魔法及びスキルを解析し、解体する事が出来るようです。そして再構築する事が出来る、となっています≫

≪…魔法やスキルを解体して再構築する魔法か…≫

≪はい、しかし自分よりも敵対者の魔法やスキルが上位だった場合、押し敗けて消えてしまうようです≫

≪…そうか。この世界の誰の魔法やスキルよりも強い魔法にしないとダメなのか…≫

≪そう言う事です。17年後、アナタのいた村を襲ったダムドという男は突発的に発現した能力にも関わらず、全てを呑み込んで爆発させるという強力なスキル『闇呑(あんどん)』を発動しています。17年後にソージ様が押し敗けるような事があれば全ては『無』となってしまうのです…≫


 そこで俺はふと、気になった事を聞いた。


≪俺は難しい事は分からないんだが、村は爆発して無くなったんじゃないのか?さっきの言い方だとまだ仲間も村も爆発に巻き込まれていない風に聞こえたけど?≫

≪よくお気付きになられました。その通り、違う時間軸…つまりダムドのスキルによって全て呑み込まれ爆発する時間軸に移行した時点でわたしの能力『クロニクルワールド』で全てを止めています。だから安心して下さい。まだ、仲間の方や村が壊滅するとは決まってはいません≫


 ただし、と言いつつ説明を続けるクロニエル。


≪現在、ソージ様が生きるこの時間軸が突発的事象が起きる時間軸に繋がっています。分かりやすく言うとソージ様が成長し、ダムドという男のスキルを止めに入った瞬間、時間は強制的に動き出します。その時になってソージ様が押し敗けてしまうと事象が確定してしまい、もうわたしの能力でもどうにもなりません…≫

≪…わかった。これから頑張るよ。村を助けようとしてくれたその人と仲間、村の為にも俺が強くなってもう一度、あの場所に戻って全てを救う!!≫

≪その意気です!!しかし無理はいけません。少しづつです。少しづつ、成果を積み重ねて行くのです。そうすれば自ずと全てを救う道に戻ると思います≫


 クロニエルの言葉にあぅあぅと俺は頷く。


≪それでは魔法の基礎知識から説明します≫


 夜は長い。昼間に充分寝たので、俺は続けてクロニエルの説明を聞く事にした。



≪まずは魔法という事象を起こす為の基本からです。この世界では魔法使いという者達が少なからず存在します。その者達が魔法を行使する際、どうすると思いますか?≫

≪…どうするって…凡人の俺にはそんな事は分からない。呪文を唱えて火や氷を出したりするイメージしかない…≫


 俺の言葉にクロニエルが首を横に振る。


≪ソージ様はバカでも凡人でもありません。既に核心に触れています≫

≪…どういう事だ?≫

≪呪文を唱えてイメージする、そこが魔法の基本です。重要なのは呪文の詠唱と結果のイメージになります。更に噛み砕いて言うと『呪文』は呼び掛けです。精霊や妖精達、粒子や素粒子に呼び掛け、自らのイメージを事象として具現化させて魔法を発動するのです…≫

≪…なんか難しいな…。呪文は呼び掛けなのか…そしてイメージを具現化する…か…≫

≪今は言葉その通りの理解で良いです。まずは呼び掛け、手伝ってもらう。こんな感覚ですね。ちなみにこれが上位魔法になると詠唱なしで具現化できます。それは術者の思念を既に周囲にいる精霊や妖精達、粒子達が読み取っているからです≫


 更に、と言いつつ説明を続けるクロニエル。

 

≪スキルも同じ様なものです。粒子と素粒子に呼び掛け、スキルを発動します。ここまではよろしいですか…?≫

≪…ぁ、あぁ。少し頭が痛いが…なんとなく意味は分かったよ…たぶん…≫

≪今はそれで良いのです。魔法やスキルの成り立ちを知るのは自らの魔法を強くしていく第一歩ですからね≫


 俺はあぅあぅと頷いた。


≪…では続けて先程の説明を踏まえまして、ソージ様の魔法『構築』に付いて理解を深めていきましょう…≫


 …えっ?まだ説明続くの…?


 確かに、昼間良く寝てはいるけど…小難しい話を聞いていると…また眠くなってくるんだよな…。


 うとうとしている俺に気付いたのか、クロニエルが言葉を止めた。


≪…ふふ、今日はここまでにしましょう。まだまだ時間はあります。少しづつですからね…≫


 そう言いつつ、俺の目の前から消えるクロニクル。


≪…消えたっ!?クロニエル、どこに行った…?≫

≪大丈夫ですよ。姿は消えても、いつもソージ様の傍にいますからね。安心し下さい…≫


 その言葉を聞いた俺は、安心して目を閉じた。そしてゆっくりと眠りに入った。その時、部屋の入り口から妖しい影が覗き込んでいたなど、今の俺には知る由もなかった…。



 翌朝から、苦難の赤ちゃん生活が始まった。クロニエルは『赤ちゃんらしく』振舞えと言うが中身の魂は25歳なんだよ…。


 …赤ちゃんらしさって何だよっ!!


≪…ソージ様、赤ちゃんというのは大体、愛嬌に溢れています。まずは愛嬌からですよ!!≫

≪…愛嬌って…どうするんだよ…?≫


 戸惑いつつ、俺はオッサン…いや、この国の王様に抱っこされてリフトアップされている。


≪そこですッ!!ソージ様!!可愛らしく笑って下さいッ!?≫


 言われるままに俺は笑う。ついでに手と足をバタバタと動かして楽しいとアピールしてみた…こんなもんで良いのか…?


「おおっ、ソージが喜んでおるぞっ!?ほれっ!!王妃、見よっ!!」

「フフフ、ホントに笑っていますね。生まれたばかりの時は全然反応がなかったのに…」


 そう言いつつ涙を流す美人王妃。


「…これ王妃よ、泣くでない。ソージはこうして元気に笑っておるではないか?これからは時々、ワシらもこの子と遊んでやらねばなるまい!!」


 王様の強い言葉に、涙ながらに頷く美人王妃。


「ほれっ!!ソージよ、楽しいか!?ほれっ、ほれほれっ!!」


 王様、調子に乗って俺を高い高いしては一々、俺の反応を見る。俺はその度に笑いながら、手足をばたつかせた…。


 …いい加減、笑うのに疲れてきた…。本当に面白けりゃ笑ってやるけど中身は25歳だ…。これは拷問に近い…。


 次に王妃に抱かれて、また高い高いだ…。もううんざりだ。しかし、赤ちゃんらしく振舞わなければ、今後どうなるか分からない。


 仲間と村を助ける前に、俺の魂が他界他界しそうだった…。


 翌日からも苦難は続いた。一番きついのはトイレだ。王様と王妃が、愛嬌を振りまく俺に、とにかく食べさせてくれるのだ。


 肉、野菜、フルーツはもちろん、菓子やデザートなども食べさせてくれる。

それは良い。飢えるよりましだからな。


 しかし、食べる事によって当然、身体の中で消化されて栄養を吸い取ったカスとしてアレが出てくる。


 そうです…う〇ちくんです…。


 俺は便意を我慢して、泣き続ける。誰かが気付いてトイレに連れて行ってくれることを期待して…。


≪ソージ様、頑張ってそのまま漏らして下さい!!我慢してはなりません!!赤ちゃんというのはう〇ちを漏らすものです!!その為のオムツなんですよ!!≫


 クロニエルはそう言うが外面が赤ちゃんでも中身、25歳なんだよっ!!


 頑張ってお漏らししろとか無茶言うなよっ!!キツ過ぎるだろっ!!


≪ソージ様もグランジ様であった時、赤ちゃんの時は同じ様にう〇ちもおし〇こも漏らしていたんですよっ!?だから安心して漏らして良いんです!!≫


 なんだよそれっ!!安心して漏らせとかおかしいって…!!


 その瞬間、俺は涙が溢れた…。そして俺は力の限り泣き叫んだ。


 俺の異変に気付いた侍女兼、使用人が慌てて俺が寝るベビーベッドに近づいてくる。


「…王子っ!!どうされましたかっ!?…ん?あれっ?この臭い…もしかして?」


 …お前の予想どうりだから…頼むからそれ以上、何も言わないでくれ…。


 おっとりとした感じの可愛らしい侍女が俺の顔を覗き込む。俺は思わず目を逸らした。だって恥ずかしいだろうっ!?


 こっちは漏らしてんだぞっ!?覗き込んでないで早く処理してくれっ…。


 その時、クロニエルが焦ったように現れた。



≪…お前が何故ここにいるっ!?お前は『あっち側』のフォローが優先だろうっ!?≫

≪…えっ?何でって…それはその…責任取らないと…ですからね…≫

≪いや、ミスリエル!!お前はこっちに来なくていい!!こっちは私がフォローしてるんだ!!お前はあっちの時間停止の持続を手伝ってるはずだろうっ!?≫

≪いや、それがですね、向こうでチーム長を手伝って来いって先輩達に言われまして…≫

≪…アイツらっ!!チーム長の俺の指令無視しやがってっ…!!≫


 いつもの、丁寧なクロニエルの口調が変わっている。


≪頼むから俺の仕事の足を引っ張るのは止めてくれっ!!お前が絡むと『大惨事』になるんだよっ!!俺は上司!!お前は部下!!分かったらあっちに戻れっ!!≫


 クロニエルはとにかく、この女性を俺に近づけたなくないようだ。凄まじい怒りのせいか、クロニエルの一人称が変わっている。


 この時点で分かったのだが…侍女に化けている?この女性、たぶん転生ミスを起こした張本人の天使だな…。


 名前がミスリエルか…。確かに、近付いて欲しくない名前だ…。


「…ぁっ、グランジさんですよねっ!?今、綺麗にして上げますからね?」

≪オイッ!!すっ惚けてないで早くあっちに戻れッ!!これは上司としての命令だからな!?≫

「…いやー、あっちに戻っても特にする事ないんですよねぇ~…夏見さんもこっちに行って良いって言うから…」


 その言葉に、クロニエルが目を閉じて右手を眉間に当てる。


 …ついに被害者にも見限られたか…。そりゃ当然だ…俺だってこんな部下にいて欲しくないからな…。


≪…とにかくだ。これ以上、お前の尻拭いはゴメンなんだよ!!正式に指令を出す!!お前は17年後の時間軸に戻り、時間停止の保持をせよ!!解ったな!?≫

「…その指示には従えません。これはわたしがやってしまった事です!!だからわたしが何とかします!!自分の尻拭いは自分でやります!!」


 その時、侍女に化けた天使の叫びに反応した衛兵達が、俺の眠る部屋へと雪崩れ込んでくる。


「侍女殿っ!!どうかされましたかっ!?」

「…あっ、えっとそのですね…王子が泣いていたので来てみたらう〇ち漏らしていたのでちょっと驚いただけなんですよ(笑)!!」


 …俺の身体に入った夏見さんがこの人を遠ざけた理由が分かった気がした…。頼むから本人の前でう〇ち、漏らしたとか言わないでくれよ…。


 そして俺は切に思った。アンタ自身の尻拭いはどーでもいい。それより先に早く俺のお尻を拭って綺麗にしてくれと…。

 本日は中身の人が休みなのでちょいと早めに投稿しますw


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