28 引き金。
おかしな箇所があったので修正しています。
リフレ村には木造の高い塀と櫓があり、その外周に、ロキシアファミリーのチンピラ構成員300人が西と南からリフレ村を取り囲んでいた。
村の東側は深く急勾配の森になっていて人間は侵入出来ない。村の北はこれまた急勾配の山があり人間の侵入は不可能だった。
西側から村の北に周ろうとしても、急勾配な上に、森の木が茂っていてやはり侵入は出来ない。
囲んでいると言っても実質、村の西と南に陣取っているだけだ。これなら何とかなりそうだな…。
そんな事を考えているとアスチュートからの伝令が来た。
「先陣はお前だ。石投げて出来るだけヤツらの戦意を削いでやれッ!!」
との事だ。さて、それでは石投げでヤツらを混乱させてやるか。
「…皆は下がっててくれ。突撃のタイミングが来たら行くぞ!!」
そう言った俺はテジー、ヒュージ、スネアと視線を合わせる。既にカニング達とは別に作戦を立てていた。
カニングの砦で作戦を練っていた時にドジ子には姿を消して、そこにいて貰ったのだ。そして対ロキシア殲滅の為の作戦を先行してテジーに伝えて貰っていた。
ロキシアとカニングが上手く潰し合いをする様に、事前に作戦を立てて貰った。一度、領都から呼び戻したフィネスにはバズリンに向かう様に、ドジ子から伝えて貰った。
ガイとラスツはバスリンに行って換金している。しかし、今は戻ってくると危険だからバズリンから動かないように伝達に行かせた。
さて、それでは石投げでヤツらを混乱させてやるか。
俺はスネアが用意した石を掴むとスキル『ダストシューター』を使って石を投げた。クイックモーションで投げた石、三つがロキシアのチンピラ共に直撃する。
「グワッ、ゃ、ヤツだッ…!!」
「グランジだッ!!戻って来やがったぞッ!?ギャッ!!」
「盾だッ!!盾を持ってるヤツは速く前へ出ろッ!!」
…おっ(笑)。盾持って来てやがったのか(笑)?一応、学習はしてるみたいだな(笑)!!
混乱するロキシアのチンピラ共を見て笑うマッド。
「グランジ、テメェやるじゃねぇか(笑)!!その調子でどんどん行けやッ!!」
「はい、任せて下さい。この後はよろしくお願いします」
「おうッ!!任せとけ!!」
次に俺は上にも石を投げておく。そしてすぐにそこから森の中を移動した。投擲位置を悟られないようにする為だ。
「グワァッ!!、う、上だッ!!上から石が降って来てるぞッ!?」
盾を持っているヤツが必死に盾で頭を防御するが俺が狙ったのは盾を持ってないヤツだ(笑)。無駄な事してやがるな(笑)!!
「ぐはッ…!!」
「ウグッ…」
上から降ってくる石が盾を持っていないヤツの頭上に降り注ぎ、戦闘不能にしていく。
ヤツらは大きな盾を持ち出し、西に盾を構えて備え、上からの攻撃にも耐えられるように大きな盾を上に翳す。
俺はそれを見て笑ってしまった。バカ共が!!俺はすぐに石を掴むとアンダースローで投げていく。ついでに回転を意識して投げた。俺はアンダースローでどんどん石を投げていく。
瞬間、ヤツらが声を上げて陣を崩した。
「ぐわぁッ!!し、下だッ…足元に気を付けろッ!!」
「…クソッ、あっ、脚がァァッ…!!」
あはは、バーカ(笑)!!正面と上からだけだと思ってただろ、このマヌケ共がッ!!さて、崩れた所にもういっちょ行くか(笑)!!
俺はすぐに場所を移動した後、上に向かってどんどん石を投げていく。
足元を石で攻撃されて、盾を構える事も忘れて転げまわるチンピラ。そこに再び、上から石が降って来る。
ヤツらは混乱を極めていた。これで西側のロキシアの陣の一角はほぼ、崩れている。
さて、後はマッドに任せるか…。
その時、ロキシアの中から声を上げる者がいた。
倒れて呻き声をあげる男達の向こうから声を上げたのは、ダムドの娘で幹部のラミルだ。ラミルは手に松明を持っていた。
◇
手に松明を持ったラミルが叫ぶ。
「そこまでだッ、グランジッ!!出てきなッ!!出て来ないと村に放火するよッ!?」
アイツらはバカなのか(笑)?そう言われてノコノコでて行くヤツなんていない。俺はすぐに石を掴んでワインドアップでラミルの手元を狙って投げた。
瞬間、石がラミルの手首に直撃した。松明を落したラミルが狂乱した様に叫ぶ!!
「…ぎゃァッ!!…ぐッ…クソッ!!グランジッ!!隠れてんじゃねぇッ!!出て来いよッ!!」
しかし、ラミルの取り落とした松明の炎が、足元に倒れていたチンピラの服に燃え移っていた。
燃え移った火を消そうと転げ回るチンピラの炎が、更に別のヤツの服に燃え移り、ヤツらは更にパニックに陥った。
それを見ていたマッドが、配下を振り返る。弓を撃ち込むタイミングを待っていたマッドが、上げていた手を振り下ろす。それを合図に、森の中からマッドの部下50人が一気に弓を引いて矢を放った。
その無数の矢が、激昂して叫んでいたラミルの全身に刺さっていく。叫んでいたラミルの声が直後、止まった。
「…ぁ、ァァ…」
全身に矢を受けたラミルが、その場に膝を付いて崩れる。
「お嬢を護れッ!!盾持ってるヤツッ!!早く前に来いッ!!」
しかし、マッド達は弓を引くその手を緩めない。ここぞとばかりにガンガン矢を打ち込んでいく。
前に出て来たそのチンピラも全身に矢を受けて倒れた。それを見た盾を持ったチンピラが慌ててその前に出て盾を構えた。
しかし、防御する暇なんて与えてやるつもりなんかない。俺はすぐに上空に石を投げまくった。
甘い甘い!!ヤツら、石が来ることを忘れてやがるッ!!直後に、盾を前に構えて矢からラミルを護るチンピラ共の頭上に大量の石が降り注ぐ。
「上だッ!!来たぞッ!!ぐわッ…!!」
「ギャアァァッ!!」
ヤツらは再び大混乱に陥った。その間に、全身に矢を受けたラミルが死亡、ラミルを護ろうとして前に出て来たチンピラも死亡した。
この混乱の中、南側からブルータルとレウドもロキシアのヤツらに戦闘を仕掛けていた。まずはレウド隊が長槍でロキシアのチンピラ共を刺して行く。
西側の混乱に、救援に向かおうとした南側のロキシアも森の中から現れたレウド達に背後を襲われて混乱し始めた。
そこにブルータル達も参戦する。
ここまでは作戦通りだ。この後、突撃で混戦になったどさくさに紛れて今度はカニング達を消して行ってやるか…。
しかし、ここで想定外の事が起きた…。
◇
突然、どちらの攻撃も止まる程の慟哭が、森に反響する。そこだけ、人が輪を作り、囲んでいる中で、白いダブルのスーツを着た金髪オールバックの目付きの悪い太った男が膝を付いて天を仰いでいた。
「オオオオオオオォォォォォォォーッ!!オオオオォォォォーッ…!!」
その男の腕の中で全身に矢を受けて絶望の表情で死んだラミルをその腕に抱いて、恐ろしい慟哭を上げる男。
それがダムド・ロキシアだった。
膝を付いて慟哭を上げるダムドの眼から赤黒い涙が流れていた。それを見たマッドが自ら弓を手に取り、弦を引いてダムドを狙って矢を放つ。
しかしマッドが放った矢はダムドを貫く事無く、その手前で宙に浮いたまま動きを止めた。
マッドが俺を見る。
どうなってんだッ!?と言わんばかりの目だ。俺も石を掴むとクイックモーションでダムドを狙う。しかし、マッドの矢と同じく俺の投げた石もまた、宙で動きを止めた。
俺はすぐにドジ子に確認する。
≪…なんだ?これは?ダムドが能力者なんて聞いてないぞ!?≫
≪…今、鑑定します。少し待って下さい…。それから…≫
そう言いつつ、ドジ子が俺達を見て言う。
≪…すぐに退避できるようにして下さい。何かかなり危険な感じがします…≫
ドジ子の真剣な眼差しに、俺はすぐにテジー、ヒュージ、スネアを拠点である小屋に戻れと指示を出す。
「…グランジ、村の方も危険なんだ。俺達だけ逃げられない!!」
「そうです、カシラ!!俺達はここまで村を護るために動いて来たんです!!ここで逃げるなんて出来ません!!」
テジーとスネアの言葉に、俺はヒュージを見る。
「…アニキ。俺はアニキを信じてる。だから逃げろなんて言わないでくれ!!」
俺はそれ以上、何も言えなかった。そんな俺にマッドが近付いてくる。
「…グランジ、どうすんだ?これはかなりまずい気がするぜ…」
マッドも何かを感じ取ったようだ。
「…マッドさん、すぐにここから退避した方がよいかと思います。カニングさんに伝達、お願いできますか?」
「…ぁ、あぁ、すぐに行ってくる…」
しかし、カニングの元へと行こうとしたマッドを瞬間、黒い槍の様なものが背後から貫いた。
「…グッ…ぐ…なんだこりぁ…」
直後にマッドはその黒い槍に全身を呑み込まれて消えた。それを見た俺は手が震えていた。あの距離から見えていないマッドを狙ったのか…?
すぐにダムドを確認するとダムドの全身が真っ黒な闇に包まれていた。俺はドジ子を見る。
≪…どうだ?何か分かったか…?≫
≪…見えません…。もう少し時間が掛かるかもしれません…≫
その言葉に俺は再びダムドを見る。
ダムドを中心に黒いものが範囲となって拡がっている。味方も敵も関係なく、だ。先程、マッドを刺し貫いた黒い槍がダムドの全身から放たれている。
その時、俺達の後ろに陣取っていたはずのアスチュートが来た。
「オイッ!!グランジッ!!アレはどうなってんだッ!?ダムドが、ヤツが能力者なんて聞いてねぇぞッ!?」
「…いや、俺もヤツが能力者とは聞いていません…」
想定外の事にアスチュートが激昂しているが、俺もそんなの知らんわッ!!すぐにテジーもアスチュートに話をする。
「俺は領都にいましたがダムドが能力者という情報は全くありませんでした」
「ならどうしてこんな事になってんだッ!!俺達はすぐに退避するからなッ!?後はお前らで何とかしろッ!!」
そう言い放つと、すぐにその場から離れるアスチュート。南側にいたブルータルとレウドはダムドの能力によって負傷していた。
カニング盗賊団はすぐに退避行動に移っていく。
しかし黒い槍のようなエネルギーに捕えられ、レウドは死亡。ブルータルは何とかカニングの所まで戻った。カニング達が退避に入ったその瞬間、ダムドの怒りのエネルギーが黒いドーム状となって広範囲に拡がってきた。
≪…夏見さんっ、このままだとマズイですっ!!今やっと見えました。ダムドは娘を殺された怒りと悲しみでスキルを発現させています!!≫
続けてドジ子が説明してくれたが…絶望という言葉しか出て来なかった…。
≪これは広範囲を巻き込んで殲滅するスキルです!!≫
広範囲殲滅スキルだと…?…さあ、どうするか…。
俺は森の奥を見る。逃げるつもりだったカニング達は俺達よりダムドから離れているにもかかわらず、動けなくなったようだ。
森の中からカニング、アスチュート、ブルータルの叫ぶ声が聞こえる。俺は足元を見た。俺達も既に捕えられていたようだ…。
黒い影の様なものが俺達の足元に纏わり付いていた。俺はすぐに箒を取り出し、回転させる。俺達の足を捕えている闇を掃き飛ばす。
「良く聞け!!今すぐ村の前に移動だ!!」
俺達が森の中を走り出すと、すぐに闇が追い掛けてきた。村の門の前に立つと、すぐに全員、俺の後ろに来るように指示を出す。
…どうなるか分からんが…やるしかない!!ダムドの広範囲スキルがどれだけ続くか分からない。しかし、なんとか凌ぐしかない。
俺は箒を回転させて『ダストストリーム』を発動させると、ダムドのスキルから俺達と村を隔離する様に展開させた。
既にカニング達の声は消えている…。俺はテジー、ヒュージ、スネア、ドジ子を、そして村を囲む様に球状の空間を意識する。
その直後、全てを呑み込む様にダムドの黒い闇の能力が一気に拡がって来た。そして闇が一気に俺達を呑み込み始めた…。
アクセスありがとうございます。本日より再開します。金、土、日で一話づつ出して行きます。今回のエピソードで第一章は終わりです。次回から第二章に入ります。
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